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贄の運び屋  作者: ニシキメサイコ
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【幕間】ラペットのダット

腕っぷしのみがモノをいう商都ヴェミリ郊外の漁村ラペット。そんな村の真ん中で村人たちから因縁をつけられるアズー、フィーナ、ベイラル。


村人の1人が今にも殴りかかりそうな勢いでベイラルに詰め寄る。「オメェら、見たとこ旅人じゃねぇみたいだがこの村に何しに来やがった?」彼の視線はベイラルの背の薙刀型の呪具、『せっかちな雷鳴』に注がれている。


ベイラルは慌てて弁明を試みる。「ち、違うんヤ、これは。オレたちはダットってヤツに用があって来たんヤ!」


その名前を聞いた途端、ベイラルに食ってかかった村人は冷や汗を流しながら後ずさりをした。彼だけでなく3人を取り囲んでいた村人たちが明らかに落ち着きを失っている。


異様な変化にベイラルとフィーナが困惑していると背後から、


ズドォォォォォォン


と凄まじい轟音が鳴り響いた。


音の方向へ目を向けると全長12メートルはくだらない黒いヘビが横たわり、その上で腕組みをする青年が。彼は頭にハチマキを巻き、藍色の甚平のような服を着ているが、全身ずぶ濡れである。


そんな彼が村人たちに向かっておもむろに叫ぶ。「見たかよ、ザコ共ッ! 近海のヌシをシメてやったぜぇーーー!」得意げな顔で巨大な黒ヘビをゲシゲシと踏みつける姿は幼稚に見える。


そして村人たちの中に見慣れない3人を見つけた青年は驚くべき速度で駆け寄り、お決まりのようにベイラルを睨みつける。「おめぇ、おもしれーモン背負ってんじゃねーか。ケンカするか?」


睨みつけられたベイラルは半ベソで応える。「なんでどいつもこいつもオレに突っかかるんヤ……。このアズーがオマエに用があるから、オレと姐さんは付き添いで来たんヤ」


アズーという名前を聞いた途端、青年の目から敵意が消え、親戚の子どもに向けるような優しいまなざしに。「アズー! ひっさしぶりだなーーー!」


アズーはニカッと笑って応える。「ダット兄ちゃん相変わらずケンカっぱやいね」


「ば、バカおめぇ、今のは武器背負ってるこいつが悪りぃだろーーー」まるで怒られた子どもが必死に言い訳をするようである。


この様子を見ていたフィーナは会話がグダグダになりそうな気配を感じ取ったのか、コホンと咳払いをしてアズーを促した。


「そうだった」と本来の目的を思い出したアズーは、ダットを含めた村の者たちに、彼の故郷であるルァヴィンが壊滅したこと、それは正剣兵団のしわざであるようだということを伝えた。


ひととおり聞き終えたラペットの村人たちは自分たちの遠い血縁たちの村が知らぬ間に壊されていた事実に憤りをあらわにしている。ダットも例にもれず、拳をポキポキと鳴らしながら、「ワイの弟分のアズーを泣かした奴ら、許せねーーーッ!」と吠えた。


ここで村人の中から優しげな顔立ちの老婆がダットに話をする。ラペットの長老でリーダー的存在のラナエイだ。


「ダット、アズーたちと一緒に行きな」


これにダットは「言われなくても!」と返す。「ババアが言った”村の外に出る条件”のヌシ狩りはちょうど今日終わったんだからよーーー!」


「あれはお前が村の外で問題起こしそうだから適当に無理難題ふっかけただけなんだけどなぁ……」まるまる聞こえる声でラナエイがつぶやいた。


「まるまる聞こえてんぞッ、ババアーーー!」


何はともあれダットという仲間がアズーたちに加わることになったのであった。

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