真実
身体検査の方も終わり次は面接だ。
中に入ると壁際に椅子がズラリと並べられていて、すでに何人か座っており順番待ちのようだ。誰もが背筋を伸ばし、時折落ち着かなげに指先を組み替えていた。
しばらくすると自分の番が来た。
「失礼します」
ドアをノックし入室した。
正面には駐屯地司令らしき男の人が机に肘をかけ手を組んだまま座っており、見た目は白髪混じりで左目には斜めの傷ががあり、光を失ったかのように常に閉じられたままだった。
「どうぞ座って」
「失礼します」
面接が始まった。この司令と思われしき人は「アレス」と言うそうだ。
面接の内容は先ほどのアスク先生とあまり変わらず、特に心理的につかれる質問などはされなかった。ただ淡々と質問に答えた。
「では、最後に質問はあるかね」
「あの、昔ここに私の父テュールはいましたか」
「…」
しばらく沈黙が続いた。時計の秒針の音だけが、やけにはっきりと耳に届く。
「何か知っていたら教えてください。覚悟はあるので何を言われても大丈夫です」
固唾を飲みながら、答えを待った。
司令もあまり言いたくなかったのだろうか、口をゆっくりと開いた。
「…死んだよ」
「…!?」
「そ、そうですか…。ありがとうございます。」
覚悟はしていたがまさか死んでるとは思わなかった。
あまりにもショックが大きく、少し涙ぐみながらもそう言葉を残した。
「…では、これで面接は終了だ。あとは帰宅してもらっても構わない。合否通知は後日メールで送る」
「はい、分かりました」
椅子を立ち上がりドアの前へ向かい
司令に一礼し
「失礼しました」
と言いドアを開け退出した。
最初の案内場に向かいながら、ティシは少し落ち込みながらも怒りも込み上げ、復讐に対する熱はさらに熱くなった。
(絶対にヴァルグド帝国を滅ぼす!)
「ねぇ?どしたの?そんなしかめっ面して」
アレクトが横から顔をひょっこり出し言った。
「え、あ、そんな顔してた?なんでもないよ」
自分の顔を触りながらアレクトにニッコリ笑った。
「そう?ならいいけど。それよりさ!ジャーン!お友達できた!」
彼女の後ろから片目を前髪で隠した女の子が、アレクトに押し出されながら、ティシに紹介をしてきた。
「ど、どうも。初めまして。ネイトって言います。以後お見知り置きを…」
そう言いながらティシの方にハムスターのような耳を垂らしながら一礼した。
「そーんなかたっくるしい挨拶しないの!」
「でも、初対面だし…」
「いやいや、全然大丈夫だよ!よろしくねネイト!」
ネイトとティシは握手を交わすと後ろから猛ダッシュでこちらに来る音が聞こえた。多分
「ちょっと〜!置いてくなんて酷いよー!ティシ!」
後ろからティシを包み込むようにウルは抱きついた。
「ごめんごめん」
「で!誰と喋ってたの?」
ネイトとアレクトを紹介しようとした瞬間、ネイトを指差しウルが「あぁー!」と叫びだした。
「ネイトだー!来てたんだ!」
「う、うん。ウルこそ来てたんだね」
ウルは少し笑みをこぼし言った
「2人は友達なの?」
ネイトとウルがアレクトの方を向き大きく頷いた。
話を聞くと、中学の頃から同じ学校に通ってた親友同士らしい。
でもなんでこんなに温度差が凄い2人が親友なのかと言うと、どちらもスキーという同じ趣味を持っており、それが影響で仲良くなり、友達になったらしい。
「それで、後ろの金髪の子は?」
「ウチの名前はアレクト!ティシの小さい頃からの親友!」
胸を張りながら自慢げそうにアレクトは言った。
「へー!なんか私たち運命みたいだね!せっかくだし何処か4人で食べに行こうよー!」
「いいね!」
「賛成!」
「いいよ」
みなウルの意見に賛同した。
4人はご飯を食べに行くことにし駐屯地を後にした。日はまだ高く、四人分の影が並んで前へと伸びていた。
その頃駐屯地司令とアスクは…
「頬に小さい傷があり、ミサンガを付けた子覚えてます?」
メガネを掛け、書類を見みながらそう言うと、アレスは椅子から立ち上がり、窓から見える4人を眺めた。
「あぁ、ティシだろ」
「彼女から顕あらわれの業ごうが検出されました」
「やはりか」
司令の眉が挟まる。
「分かっていらっしゃってたようですね」
「確か、面接の際彼女は小さい頃の記憶を一部失い、断片的な事しか覚えてないと言っておった。そして断片的ではあるが核爆発で母を失い敵兵らしき人に襲われたところを誰かに助けられたとも言っていた。私の予想ではあるが小さいが故にあまりにも強大な力の顕の業を発揮してしまい、力に耐えられず一切覚えていないのだろう」
アスクは少し笑い言った。
「私の予想とほぼ同じですね。やっぱり彼女は本当に面白い。この事を合格通知と一緒に送りますか?」
司令の耳がピクリッと動く。
「やめておけ。彼女自らの気持ちで覚醒させるのだ」
「承知しました」
アスクがティシに関する書類を司令の机の上に置き立ち去った。窓の外では、4人の影がすでに門の向こうへと消えていた。




