明日の終焉
ママと買い物。
ママとおままごと。
ママと手遊び。
たまにパパと一緒にボール遊び。
そんな日々が永遠に続いたらと思っていた。
日が沈みよその家では食器の音が聞こえる頃。
私と母は手を繋ぎ帰宅していた。
「ねぇ!ママ!今日の晩ごはんは?」
「今日はあなたの大好きなハンバーグよ~!」
「やったー!」
私は繋いでる手をブンブンと振り飛び跳ねた。
あの時のことは今でも覚えている窓からはカレーの匂い、公園から聞こえる「バイバイ」の声、町内に鳴り響く5時のチャイム
そして私は絶対に忘れないあの瞬間を!——
「ママ!あのね私今度がっこぅ…」
その瞬間視界は真っ白になり、耳はいつまでも「キーン」という音が鳴り止まない。
一瞬の出来事だった体は瓦礫に挟まれ動けない、血は止まらない、混乱して息は上がる、周りは暗い。
でも左手だけはギュッと握ったあの母の手の感触はある。
「ねぇ、ママ?」
声を振り絞って手を揺らす。
反応がない。
「ママ?ママ?」
息はさらに上がり涙ぐむ。
「ねぇ!ママ!ママ!起きてってば!ねぇ!」
そこから何分何時間と手を振り声を荒げた。
涙が止まらない、痛い、苦しい、辛い。
目の前が真っ白になってからどのくらいたった頃だろうか。
遠くから数人の足音がこちらから聞こえてくる音がした。
救助してもらうために疲れ切った声を振り絞り助けを呼び叫んだ
「誰か!助けて!」
そう声を荒げているうちに足音は真後ろぐらいの距離まで来ており、段々と重かった背中が軽くなっていくような気がした。
瓦礫を完全に退かしてもらい希望に満ち溢れながら立ち上がると、そこには銃を持ち、黒い軍服にガスマスクを付けた男が2人立っていた。
恐怖で足が動かない。
「なんだぁ?このガキ」
「何!?あの核爆発で生存してるのか!?」
「この爆発でも生きてるなんて運がいいな。でもまあ生存者は全員殺せと少佐に言われてるからこのガキも殺さなきゃな!?」
「おい待て!この子はまだ子どもだぞ!」
「あぁ!?うるせぇ!お前は少佐からの命令を無視すんのか!」
2人が喧嘩している間に私は勇気を振り絞り走りだした。
「おい!待て!」
靴は脱げ、足は血だらけになりながらも夢中で走り出した。
その瞬間…
バァン!
鋭い音が空中を切り裂き、私の足が止まった。
体はもう1度逃げ出そうとしているが次走り出したら絶対に殺されるそう本能が言っていた。
「おーい、何逃げ出そうとしてんだ?まぁいいお前はどちらにせよ死ぬんだから、今ここで殺してやるよ」
「すまない」
すでに死を悟っているためかそれとも、もうすぐママに会えるかもという心情もあるためか涙が出ない。
「ママ大好き」
目を瞑り最後にそう言葉を残した。
バァン!バァン!
すると後ろから何かが倒れる音がしたためゆっくり目を開け、後ろを振り返ると、さっきの2人が血を流し倒れていた。
そして後方からまたガスマスクを付けた誰かがやってくる。
「敵兵2名を排除。前方の偵察にあたる」
「なーんだ、また雑魚兵士かよー」
「ウチのスナイパーがやっと役にたったね!って子ども!?生きてる!?」
スナイパーライフルを背中に抱えた女の人がこちらの方に走ってきて、しゃがみ込み状態を確認してくれ、ちょっとした傷を手当てしてくれた。まるで母親のように。
「はい!これでオッケー!でも絆創膏貼っただけなんだけどねー」
嬉しいのか悲しいのかなぜだか涙が込み上げてきた。
ガスマスク越しに見える瞳はまるで海のように綺麗で輝いていた。
「あー!シモちゃん子ども泣かせたー!」
「え!嘘でしょ!ごめんねー」
「はぁー。おいシューとシモ1度帰還するぞ。シモは子どもの事をおんぶしていけ」
そう男の人が言うと私はシモという名前のスナイパーのお姉さんの背中にしがみつき、涙を拭いた。
その背中はどこか似ていて暖かい
私はそれに安心したのかぐっすり寝てしまっていた。




