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贄の運び屋  作者: ニシキメサイコ
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答え合わせ

「う……ん…?」


心地よい光の中で目を覚ました疾斗。手で地面を撫でてみる。乾いた土だ。


横を見ると、ゴン爺が自分と同じような体勢で眠っていた。


「おはよう、ハヤト」


頭の上から声が。爽やかに笑うヤイトだった。


「…おはよう。俺たちはなんでこんなとこで寝てるんだ?」


全身が痛むようで、疾斗は肩を回したり、首を鳴らしたりしている。


「あー、それね。朝、ボクと修行したでしょ。でも前日の疲れとかがあったみたいで2人とも急に寝ちゃったんだよね」


今はちょうど頭上に太陽が昇る頃だった。


それと現在自分たちのいる場所がピューロの住処のすぐそばということを確認した疾斗は、「俺はもっかいピューロの修行をするからゴン爺さんを頼む」と言って駆け出し、窪みに向かって飛んだ。


「がんばって〜」というヤイトの含みのある笑みには気付かず、疾斗はピューロのフンを避けている。


と、ヤイトは思い込んでいた。


というのも、驚くことに、今の疾斗には闇ハヤトになっていた時の記憶が先ほどの部分だけ残されていて、彼は何も知らないフリをしているだけなのだ。


そのために当然疾斗はヤイトがあの時話した内容を覚えていた。


では、少し時間を遡ろう。


「俺がなんでこんなヤツの中にいるんだ」という闇ハヤトの質問に対して八糸が答えようとした場面まで。


闇ハヤトについて話すと言った八糸の話は、「まずはボクとボクの仲間について話す必要がある」という断りから始まった。


「ボクらは神を守るために集められた“護衆(ごす)”っていう集団。これはみきピロ経由で疾斗には伝えたんだけど、ね」


「その“神”とはいったい…?」とゴン爺。


「ザルゴア。闇邪神(あんじゃしん)ザルゴアがその神さまの名さ」


それはあまりに恐ろしい響きだった。人間が神と崇めるものは畏敬の念からそう呼ばれるようになると聞くが、それが真実であることがよくわかる。


ここで少し落ち着いてきた闇ハヤトが、「なんでテメェらはソイツを守ってやがる?」と問う。


「ザルゴアだけが世界を救えるって信じてる連中がいるからだよ。一部を除いて、ね」


「その“一部”がテメェってことか」


「そう。あとは石ころと壱ノ手…いや、倉持のじいちゃん? うーん。まあ、教皇でいいや。この3人」


「よもや、教皇までもが異なる世界から来ておったとは…」と、動揺を隠せないゴン爺。


「おい待て」


ここで闇ハヤトが待ったをかけた。


「じゃあテメェはなんでザルゴアってのを守ってんだよ?」


この質問に、微笑をたたえていた八糸の顔が一瞬で引き締まる。


「それはね、ザルゴアを倒すためだよ」


「は?」


「ザルゴアは大いなる闇。倉持のじいちゃんの先祖はずっとずっと昔、ボクらの世界でザルゴアを封印した。


でも時が経ってその封印が弱まってしまったんだ。そしたらザルゴアは今の護衆になる人たちを集めてこう言った。


『この世界はもう長くない。私は唯一滅びを止められる神だ。私が本来の力を取り戻すまでの間、私を守ってはくれぬだろうか』ってね。


運の良いことにザルゴアはボクらが自分を封印した子孫とは気付いていなかった。だから近くでヤツを倒す機を待つためにボクらは護衆としてヤツを守ることにした、ってわけ」


「そっちの事情は大方わかった。じゃあ次は俺の話をしろ」


「まず、キミはデュリオス。それはキミ自身も分かってるね。で、なんで疾斗の体に入ってるかっていうと、疾斗を守るためなんだ」


「コイツを、守るだぁ?」


「そ。疾斗のピンチに強制的に出てきて戦う。そのためにキミはそこに入れられたんだよ」


「ざっけんな。俺は、俺はそんなくだらねぇことのために…」


唇を噛み締める闇ハヤト。


「まあ気持ちは分からなくもないよ」と八糸が闇ハヤトの肩に手を置く。


「おい、そういや…」と闇ハヤトが何かを思い出したように顔を上げた。


「俺の体はどうなってんだ?」


「伝説通り、レヌァスンの中心の島で生け贄を待ってるよ」


「じゃあ、そっちにも意思があるってことか?」


闇ハヤトが疑問に思っているのは、デュリオスの精神が疾斗の中にあるのなら、本体の方には意思がないのではないか。ということだった。


「あるよ。善と悪で心を割ったんだから。これまでの長い間、泣きながら送られてきた生け贄を食べていたなぁ」と八糸が笑った。


「けっ、胸くそワリぃ…」


ここで、場が少しだけ収まったと見たゴン爺が、「ワシからまた質問じゃ」と割り込む。


「おぬしらはどうやってザルゴアを倒すつもりなのじゃ?」


「疾斗とデュリオスを使うんだよ」


「なに?」


「まあ、本命はデュリオスなんだけどね。彼の正体は異能の力を持つ人間を喰らうことでその力を取り込むことができる異能力者なんだ」


「では、ハヤトは?」


「疾斗には特別な力、っていうか才能があるんだ。他人の邪心を取り込むっていうね。ボクらはそれを“邪喰(じゃしょく)の器(うつわ)”って呼んでる。


そして、デュリオスの悪意は本来、ボクや他の誰かに入れたとしたら暴走どころの騒ぎじゃ済まないくらいの代物なんだ。でも疾斗がその悪意を喰らうことでバランスが保たれてる。


この力でもしかしたらザルゴアの邪さえ喰らい尽くせるかも知れないって思ったんだよね」


衝撃の連続に闇ハヤトとゴン爺はすっかり言葉を失ってしまった。


すると八糸は再び注射器を取り出し、指輪をはめた右手を掲げ、「『世渡し』ッ!」と叫んだ。


ゴン爺が「しまった」と思ったのも束の間。背後にはすでに八糸がいて、ゴン爺の首に注射器を刺していた。


「ぐぁッ!」


ドサッ


地面に倒れ込むゴン爺。


だが、八糸が持っていた注射器は一本ではなかった。


「『世渡し』ッ!」


再び八糸が叫び、闇ハヤトの背後へ。


抵抗する間も無く闇ハヤトも意識を失ってしまう。


こうして冒頭の部分に戻る、というわけである。


全てを覚えている疾斗は隙を見てここを抜け出すことを決心していた。

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