戦いの幕開け
「まあそうだろうな」
アズーの「未来が見える」という発言に疾斗はそう応え、「みんな気づいてなかったのか?」と言葉を重ねた。
驚きを隠せないのは告白したアズーの方かもしれない。疾斗がすごい人物だということは薄々わかっていても、ここまでとは思わなかったのだろう。
しかし、アズーが驚嘆しているのは疾斗がアズーの能力を予想していたことではなかった。アズーの予知していた発言と違うものが疾斗の口から出たことに、彼は驚いているのだ。
「なんで? これまで外れたことは一度もないのに…」とアズーは頭を抱えた。
そこへあの謎の声が。
「おーい、茶番もそろそろ飽きたぜ? ウチのワンコたちと遊んでくれや」
「どうやら、この『恋笛のヤルバー』が本気を出さにゃならんみたいだな」と言ってヤルバーは笛をかまえた。
「笛の音色であの怪物どもを癒そうというのか!?」と、せっかくの強面も台なしのセリフをガンゾーが言った瞬間、
スパッ スパッ
ヤルバーの前にいた狛犬二体が真っ二つになった。
「…うん、そうなるよね」とアズー。
ガンゾーは、「一体どんな術を使ったのだ?」と首をかしげる。
すると、ヤルバーは黙って笛を見せた。実は彼の自慢の笛は仕込み刀で、2つに割れた笛の片方から鋭い刃が伸びている。
このヤルバーの攻撃は半魚人たちをにわかに勇気づけたが、謎の声は不機嫌な様子だ。
「ウチのかわいいワンコたちを…よくもッ!」
「反撃されるスキをつくるな!」とガンゾーが叫ぶ。
この声に従い、半魚人たちはドゥーナ、アズー、ネイビスを囲むように円になった。
こうして狛犬との全面対決が始まるのだった。




