二人の足取り
「あの、この辺で『恋笛のヤルバー』って名乗る紫髪の男から声かけられませんでした?」
ヨンメルとヤルバーを追う疾斗は、道ゆく女性を見かけてはこんなことを尋ねながら、ガンゾーから聞いたヤルバーが最後に向かった方角へと駆けていた。
しかし問題の聞き込みは上手くいかず、今のところの収穫といえば、疾斗自身が訳の分からない口説き文句でせまってくる変質者という風評を被る現状である。
だが心が少しすり減ってきたところに待ちかねた声が。
三つ編みをした町娘が疾斗をみつけて駆け寄ると、
「すみません、ヤルバーさんを探してるのはあなたですか?」
と話しかけてきたのだ。
「ッ…! ヤルバーを知ってるんですか!?」
疾斗がその娘を見て、たしかにあいつなら口説きそうだなと思っていると、意外な返事が。
「はい。あの方はついこの前ゴロツキに絡まれていた私を助けてくださって…」
聞いてみれば納得ではある。困っている人をなんだかんだ放っておけないのがヤルバーだ。
そんなことを考えて疾斗は質問を続ける。
「その時近くに赤い髪の女の子はいました?」
「ええ、ずいぶんと大人びた表情をしていたのでよく覚えています」
「2人はどっちへ?」
尋ねられた娘は恐る恐る指差し答える。
「…あれは正剣兵団の方だったと思います」
正剣兵団。アズーの両親の仇であり、元四肢戦士タレスが首領の反フォルタ教組織だ。
そんなところへヤルバーはヨンメルを連れて何を。
「考えてもしかたないか…」
そう呟くと疾斗は娘に礼を言って教えてもらった方角へ走り出すのであった。




