再びそれぞれの道へ
別行動を取ることになった疾斗とアズー。どちらに誰が付くかを決めようという話し合いが始まった。
「アズーにはアタイら、谷賊が付いていくよ」
フィーナがそう申し出た。
「フィーナちゃん…かぁ」
あまり乗り気でない様子のアズー。
「なんだい、なんか文句でもあんのかい?」
「だってフィーナちゃんこわいもん、やだよ」
キッパリと拒絶されたフィーナは、「こ、こわい…」と言われたことを繰り返しながら部屋の隅へ這っていく。
ベイラルが横へ行き、「姐さんがこわいのは顔と声と行動だけヤ。かろうじて心は大丈夫ヤから」と慰めるも火に油。
というか慰めにすらなっていない。
ドカッ、バキッ、ボカボカッ
こうしてベイラルは帰らぬ人となった。
そんなものを見せられてから、「アズー、アタイはそんなにこわいかい?」と、か細い声で聞かれても、選ぶべき選択肢はひとつしかない。
「こわくない…です」
そんなこんなで谷賊がアズーの仇討ちに付いていくことに。
「お前らがアズーと一緒に行ってくれるなら安心だが、なんで協力してくれるんだ?」
疾斗がそう尋ねた。
「アタイはアンタらに助けられた。その恩を返すことのどこが不思議なのサ」
これに関しては納得した疾斗だが、新しい疑問が浮かんだ。どうしてフィーナが拐われたのか、という疑問が。
しかしいくら考えても謎が解けるわけもなく、ヤルバーに肩を叩かれて我に帰る疾斗。
「ハヤト、オレはお前と一緒に行くぜ…」
「あ、あぁ」と応えた疾斗がヤルバーの顔を見ると、なにかモヤモヤしたものが彼の周りに漂っているように見えた。
ただ実際にモヤがかかっているわけではなく、彼の表情が雰囲気を生み出している、そんな感覚であろう。
「俺が…」
今度はゼントが話し始めた。
「俺があの時ハヤトと戦わなければ、アズーは両親ともうすこし長く言葉を交わせたのかも知れないのだ…」
誰もが静かに聞き入る中、彼は続ける。
「俺もアズーと共に行こう、と言いたいんだが、すまない。ここに、思い出亭に残らせてくれ」
母親が営む店の窮地を見過ごしてはおけないという一心である。
アズーもそう感じたらしく、「そっちもがんばってね、ゼントっ!」と笑う。
これをもって、これからの皆の行動が決まり、皆はそれぞれ準備をし始めた。
そして、この日の夜は静かだった。
アズーのような能力を持たずしても、この先に何かが待ち受けていることに誰もが気付いていた。




