宝物
「客には何もナシか?」というヤルバーの図々しい言葉からしばらくの沈黙があり、タロウという少年はようやく口を開いた。
「チミたち、誰?」
だから客だって、と地団駄を踏むヤルバーを横目に、疾斗はざっと店の中を見渡してみた。
正面からでは分からなかったが、先ほど「奥からタロウが出てきた」と言ったように、奥には廊下が続いており、上から見たらきっと前方後円墳のようなイメージなのだろう。
しかし本当にここは店なのだろうかと疑う疾斗である。
「ここはなんの店なんだ。置いてあるのは底に穴の空いた鍋とかボロっちい釣り竿…。ゴミを売ってるのか?」
たしかにここに置いてあるのはどれも使えなさそうなガラクタばかりだった。
「違う、ゴミじゃな…」
タロウがそう反論しようとすると、そこへヤルバーが割って入る。
「ここに置いてあんのはゴミなんかじゃないぜ。どれも次への可能性を秘めた宝物なのさ」
そもそも売り物でもない、と彼は付け足した。どうやらここは不用品を買い取る店のようで、レヌァスン版のリサイクルショップといったところだろう。
するとタロウが不思議そうに自分を見つめていることに気づくヤルバー。
「なにかな?」
「その言葉、じっちゃまと同じだ…」
「へ〜、ジイさんの孫か」
「じっちゃまと知り合いだったの?」
タロウが目を輝かせて尋ねる。
「まあ常連でな」
疾斗はなぜかこのやりとりを見ていてモヤモヤを感じていた。おそらくこの場が自分を置きざりにして進行しているからだろう。
そして、どうにか話に参加しようとヤルバーに向かって話しかける疾斗。
「お前は武器を見にきたんだろ。じゃあここはお門違いじゃないか」
これにチッチッチッとよく見るジェスチャーで答えるヤルバー。
「そう早合点をするもんじゃないぜ、ハヤト」
そう言って彼はこの店について説明を始めた。
「ここに売られるのはなにも使わなくなった日用品だけじゃない。自分の波長に合わなかった呪具を売りに来るヤツだっているのさ。そこで変わり者のジイさんが呪具の修理や改造なんかを始めて、そのスジじゃ有名なんだぜ」
そうか、と疾斗はうなづいた。
以前に波長についてガンゾーが言っていたのを思い出し、全ての呪具を使えるわけではなく自分と合う波長を発している呪具しか使えないということを再認識する。
「ところで、」とヤルバーが辺りを見回す。
「ジイさんはどこだ?」
この質問を聞いた瞬間、タロウの顔が一気に暗くなるのが分かった。
「じっちゃまは、いなくなったんだ…」
彼の話によると、3ヶ月ほど前に出張で不用品を買い取りに1人で行ったきり戻ってこなかったという。
「こんなかわいい孫娘置いて消えるなんて。なに考えてんだ、あのジイさん…」
「ボクちんはいいの?!」というタロウの当然の叫びをヤルバーが華麗にスルーすると、「あとウロモモはじっちゃまの孫じゃないよ」とタロウが言った。
「そもそもウロモモは人間じゃない。呪具なんだ」




