第41話:最強JK、謝罪会見(?)
『【謝罪】南校舎での一件と、今後について【ご報告】』
そんな釣りタイトル(サムネはスーツ姿で深々と頭を下げるフリー素材)で配信枠を取ってから、5分後。
「……同接、55万?」
カラオケボックスの防音室で、タブレットの画面を二度見してしまった。
配信開始前だというのに、既にひとつの地方都市の人口に匹敵する人間が待機している。
コメント欄は滝のように流れていて、もはや解読不能だ。
『待ってた!!』
『ワルキューレきちゃあああああ』
『Fake』
『CG乙』
『政府の犬め』
『Marry me!!』
日本語、英語、中国語、ロシア語。
世界中の言語が入り乱れている。
「……やるか」
深く息を吐き、配信開始ボタンを押す。
画面に、いつもの「銀髪JK(俺)」が映し出される。
ただし、今日は制服ではなく、田中が用意したオーダーメイドの戦闘服だ。
謝罪会見で戦闘服。田中のセンスを疑うが、これも「公認」としての演出の一環らしい。
「あー、テステス。聞こえてるか?」
俺が少しダルそうに声を出すと、それだけでコメント欄が加速した。
スパチャ(投げ銭)のエフェクトが画面を埋め尽くす。
……まだ挨拶しかしてないんだが?
『うおおおおお! 本物だ!』
『声好き』
『その装備かっこいい』
『どうせ特撮だろ』
『CG班仕事しろ』
「えー、今日はみんなに報告がある。……先日、SNSで拡散された動画についてだ」
田中が書いた台本を、淡々と読み上げる。
「あの動画は事実だ。俺……私、七瀬遙は、政府が極秘裏に育成していた『認定探索者候補生』の第一号だ」
『!?』
『マジで認めた』
『政府公認!?』
『やっぱり軍属じゃねーか!』
『中二病設定キタコレ』
「信じない奴もいるだろうから、ここで証明する」
ポケットから、一枚の500円硬貨を取り出す。
壁際にある空き缶を指差す。
俺はカメラのアングルを微調整し、俺の指先と、その延長線上にある壁が『同一フレーム』に収まるようにセットした。
「カット編集も、CGもなしだ。このまま撃つから、瞬きするなよ」
硬貨を親指で弾く。
キンッ、という高い音と共に、硬貨が回転しながら空中に舞う。
それを右手でキャッチし――。
「……ッ!」
瞬間。
親指に魔素を集中させ、渾身のデコピンを放った。
――ズドン!!!!!
発砲音と間違えるような爆音が、狭い個室に響いた。
500円玉は音速を超え、空き缶を貫通し、さらに背後の防音壁に深々とめり込んだ。
「……っ」
親指の関節が悲鳴を上げる。
魔素で強化したとはいえ、この華奢なJKボディで音速の弾丸を撃つのは無理があったか。
指先がジンジンと痺れている。
「……あ、やべ。壁いっちゃったか」
やれやれ、と肩をすくめる。
カメラは固定したままだ。硝煙が晴れた後、そこには壁にめり込んだ硬貨が映し出されている。
紛れもない、ノーカットの実演映像だ。
「これでもまだ、CGだと言いたい奴はいるか?」
一瞬の静寂。
そして――。
『!?!?!?!?』
『は?』
『レールガンかよ』
『指どうなってんだ』
『物理演算バグってる』
『【速報】JK、デコピンで音速を超える』
直後、画面が見えなくなるほどのスパチャの嵐が吹き荒れた。
赤、青、黄色。
札束の雨だ。
しかも、この全てが「非課税」なのだ。
(……笑いが止まらん)
口元の緩みを必死に堪えながら、カメラに向かってニヤリと笑ってみせる。
「これからは公認探索者として、もっと派手に暴れてやるから見とけよ。……チャンネル登録と高評価、よろしくな」
最強JKによる「謝罪会見」。
それは、後に「最もクレイジーなカミングアウト」としてネット史に刻まれることになるのだが――それは、また別の話だ。




