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贄の運び屋  作者: ニシキメサイコ
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協力要請

「待てと言って待つような男でないことは分かっている……」


隊長は疾斗の顔を見つめてそうため息をついた。温かい、ため息だった。


呪束砲が発射されてから4日後の昼、沼地から少し離れた草原に、疾斗、アズー、ヤルバー、ドゥーナ、隊長、そして数多の半魚人たちが集っていた。


皆、ギュイヴを悼み、彼との思い出話を四、五人ずつで固まって語らっている。


数日経っても思い出話が尽きないのだ。亡くなった彼にせめてもの救いがあったとすればまさに今この瞬間だろう。


しかし疾斗がここへやって来た本来の目的を無理に果たそうとしたら、彼らに必要なこの時間を奪ってしまうことになる。そんなことは絶対にしたくはないが、ヨンメルも絶対に助けたい。そんなことを考え、疾斗が頭を抱えていると、


「2つだけ質問させてもらうぜ?」


ヤルバーが笛をペンのようにクルクル回しながら隊長に言った。


「一つ目。アンタ水中で『自分は貴族だ』とか言ってたな。半魚人でも貴族になれるもんなのかい?」


「あ、あの、それなら私から……」


ドゥーナがちらちらと隊長の顔色をうかがいながら口を開く。


「ご主人様は……もともと人間でした。私も、2日前に聞いたので、驚いていますが。実は、半魚人として私と会う前に……キョルメ=ルネイスという一等星に姿を変えられたらしいのです」


これに対し、適当に「そうかい」と相づちを打ったヤルバーはさらに尋ねた。


「んじゃ、二つ目。アンタら半魚人全員、オレたちの力になってくれやしないか?」


ヤルバーがこんなことを言うなどと考えていなかった疾斗は、


「何言ってんだ。隊長たちはついこのあいだ仲間を自分たちの手で……!」


と騒ぎ立てようとしてみたが、まるで疾斗がこの場にいないかのように無視してヤルバーは続けた。


「いやぁ、アンタらにはなるべく断ってほしくないんだぜ? ほら、ハヤトってマジメだから、アンタらが『嫌だ』なんて言っちまったら1人で突っ込んで行くと思うのさ。オレは」


ヤルバーの指はまっすぐ疾斗を指している。


彼の言葉が夏の日差しのように鋭かったせいで、疾斗は何も言えなくなってしまった。


そして隊長とドゥーナは「確かに」と頷いている。


「しょれで、俺しゃまたちはどう力になれば良いのだ?」


「じゃあ経緯は俺から……」と観念した様子の疾斗は、ヤルバーと出会ってからいままでをこと細かに話してきかせた。


「そ、そんなっ!? 生け贄はアズーじゃ……なかったんですか?」とドゥーナ。


その声で、ずっと眠っていたアズーが目を覚ました。


「僕を……呼んだ?」


「あ、アズー。ごめんな、起こしちまったか」と穏やかに謝る疾斗。


疾斗とアズーが再会した日、つまりギュイヴが亡くなった日、彼らの間に特別な何かはなかった。ただ疾斗が「アズー」と言い、ただアズーが「はやかったね」と言っただけだった。


2人の間ではそれで十分だった。


「もう少し寝てていいぞ」


優しい声で言った疾斗はひと呼吸おいてドゥーナに尋ねる。


「それで改めてなんですが、俺たちに力をかしてもらえないでしょうか?」


「決まっています」とドゥーナ。


「半魚人は困った隣人は放っておけないのだ。それが異界の者でもな」と隊長も頷く。


「皆の者ォ、次に我らがなすべきことは、囚(とら)われの少女を救い出すことだッ!」


「オォー!」と草原に半魚人たちの勝どきが響き渡った。

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