占い師
急に様子がおかしくなってしまった疾斗を挟むようにして、アズーたちと謎の女性は対面していた。
疾斗は女性を指さし、睨みつけ、大声を上げ始めた。しかし、
「テメェ、女ァ‼︎ なぁ〜に俺のお楽しみ邪魔してくれてん…」と、疾斗の怒号は途中で止まってしまった。いや、“止めざるを得なくなってしまった”。
なぜなら、そこに立っている女性に見覚えがあったからだ。
「あっ、テメェあんときの占い師じゃねーか‼︎」
そう言ってずかずかと歩み寄った疾斗だったが、「あ"?」と立ち止まって、よくその女性を見てみると、あることに気づいてしまった。
「…若ェな」
そう。いま疾斗の目の前にいる女性は、疾斗が自分の世界で会ったしわくちゃの老婆とは似ても似つかない絶世の美女だったのだ。
でもなぜか、彼女があの老婆と同じ人物だと思えてならない。そう心が呼びかけているように疾斗は感じていた。
そんな疾斗の真横をさっと抜けて出た影が1つ。
「おぉ、うるわしき人。キミはさっき、『なんとかの器』とか言っていたね。それは何なんだい?」
ヤルバーは美女の手をとり、ひざまずきながら尋ねた。
しかし女性は質問に対しては無視で、自分の手に触れている、目の前の色男をまじまじと見つめて、
「ほうほう…。なんと! おぬしは、“切愛の器”じゃの。いったい幾人の女性をたぶらかしてきたのやら」
と、またわけのわからないことを言った。
するとこのタイミングで、疾斗が急に頭を押さえて苦しみだした。半魚人たちからどよめきが起こる。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!
ん、俺は一体…?」
スッと背すじを伸ばした疾斗の瞳にはいつもの温かさが戻っていた。
「もう、何がなんやら…」と、冷静モードのドゥーナでさえ、この混沌の渦に滅入り始めようとしている。
「ところで、ここに倉持 疾斗は居るか?」と、急に謎の女性が表情を変えた。
「それは俺だけど…」疾斗は戸惑いながらも答えた。
「そうか! おぬしが“ニータ”の…」
女性は驚いた顔をしたが、それ以上に驚いている男がいた。
「ニータ…だと。それはニータ・モカフスのことか?」
と、ガンゾーが額に汗を浮かばせて、拳を握りしめる様子を見て、疾斗は自分とそのニータという人物にどんなつながりがあるのかがとても気になった。




