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交渉と結果

 セアラの声には怒りがこもっていた。もちろんアクアポリスの住民達にではなく、やって来た者達への怒りだ。

 あれだけ馬鹿にしておいて、今更どの面下げてアクアポリスにやって来たんだという思いが強い。

 バードがセアラにこれまでの経緯を軽く説明する。

 セアラは、未だ俯いたままであるピックスに目をチラリとやって口を開いた。


「へえ~、じゃああなた達はこの弱小国のアクアポリスと取引がしたいと言うの? 弱小国にはろくな物がないと言っていたのに? 嘘だと言って効果を信じず、地面に叩きつけたアイテムを欲しいと?」

 

 セアラの言葉から根に持っている様子が伝わってくる。

 チクチクと嫌味ったらしい口調で責めている。


「あの時の少女か! 確かにそういったが……。まさかそのようなアイテムをアクアポリスの者が持っているとは思わないだろう? それにアクアポリスにとってもいい話のはずだ。大国ルブランと繋がりを持てるのだからな」


 少し罰の悪い顔をしたエイハブだが、セアラのことを幼い少女と侮っているのだろう。謝るどころか、自分は間違っていないといった顔で話す。

 ピックスに対しての態度よりは丁寧だが、上から目線の態度が隠せていない。


「お断りします。別にルブランとの繋がりなんてどうでもいいです。アクアポリスはルブランよりも大きな国となるんですから」


 セアラはきっぱりと断る。


「ハハハ! いくら何でも大言壮語が過ぎる。 いいかい、国を大きくするのはそんなに簡単なものじゃないんだよ。ここで断れば後悔するよ」


 エイハブはセアラの言葉を鼻で笑い、現実をわかっていない幼子に説き伏せるように話した。


(くっそう! こいつ全然私のこと信じてないよ! バカにしている! すぐにぎゃふんと言わせてやるからな!)


「別に後悔しません。何度も言うようにお断りします。みんな、ルブランから来た者達のことは放っておこう。どうせ結界内に入れないんだし」


 セアラはこれ以上話しても無駄というようにエイハブとの会話を切り上げ、住民に奥へ移動するように誘導する。

 これに焦ったのはエイハブ達である。


「待て! いや、待って下さい! あなたの判断で決めてしまってはまずいのでは? アクアポリスの国の国主様にも知らせるべきではないでしょうか?」


 エイハブはセアラが背を向け結界の奥へ足を進めようとするのを見て彼女が本気なのだと、この時になってようやく気が付いた。

 そしてセアラの言葉に住民達が素直に従う様子を見て、この少女はもしかしたらアクアポリスで高い権限を持つ役職についているのだろうかと考え、言葉遣いを丁寧なものに直した。

 

 だが、エイハブは大きな勘違いをしていた。

 彼はセアラが自分の話を断るのは、昨日ルブランで取られた態度に腹を立てているからと考えていた。

 そしてアクアポリスの国主が知れば、ルブランと繋がりが出来ることを喜ぶだろうと信じていた。

 だから腹を立てているセアラが、エイハブ達がアクアポリスに来たことを国主に伝えないつもりだろうと思い、慌てて引き留める言葉をかけたのだ。


「別にまずくなんかないよ。だって私が国主なんだから」


 セアラはしつこく取りすがるエイハブにめんどくさくなって正体をばらした。

 さすがに国主にあんな態度を取ったと理解したら、断られるのが当然で諦めるだろうと思ったからだ。

 あまりにも馬鹿にした態度にムカついたという理由もあるが。


 バートはやってしまったかという顔をし額に手を置いた。

 エイハブはセアラの言った言葉を上手く理解できなかったのかあっけにとられた顔をしている。

 口を開いたのはエドガーである。


「おいおい嬢ちゃん、いくらなんでもそんな嘘は誰も信じないぜ。昨日は馬鹿にして悪かったよ。そうだ! 嬢ちゃんもルブランの国民にならないか? あのアイテムを手土産にしたらルブランの国主様も認めてくれるだろう」


 セアラの言葉は全然信じられていなかった。それどころか、エイハブが気付いたことさえ理解していないようだった。

 セアラをただのアクアポリスに住む少女と思っているのだろう。それもルブラン国の名を出せばすぐに靡くだろうとも。


 怒りよりもセアラは頭を抱えた。

 はっきりと国主だと言ったのに全く信じてもらえないことに。


「国主様、彼らのような無礼な者を相手にする必要はありません。奥に戻りましょう、国主様」


 シミルが“国主様”という言葉を強調し、相手に知らしめるような話し方をする。

 

「そうですぞ! 国主様、奴らのことなど放っておきましょう!」

「国主様、奥に行きましょう!」

「国主様、さあ中へ」


 住民達がシミルに言葉に同意するようにセアラに声をかける。

 その様子にやっとセアラがアクアポリスの国主だと理解したのだろう。エドガーの顔色は目に見えてわかるほどにひどい。

 

「待って下さい! 国主様にあのような無礼な口を叩いたことは謝罪します。本当に申し訳ありませんでした。どうか、話をもう1度だけ聞いてください」

 エイハブは服が汚れるのも気にせずその場で土下座した。

 本来プライドの高いエイハブにとっては珍しい行為なのだろう。弟のピックスは目を見開いて驚いていた。


「国主様、こいつの言うことなど聞かなくていいですよ」

「そうですよ、今更聞く必要なんてありません」


 住民達は口々にそう言った。

 セアラとしても、聞いたところでどうせ意思は変わらないしなと思った。

 昨日のあの対応でルブランは切ると決めたのだ。

 セアラのその様子を敏感に感じ取ったのだろう。エイハブが叫ぶように声を上げた。


「昨日のあのアイテムを持って帰らないと、ルブラン国を追い出されるのです。そうなれば死んでしまいます! 今持っているお金全てを渡します! 国に帰れば蓄えているお金もあります、それも渡します! お願いします! あのアイテムを譲ってください!」


 恥も外聞もない様子で必死にセアラに頼み込む。

 その様子にエドガーも慌てて土下座し謝罪の言葉を繰り返す。


(どうしようかな、これ)









 結論を言えばセアラは、錬金アイテムを渡した。アイテム3つともわざわざ最低品質に落としたやつをだ。

 それに効果が跳ね上がるアイテムの使う順番なども話していない。

 だからアクアポリスのように急激に成長することはなく、精々成長が少し早まり収穫量も1.5倍に増える程度だろう。

 それでも住民達はあんな奴らにアイテムをやらなくてもと言って反対したが、なんとか宥めた。

 “国を追い出されたら死んでしまう”という言葉に同情したからである。

 命を狙ってくる敵には容赦するつもりもないが、それ以外でセアラの行動で人が死んでしまうと考えると躊躇ってしまう。

 そのおかげで、バードを含めた護衛達にはさんざん甘いと言われた。


 その代わり、アイテムと交換で向こうのお金を巻き上げることはもちろん、小麦を含めアクアポリスにない作物の種や染粉も手に入れた。他にも色々な物を手に入れた、全てタダで。

 つまりは足元をみてやったのだ。

 青ざめる奴らの顔を見て少しは留飲が下がった。

 セアラのある意味容赦のないその行動に護衛達は少し引いていたが。


 しかしセアラはルブラン国で受けた屈辱は忘れていない。

 もっと世界樹のレベルを上げアクアポリスを大国に押し上げなければ、ルブラン国のような大国に見下されると知った。

 ゲームの中では最上位に位置していたので、今の状況にワクワクしていた。


(下剋上か面白い。これからアクアポリスのすごさを世界中に知らしめてやる)

 

 


 



 

「本当は国主様の正体をもう少し隠していたかったんだけどね」

「すまない」

 バードの言葉にシミルは謝った。


「まあ、国主様を信じないで馬鹿にしていたのに腹が立つ気持ちはわかるけどさ」

「すまない」

 耳をしょぼんとさせてシミルは謝る。


「俺達が国主様を守れば問題ない」

「そうよ、私たちが気をつければいいじゃない」


 アルダスの言葉にターシャが同意する。

 バードは大きくため息を吐いた。


(はあ、まわりは脳筋だらけか。本当に僕ってそんなキャラじゃないんだけどなあ)


 バードの悩みはきっと続く。

 チャラいわりにアクアポリスに来てからは意外に苦労人なバードであった。





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