四肢戦士
「以前、教皇騎士団には教皇に付き従う“四肢戦士”という4人の強者がいた。1人は天才的な頭脳を持つ女性、ニータ・モカフス…」
「あ、それ俺の彼女だ」
「なにぃぃぃッ⁉︎」
あまりの衝撃にゼントは上半身をそらしてその驚きを表現した。
「行方が知れない伝説の四肢戦士のうちの1人と恋仲だと…。お前は何者なのだ?」
「ん、そんなにすごいのか?」
へへっ、と表情が緩む疾斗。
「ま、まあ偶然があり得るのが人生だからな。うむ、偶然…」
未だに納得がいかないゼントの背を、シリーナが再び叩いた。
「さっさと続きを教えてやりな!」
背中をさすりながらゼントが続ける。
「2人目はガンゾールゾ・ディタ・ヘルメフォン。もともと貴族で、この人物も行方不明…」
「それってガンゾーのことだよな?」
疾斗がアズーに聞いた。
「そーでしょ。でもほんとに貴族だったんだ。冗談だと思ってたぁ」
2人が笑っているのを見て、今度はブリッジをして叫びをあげるゼント。
「なにぃぃぃッ‼︎ 1人ならともかく、伝説の戦士2人と知り合いだとォォッ⁈」
彼はできることならこの凄さをここにいる全員に理解してほしくて無理なリアクションをしている節があるのだが、皆の方は目の前にいる痛々しい男性に早く鎮まってほしい一心であるのが実にやるせない。
さてそうして、誰にも伝わらないことを悟ったゼントは3人目について語り出すのだった。
「3人目はゴンディ・チーユ。どんな傷も病も治す男だ。彼も行方が知れないでいる。そして、次に言う4人目がこの話の肝なのだ…」
ゴクリと唾を飲む一同。
その中で道を間違えたのか、ゴホゴホと咽せる人物が1人。
ヤルバーだ。
「いやー、すまない。ゴホッ。続けてくれ」
胸をトントン叩く彼をよそにゼントは本題へと移行し始める。
「4人目の戦士の名はタレス。四肢戦士は教皇から何事かを聞いた直後に各々の意思で解散して姿を眩ませたのだが、タレスはしばらくして反フォルタ教勢力を募り始めた。それが正剣兵団なのだ」
「正剣兵団…」
疾斗は繰り返すことによって何か気づくことがあるのではないかと思い、そうしたが、思うような結果は得られなかった。
「よくわかんないけど、」
それまで黙って聞いていたフィーナが口を開いた。
「その正剣兵団がアズーの両親の仇だってんだろ。なら殴り込むしかないじゃないのサ?」
そうヤそうヤ、とベイラルも乗り気だ。
これを聞いた疾斗はアズーの両肩に手を置いて、「アズー。仇、取りたいか?」と尋ねた。
尋ねられたアズーはしっかりと疾斗を見据え、「うん」と一声。
「そうか。ならお前とはまたここでお別れだな」
いつか聞いたことのあるセリフを疾斗が言い放つ。
「え…」
「何を言ってんのサ、ハヤト⁉︎」
「このように小さき子どもを置いてどこへ行くと言うのだ、あぁ⁈」
フィーナ、ゼントが、嘘であってほしいというような声をあげる中、疾斗は言葉を続ける。
「俺はヨンメルも助けるって約束した。あいつはもう生け贄になる旅に出ているはずなんだ。誰にも弱音を吐けないで苦しんでるはずなんだ。
俺だって本当は一緒にアズーの親御さんたちの仇を取りたい。
けど、なんだか嫌な予感がするんだ。アズーは一刻も早く仇を取りに行くべきだし、俺はヨンメルを助けるべきなんだ。
わかってくれ。最後までには追いつく。絶対に、だ」
言い終えた疾斗の目に映ったアズーは強さに満ち溢れた顔をしていた。




