試験・2
身体検査の順番がこちらに回ってきた。
「次はこの列な、俺の後ろについて来い」
そう兵士が言うとみな後ろについて行き、奥の部屋へ入って行った。廊下の先から消毒液のような匂いが漂ってくる。
部屋の中には業持ちの医者が2人と人間の医者1人がおり、部屋の中心には何やら冷凍カプセルのようなベッドがあった。その奥には重厚な電子機器がベッドに繋がれていた。低い駆動音が、部屋全体にかすかに響いている。
「全員いるな!ここはよくある普通の身体検査とは違い、この最近できたばかりのカプセルベッドを使い検査を行う。ただお前らはこの中に入り横になればいい。その後電気の業持ちの2人がこの電子機器に力をこめ始動させる。終わった者は左の部屋に入り医者からアンケートを受けろ以上だ」
説明が終わると、前から一人一人名前を呼ばれ、カプセルの中に入っていった。
中に入ると、先ほど説明していた兵士がカーテンを閉め、こちら側から見えないようにさせられた。カーテンの向こうの音だけが頼りだった。
すると後ろから、試験にギリギリ間に合った女が小声で声を掛けてきた。
「ねぇねぇ、さっきはごめんね。動きがうるさくて」
そう、彼女は試験中ずっと動きがうるさかったのだ。身体は動かすし、ペンを机でトントン叩くし。
正直教官に報告し失格にさせてやろうと思ったが、流石に可哀想だったので我慢して問題を解き続けた。
「あー、うん大丈夫」
苦笑いをしながらそう返した。
「ほ、本当!?よかったー。私落ち着くのが苦手でさ、嫌われるかと思ったよ〜」
彼女は胸を撫で下ろすように息をついた。
「どこの部隊所属とか決めた?私はね歩兵科!」
「私も歩兵科」
「一緒だね!よろしくね!私はウル!あのさ…」
「おい!そこ喋るな!」
「「は、はい!」」
教官に怒られ、しばらく沈黙の時間を過ごした。カプセルの機械音だけが低く響いている。
順番が回ってきてカプセルの中に入った。冷たい素材が背中に触れ、思わず肩をすくめた。
(あれ、特に何も感じないんだな)
カプセル内での身体検査はすぐ終わり、次の検査に向かった。
中に入ると、まるでカウンセリング室のようになっており、正面を向くように椅子が配置されていた。柔らかい照明が部屋全体を包んでいる。
椅子に座るとすぐに部屋の隅の左奥のカーテンから、若い男性の人間の医者が来て、正面に座った。
「こんにちは、君がティシちゃんだね。私の名前はアスクレピオスよろしくね。長いからアスクとでも呼んでくれ」
「は、始めましてよろしくお願いします」
頷きながら返事をした。どこか甘くて安心する声がする先生だった。
「じゃあまず質問1つ目。もし君の大切な人が敵側のスパイまたは敵側に手のひらを返したらどうする?」
「え…?それは…敵国の味方をしたわけですし、その場で殺します」
急な心理的な質問に少し戸惑いつつも、軍人らしい答えを出した。
「それが、本当に親や親友だとしてもかい?」
「う…それは…気絶させて、捕虜にさせます」
「うん、まぁまぁいい答えではあるね」
何故か冷や汗が止まらない。ただ質問に答えるだけなのに、試験の時より緊張してしまう。なんなのだろうかこの圧力は…。
「質問2。何故君は軍に入ろうと思った?」
「母への復讐のために敵国の指導者を殺し国民も根絶やしにし滅ぼします。そして父を探すためです!」
少し熱くなってしまい、大きな声を出してしまった。拳を無意識に握りしめていた。
先生も少し戸惑ったようにし、「フフッ」と笑っていた。
「君面白いね」
「?」
「みんな衣食住を安定させるとか、お金が安定してるからとか、復讐と言いながら1個人ではなくただ敵国の兵を殺せればいいと思ってる人がほとんど。そんな中に君は母親の復讐のために敵国の指導者を殺すなんて言った。それに加えて父を探すために同じ軍に入った。そんな子なかなかいないよ。忠誠心がかなり強いみたいだね。凄いよ」
忠誠心が強い、そんなこと初めて言われた。
でも振り返ってみるとアレクトと遊ぶ時や用事も、私は1度も約束を断ったことはないし、遅刻もしたこともない。バイトでも相手に従われた事は全て完璧にやり遂げていた。でも、今までバイトでも年上から褒められたことがなかった。正直今までで一番嬉しい出来事になったかもしれない。胸の奥が、じんわりと温かい。
「これで質問は終わり!じゃあ次はー…面接ね。まぁ私の時よりは簡単だし、優しいおじいちゃん一人で面接してくれるから、頑張ってね」
「はい!ありがとうございました!」
身体検査兼心理検査的なものを終わらせ、次の試験へと進んだ。




