谷賊の由来
所変わって時間も過ぎて、谷賊の寝ぐら。紫色の谷をずっと上流に行ったところにある開けた場所。大きな焚き火を囲んで大勢の谷賊が談笑している。
そんな人の輪から離れるように、移動式住宅が建ち並ぶ場所が。
その中でも比較的大きめな住宅で、席を共にする谷賊の頭領と疾斗たち。
「…つまり、おまえらは教皇騎士団じゃなく、逆にあいつらと戦ってるってんだヤヤ?」
立派な無精ヒゲを見せつけようとしているのか、体を前かがみにして谷族の頭領は問うた。
「なんでこうなったかはオレたちにもわからないが、ね」
そう言ってヤルバーも前かがみになる。
「しっかし、アンタみたいなのが女の子1人のために命を賭けるとは思えないねぇ」
疑わしさを漂わせながら、フィーナは疾斗を見た。背中を見せている相手に容赦なく攻撃した彼が、そんなことをするなど信じられないのだろう。
「ねえ」
なんともいえない空気をアズーの声が晴らす。
「僕たちって身ぐるみ剥がされないの?」
フィーナと頭領は目を丸くした。そうして頭領に目くばせをされたフィーナは、
「アンタらの身ぐるみなんか剥がすつもりはないよ」
と笑った。
腑に落ちない様子で、「なぜ?」とヤルバーが問う。
「アタイら谷賊ってのは紫雲岩を掘ってそれを売ることで食ってるのサ。採掘には呪具なんかも使うから危ない。そういうわけで近くに住んでるヤツらが自分から近寄ろうとしないように、『谷賊に捕まったらひどい目にあう』ってな噂を流してるのサ」
自分たちが採掘した跡はあたかも渓谷のようになるから“谷”賊なんだ、ともフィーナは言った。
「さあ!」
パンッと手を叩き、頭領が笑う。
「説明も終わったし、おまえら宴に行ってこい!」
言われて、疾斗たち3人が立ち上がると、「アンタにはもう少し話がある」とフィーナがヤルバーの腕を掴んだ。
彼の腕の血管が浮き出る。
「ハヤト、ボウズ、先に行っててくれ」
「アズー、行くぞ?」
疾斗はアズーの手をとって宴が開かれている外へ出て行った。




