出会い
「…!ハァッ…ハァ」
最近よく小さい頃の夢を見る。
起きる頃には冷や汗が止まらなく、異常に疲れる。
もう何回同じ夢を見ただろうか、何回も見ているはずなのに母親の顔が思い出せない。あの爆発の影響で幼い頃の記憶を一部だが忘れてしまった。母親の顔もそれに含まれている。
「そっか、今日入隊試験の日だった」
ふとカレンダーを見ると、4月11日に何重にも赤ペンで囲まれていて、「入隊試験!」と赤文字で書かれていた。
テレビを付けながら朝食を食べ、顔を洗い、身支度をし、前日に準備した荷物を片手に家を出た。
家を出てしばらくすると右手首に違和感を覚え、右手首をあることに気づいた。
「あ!忘れ物!」
そう、昔に母親からもらったミサンガである。
小さい頃の記憶は一部失ったが、このミサンガをもらった記憶だけはよく覚えているがもらった時母親に何か言われたような気もするがなかなか思い出せない。
忘れ物を思い出した私は猛ダッシュで家に戻った。
その途中で「おーい」と声と共にこちらに走ってくる音が聞こえた。
「おーい!ティシ!」
「アレクト?」
「はぁはぁ、もうなんで逃げ出すんだよー。何回も名前呼んでも反応ないし」
下を向きながら猫耳を垂れさせ、息を荒げながらそう言った。
そうこの子は獣人との血を継いでる。「血の業」持ちだ。
この世界には「業持ち」と呼ばれる異能を持つ人達が2つ存在する。
先天性の「血の業」と後天性の「顕れの業」がある。
「血の業」は古代から人間と共存してきた獣人族やエルフ族から血を継いでいるため獣耳や尻尾などの身体的特徴があり、異能が使用できる。この世の約半分はこの「血の業」持ちだ。
「顕れの業」は特に稀で普通の人間が強い感情を持って生まれるためその分先天的より力は遥か上である。強い感情によって生まれるため、能力をしようとするまたは強い感情を出すと体の一部に痣(亀裂)が発生し、獣耳や尻尾が一時的に生える。
というのがこの世界の常識である。
「走らずに業使えばよかったのに」
「やだよー。ウチら獣人は人間とは別で業の能力試験があるの!それまでに力を温存しておかなきゃいけないし!」
「確かにそうだったね」
少し苦笑いしながら小さく頷いた。
幼い頃からの親友アレクトと共に他愛もない会話をしているうちに、あっという間に試験会場の駐屯地に着いた。
周りは緑に囲まれ空気が美味しい場所だった。
「ここか」
「入口からして試験がもう始まってるって感じ」
固く閉ざされた鉄のような扉の前には頬に刻まれた傷が特徴的な現役の兵士1人が門番をしており、ずっと遠くを見ている。
「あの…」
ティシが声をかけるとこちらの顔を一瞬だけチラリと見た
「試験番号10129と試験番号10130だな?」
「は、はい!」
こちらを見た瞬間2人の試験番号を大声で読み上げた。
その声に2人はびっくりし反射的に返事をしてしまった。
「許可する。入れ」
その声同時に重い扉がゆっくりと開いた。
2人は扉の奥に入り、前へ進んだ。
ティシは振り返り、先ほどの兵士はまた動かず、ずっと遠くを見ている。
「あの声どこかで…?」
「どしたー?」
「大丈夫、なんでもない」
「いやー、あの兵士怖かったねー。獣耳生えてたし、多分記憶関係の業持ちでしょ」
「う、うん」
昔の事を考えつつあの声を思い出そうとしている間に試験会場の案内場に着いた。
ここで人間と業持ちで分かれて試験が始まる。




