温泉で作戦会議
お食事会場、といってもそれほど大層なものではなく、実際は15畳ほどの部屋である。
3人がそろって食事会場に入ると、シリーナが座っていたのだが、3人の格好を見るなり、「まだ着替えてなかったのかい⁉︎」と大声を出したため、3人は腰を抜かしてしまう。
「ミナ、アタシは近場の服屋からちょうど良いのを買ってくるから、アンタはハヤトたちの服を洗濯しててくれないかい?」
「ええ、わかったわ」
このやり取りから数分後。疾斗、アズー、ヤルバーはミナが服を洗濯してくれている間に温泉に入ることに。
「こっちにも温泉があるのか…」
湯温を確認しながら呟く疾斗。
「“こっちにも”?」
先に湯船に浸かっているヤルバーが不思議そうに、「ヴェミリは温泉でも有名じゃないか」と笑う。
「ほっとけ。俺は世間知らずの田舎モンなんだよ」
そう言ってゆっくりと疾斗は湯に足を入れる。
「僕も田舎モーン!」
疾斗の背後から服を脱いだアズーが走ってきて、水しぶきを上げながら温泉に飛び込んだ。
「あぶねっ」
「やったな、ボウズー!」
あははは、と3人そろって笑う声は廊下の掃除をするミナの耳にも届くほどで、彼女はクスリと笑う。
ひと通り騒ぎ通した後、急に3人は静かになり、フィーナ救出ついて話し合い始めた。
「明日はとりあえず訓練所の様子を見てこよう。敷地の広さ、警備態勢とかな」
疾斗がそう提案すると、ヤルバーは、「いや、もう潜入するべきさ。助けたいのはフィーナお嬢さんだけじゃない。ヨンメルちゃんのことだってあるから時間はかけられないだろ?」と反論した。
ヤルバーのこの主張は確かに納得できる。だが、疾斗はだからこそ慎重になるべきだと考えるのだ。
「それはそうなんだ。けど、俺たちが訓練所で捕まってみろ、その時は誰がヨンメルを助ける?」
この疾斗の意見はヤルバーを黙らせた。
「ねえ、」
アズーがおそるおそる手を挙げる。今までの疾斗たちの気迫に圧されたのだろうか。しかし、そんな状態でも幼い彼には何か考えがあり、今まさにそれを提案しようとしている。
「ヤルバーは一刻も早くフィーナちゃんを助けたいんだよね?」
「ああ」とヤルバーが頷く。
「ハヤトはトラブルなく助けたいんでしょ?」
「そうだな」と疾斗。
「じゃあいい方法があるよ。入団希望者のフリをして潜り込むんだ!」
しばらくの沈黙の後、おぉぉぉ、と疾斗、ヤルバーが同時に叫び、「いいな、その作戦!」と2人同時に笑った。
と、そのとき、「あのぉ、」という女性の声が。
3人が振り返ると、浴場の戸が少し開き、その隙間からミナが顔を出している。
「わわっ、ミナさん、なんで…⁈」
ヤルバーはこんな風に慌てて、湯船に肩まで入った。案外、彼はピュアなのだろうか。
しかし、こんなときでも我らが主人公、疾斗は冷静である。
「それで、なに?」
問われて、あぁそうだった、といった表情でミナが話す。
「疾斗さんとヤルバーさんの知り合いだ、っていう人が来てるんですけど…」
俺とヤルバーの知り合い? と首をかしげる疾斗。
「まあ、とりあえず行ってみよう。会ってみないとわからないさ」
そう言ってヤルバーは一足先に風呂をあがる。考えながら疾斗もその後を追った。
体を急いで拭き、ミナの後について玄関へ向かう。1番最後を歩く疾斗が、左右に分かれた廊下を右に曲がると、目の前にヤルバーの背中が。
ドンッ
「いてて、急に止まるな……え」
疾斗は自分の目を疑った。
彼の視線の先にいたのは、なんと以前教皇騎士団に連行されたヨンメルだったのだ。
「久しぶり。ハヤト、ヤルバー」
そう言って彼女は笑った。




