襲撃
日も暮れてきた頃、5人はネイトのおかげで車を動かすことができた。
街を出ると、完璧に舗装された道路とは言えないが、車で進めそうな道に出てしばらく走らせた。
「もう少しで夜になる、一旦ここで車中泊するぞ」
カリスは出来るだけ敵に見つからないようにと、路肩の木の横にエンジンを切り車を止めた。
日はゆっくりと山の稜線に沈み、空が藍色に染まっていく。虫が鳴く音が、少しずつ大きくなっていった。
「2人で交代して、周りの監視をするぞ。1時間ごとに交換だ」
「イエッサー」
5人は交代しながら睡眠を取った。狭い車内で身を寄せ合い、エンジン音のない静けさの中、時折誰かの寝返りを打つ音だけが響く。夜が更けるにつれ、虫の声すら遠く感じられるほど、あたりは静まり返っていった。
アレクト、ウルが監視していた頃。
「ねぇウル。なんか車の音しない?」
アレクトが耳をピクピクさせて言った。
「いや、まさか〜」
そう言いつつ道路に顔を出すと、道路に照らされてる明るい光が段々とこちらに近づいて来た。
「段々こっちに近づいてくるよ」
「もしかして仲間!?」
ウルが「おーい」と言いながら道路に飛び出し、手を振った。
「待って!敵かもしれない!」
「え?」
こちらに向かってくる車の窓から体を乗り出した黒い人影2人がこちらに攻撃をしてきた。銃口が瞬時に光り、乾いた音が夜の静寂を切り裂く。
「危ない!」
アレクトは血の業を使用し、道路に出たウルを頭を押さえながら担ぎ車の後ろに隠れた。
「ごめん、ありがとう」
車のブレーキ音と共に、車から出てくる音がした。
2人は息を潜めた。心臓の音が、自分の耳に聞こえてしまいそうなほど響く。こちらに段々と足音が近づいてくる。
敵兵はゆっくりと車の中を確認しながら、通過した。
アレクト、ウルはカウントダウンをし、飛び出そうとした瞬間——
パァン、パァン。
2発の銃声が夜気を裂き、続けて何かが崩れ落ちる音がした。振り返ると、暗がりの中でカリスが窓から体を乗り出し銃を構えていた。
「2人とも大丈夫!?」
ティシが2人に駆け寄り、頷く。
「こいつら敵軍の奴らだ。この道を進んできたってことは、この道で合ってるっぽいな。でもネイトがいち早く気付いて良かった」
銃声に気づいたネイトがすぐ後部座席に隠れるように指示したため、バレずに済んだのだ。
「でもこいつら、私たちのことを知ってて来たんじゃない?だってそれ以外こっちに来る理由がないと思う」
ティシが敵兵士たちの、死体を漁りながら言った。
「それは一理あるな」
「ねぇ!こいつらの車乗れるんじゃない!」
ウルが敵の乗ってきた車両に向かった。
「エンジンかけたまま放置してるから、そのまま乗って行けるよ!」
「本当か!よしちょうど日も明けてきたから、このまま行くぞ!」
「イエッサー!」
5人は車に乗り、急いで駐屯地へ向かった。
1時間ほど走ってると段々と道が細くなってきて、車1台分の横幅しかなく、ゆっくり走らないと木に追突してしまうほどだ。
それから20分ほどゆっくり走っていった。
「お!お前ら壊された駐屯地のフェンスが見えてきたぞ!あいつら、フェンスをぶっ壊してこっちに来たんだろうな」
目の前に広がる光景は思いもよらない光景だった。
5人が過ごした駐屯地は赤い炎と黒い煙に包まれていた。夜明け前の薄青い空に、炎の色だけが異様なほど鮮やかに浮かび上がっている。
「う、嘘でしょ…」
ティシの声が震えた。頬の古傷に、無意識に手が伸びる。あの日と同じ匂いがした。焦げた匂い。忘れたくても忘れられない、あの日の匂いだった。
「私たちの居場所が……」
アレクトが呟き、言葉を失った。いつも軽口を叩く彼女の耳が、力なく垂れていた。
ウルとネイトも言葉が出ないのか、燃え盛る駐屯地をただ見つめていた。
カリスはアクセルをベタ踏みし、大急ぎで燃え上がる駐屯地へ向かった。
「多分大丈夫なはずだ…」
「大丈夫って、何かあるんですか」
「ああここの駐屯地には防空壕があるし、最新型のレーダーサイトが24時間体制で見張っている。しかも外からは鍵なしでは開けられず、中からしか開けられないから、大丈夫なはずだ」
4人はカリスの言葉を聞き少し安堵したのも束の間、5人は直ぐに車を降りカリスの後を付いて行った。土と煙の匂いが混ざり合い、喉の奥にまとわりつく。
「こっちに付いてこい!」
そう言われ付いていくと、駐屯地の横にいつもあった重い扉で閉ざされていた地下駐車場のような場所に着いた。
ドアの前に行きカリスが監視カメラに向かって、ドアを開けるよう言った。
「ヴィルドリア駐屯地所属軍曹のカリスだ!ドアを開けてくれ!」
しばらく応答がないまま一度去ろうとした瞬間、重い扉がゆっくり開いた。金属が擦れる低い音が響いていった。




