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椿の花が枯れるまで【ノベル大賞2次落選作】  作者: 衍香 壮
第5章「生と不思議の国の帽子屋」
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第65話「中紅花の交渉」

 店先で別れを告げ、レノスとアリスさんの背を見送る。個室に通された私は緊張を抱えながら、先に席へ腰掛けているマイヤーさんに会釈した。


「お待たせしました」


「アタシも今来たところよ~、すぐ話を始めたいと思ったから料理は勝手に頼んじゃったわ。好きなものを食べてねぇ」


「ありがとうございます。いただきます」


 挨拶はしたものの手は付けない。彼女が自らの分をよそい口に入れる様を見止めてから、私も皿に手を伸ばした。


 まるで中華料理のような出で立ちだ。円のテーブルに見たことのない料理が並んでいる。小皿で食べたい物をよそい、数種類食せる形になっているのは正直有難かった。


「悪魔君も何か食べる~?」


「いや、俺はいい」


「そう、じゃあ早速リアちゃん、不老不死について訊かなくていいの? 貴女、一言もその話をしなかったじゃなぁい?」


「聞きたいのは山々ですが、訊ねたところで答えてくれるマイヤーさんではないでしょう?」


「そうね。じゃあどうするの?」


「また、こうやって食事の席に呼んでくださいますか? ……いえ、私がお招きしても構いません。一緒に食事をしたいんです」


「ふふっ、それがどういう意味か分かって言ってるの?」


 分かっている。そして勿論、彼女がそれを知っていることを分かって持ち掛けたのだ。余裕の笑みを浮かべた彼女はテーブルに肘を附き、手の甲に顎を乗せていた。


「食事を共にした相手とは親密度が上がるのよぉ、それを知って食事をしたいだなんて、とんだ性悪ね」


「では、その時にはLilacの限定グッズでも付けましょうか。確か藤さんが好きなんですよね?」


「乗った」


「ありがとうございます」


 交渉しやすいのかしにくいのか。天使さんに聞いたことが意外にもココで役立ったらしい。


「そういえば……どうしてマイヤーさんは天使さんと仲が悪いんですか?」


「天使ちゃんね~、あの子面白いわよぉ。アタシのこと大っ嫌いなの」


 どうやら仲の悪さは筋金入りのようだ。黙って耳を傾けながら、食べ物を咀嚼する。さすれば楽し気に続きを紡ぐ彼女がいた。

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