【幕間】ベイラルの憂鬱
時間は少しだけさかのぼり、疾斗たちがシリーナと出会った頃。
ベイラルは平均年齢14歳ほどの谷賊の少年たちを引き連れ、商都ヴェミリを目指していた。
なぜ疾斗たちと共に行かなかったかといえば、フィーナ救出のための人員を選ぶのに予想外に時間を使ってしまったからである。
谷賊は総勢100名程度の集団で、男女比はおおよそ3対7。数少ない男手をどれぐらい救出に向かわせるかが話し合いの論点となった。
そんな議論の末に、谷族の中で比較的若い少年ら10人を連れて行くことに。
さてここで、なぜベイラルがこの任に就くことになったのか、という疑問を持った人のために説明をしておきたい。
谷族の長である頭領は、年寄り子どもなどの弱い者を守る義務があるため移動はできず、真っ先に除外された。
その次に実力があるのは頭領の娘であるフィーナなのだが、当の本人が捕まっているため、これも除外。
そうなると、フィーナの補佐的役割を担ってきたベイラルが適役だ、という結論に至ったわけなのだ。
しかし、選ばれたベイラルにはある懸念材料が。それは疾斗が以前見せた残酷な一面、いわば“闇ハヤト”についてである。
「アレは、なんだったんヤ…」
自分でも気づかないうちに、彼はそう声に出していた。
「なにか言ったヤピ?」
これまた個性的な語尾の、谷族の若者、ピヤムが尋ねる。
「あ、声に出てたかヤ?」
ふるふると首を縦に振る少年たち。
「実はヤ…」
歩みは止めず、ベイラルは背中越しに以前見た闇ハヤトの凄まじさを、後ろを付いて歩く少年たちに伝えた。
すっかり話し終えたベイラルが振り向いてみると、少年たちの顔は真っ青に近いものとなっていて、ただの注意喚起のつもりで言ったことなのに、と彼は少し後悔してしまった。
「だから気を抜くな、っちゅうだけの話ヤ」
そう付け足してみるも、時すでに遅し。少年たちの眼は恐怖に支配されてしまっている。
こんな調子で救出できるのか、と不安しか覚えないベイラルであった。




