友達
無事に試験が終わり4人で打ち上げを行うことにした。
打ち上げはどこで行うか最初はバラバラの意見だったが、最後は食べ放題の焼肉店に行くことに決定した。
お店を見つけドアの前まで来ると、ある張り紙を見つけた。
「あれ、このお店業持ごうもちお断りだって」
「しょうがないよね。まぁウチらは業持ごうもちは差別には慣れっこだからさ。別の店探そうよ」
アレクトが言うとみんな「そうだねー」と返し、一同は別の店を探すことにし、夜の繁華街を探し回った。ネオンの光が濡れた路面に滲み、行き交う人の声が遠く近く聞こえていた。
しばらく探し回り、次に見つけたお店は業持ちがOKだったため入店し個室に案内され、みんなそれぞれジュースやビール、肉を注文した。
「お待たせしましたー。こちら生3つとジンジャーエール、ハラミ、牛タン、カルビになりまーす!」
ティシ、アレクト、ウルに生ビールがいき、ネイトにジンジャーエールが届いた。網の上で肉が焼ける音と煙が、狭い個室にじんわりと広がっていく。
届いた瞬間、乾杯をし隠し事なく色々な話をし、最初にウルが口を開いた。
「じゃあまず、なんで軍隊に入ったのか!私はね、お姉ちゃんに会うため!」
「お姉ちゃんいるんだー。お姉ちゃんも同じ駐屯地なの?」
そうティシが言い質問した。
「そう!かっこよくて!可愛くて!強くて!優しい!私の最強のお姉ちゃん!でも、最近忙しいのか全然メッセージの返信が返ってこないんだよね」
ウルはお姉ちゃんが返信が返ってこないのがよほど悲しいのか下を向いた。持っていたコップの表面についた水滴を、指先でなぞっている。
「まぁ軍は忙しいっていうし、しょうがないよ!多分作戦とかに投入されてるんじゃない?」
「そ、そうだよね!」
アレクトがウルの背中を叩き、励ました。
「じゃあ、流れ的に次はウチだね!ウチは、ヴァルグド帝国への復讐と叔母さんに恩返しをするためかな?」
「なんで恩返ししようと思ったの?」
ネイトが首をかしげて質問した。
「まぁここで言うのもあれだけど、小さい頃に記憶はないけど、ヴァルグド帝国の兵士に両親を処刑されてそれ以降叔母さんに育ててもらってたんだ。」
「それは可哀想に、本当にヴァルグドの奴らは非人道的だね」
「ネイトちゃんはどうして軍に?」
「私の両親は軍の偉い人なんだよね。だから生まれたときから軍に務めることは決まってるんだ。テレビとかでヴァルグド帝国がひどいことをしてるっていうのはよく聞くから滅ぼしたいって気持ちはある」
「え!そんなに両親偉い人なの!」
「そう、お父さんが大佐でお母さんが少佐」
アレクトとティシは口に含んだ飲み物を吹き出し、仰天した。慌てて紙ナプキンでテーブルを拭う音が響く。
「え!本当!」
「嘘!ネイトちゃんそんなすごいの!」
「いや全然だよ。それよりティシちゃんはなんで軍に?」
ネイトは手を横に振りティシに質問した。
「私は、小さい頃に核爆弾でお母さんを失ったから、復讐のために入った」
「え!核ってヴェルニカ町に落とされたやつでしょ!?」
ウルが前のめりになり聞き返し、ウルの隣ではネイトが何かを思い出そうと腕を組んでいた。
「確か、お父さんが核が落ちた街に唯一の生存者が居たって言ってたけど、ティシのことだったんだ」
「え!私唯一の生存者だったの!?」
机を両手で叩き立ち上がり、びっくりしたように大声で言った。焼き網の上で肉が跳ねる音すら、一瞬遠くなった気がした。
「お、落ち着いて、お父さんが言ってたから、多分そうだと思うよ。ティシの保護のためにもニュースでは生存者なしの報告をして、孤児院にも戦争孤児として普通の子と一緒に保護するって言ってたし」
「え、いや、そ、そんなはずない。私以外にも生存者はいるはず!」
「落ち着いてティシ!」
ティシは落ち着き、ゆっくりと席に戻った。
「ご、ごめん、初耳だったから、つい」
「いや私が悪かったよ。でももし、他にも聞きたいことがあったら私に連絡してもらえれば、お父さんとお母さんに調べてもらうこともできるよ」
「ありがとう」
「ほ、ほら肉も来てるんだしどんどん焼いて、食べちゃお」
アレクトがトングも手に持ち肉を焼きはじめた。ジュウ、と脂の弾ける音が、気まずい沈黙を埋めるように響いた。
みんなお腹がいっぱいになりお会計をした帰り道、疲れたのかしばらく沈黙が走りティシが口を開いた。夜風が火照った頬に心地よかった。
「ねぇ、私達が生きてる間に戦争って終わるのかな」
「いやーどうだろうね」
「お母さんは絶対に終わらないって言ってた」
「いや、終わるのを待つんじゃなくて、ウチらの世代で戦争を終わらせるの!何よりウチらより後の世代には嫌な思い出を残してほしくないし!」
みな目を合わせアレクトの意見に賛同するように大きく頷いた。
「たまには良いこと言うじゃんアレクト」
「えへへ」
ティシがアレクトのことを肘で小突き言った。
その後それぞれ別の道で分かれティシはネイトに言われたことを一人で思い噛み締めていた。街灯の下を通り過ぎるたびに、自分の影が伸びては消えていく。
(私だけが生存者。なんで私だけ生き残ったんだろう。あの時一緒にお母さんと死んでいたら…)
ティシは立ち止まり、目に涙を浮かべた。
(これから軍に入るってのに、泣いちゃダメだ。ヴァルグド帝国を滅ぼし、最高司令官を殺すためにも、頑張らなきゃ)
涙を拭き顔を上げた。
今日の帰り道はいつもに増して、冷たく、悲しかった。




