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第4話:無自覚な主人公と対魔弾

 ミノタウロス戦の後、俺は早々に配信を切り上げた。

 理由は単純。お腹が空いたからだ。

 若返ったせいか、代謝が良くなっているらしい。燃費が悪い体だ。


「……ふぅ。今日はこれくらいにしておくか」


 俺はコンビニで買ってきたおにぎりを頬張りながら、PCを開いた。

 配信のアーカイブを確認するためだ。

 反省点は山ほどある。

 まず、ミノタウロスへのトドメ。あそこでナイフを使ったのは少しリスクがあった。

 本来なら、関節を撃ち抜いて無力化してから近づくべきだった。

 調子に乗って「魅せるプレイ」をしてしまったかもしれない。


「……ん?」


 動画の再生数が、妙なことになっていた。

 10万回再生。

 配信終了からまだ1時間も経っていないのに、だ。


「バグか?」


 俺はページを更新(F5連打)してみた。

 12万回に増えた。

 バグではないらしい。


 コメント欄を見てみる。


『ここが伝説の始まりか』

『サムネのJK、可愛すぎてAIかと思った』

『中身がガチの軍人説すき』

『いや、動きが古流武術のそれだろ』

『特殊部隊のCQC教本に載ってる動きそのままだぞ』


 ……なんだこれは。

 俺の動きについて、やたらと専門的な考察が飛び交っている。

 中には「軍人説」なんて鋭い指摘もあるが、まさか52歳の引退傭兵だとは誰も思うまい。

 大半は「設定の作り込みがすごいJK」として楽しんでいるようだ。


「まあ、正体がバレなければ何でもいいか」


 俺はコメントをスクロールしていく。

 すると、気になる書き込みを見つけた。


『この子、装備のチョイスが渋すぎる』

『M4カービンじゃなくて、あえてのHK416(カスタム済み)を選ぶあたり、ガチ勢の波動を感じる』

『ナイフも量産品じゃなくて、職人の手打ちだろこれ』


 ……ほう。

 分かっているじゃないか。

 俺の愛銃と愛刀の良さに気づくとは、最近の視聴者も捨てたものではない。

 俺は少し嬉しくなって、そのコメントに「いいね」を押そうとして……止めた。

 いかんいかん。

 俺は「新人JK」なのだ。

 武器のうんちくに反応したら、キャラがブレる。


「……危ないところだった」


 俺は冷や汗を拭った。

 JKの演技ロールプレイ

 これが一番の難関かもしれない。


 翌日。

 俺は再びダンジョンへ向かった。

 昨日のミノタウロスの素材が高く売れたので、今日は少し装備を整えようと思う。

 目指すは、ダンジョン内にある個人経営の古びた武器屋だ。

 表向きは正規店だが、現金払いならID確認を省略するという噂がある。

 死人扱い(ID凍結中)の俺には、そこしか選択肢がない。

 見た目はJKなのだから、あまり怪しまれないように振る舞わないとな。


 しかし、俺はまだ知らなかった。

 昨日の配信が拡散され、俺の知名度が爆発的に上がっていることを。

 そして、武器屋で待ち受ける店主が、俺の「同業者」である可能性を。


     ◇


 ダンジョン都市、第三区画。

 冒険者向けのショップが立ち並ぶエリアだ。

 俺は、その一角にある古びた銃砲店に入った。


「いらっしゃ……い?」


 カウンターの奥から出てきたのは、眼帯をした強面の親父だった。

 俺の姿を見て、怪訝な顔をする。

 無理もない。制服姿の美少女が、一人で銃砲店に来るなんて異常事態だ。


「……お嬢ちゃん、店を間違えてないか? クレープ屋なら隣だぞ」

「いえ、ここで合っています」


 俺は努めて明るい声(JKボイス)を出した。

 そして、カウンターに現金(昨日の素材の換金分)が入った封筒を置く。


「対物ライフル用の徹甲弾を3ケース。あと、C4爆薬……は売ってませんよね。なら、クレイモア(指向性対人地雷)の代用品になるような魔道具はありますか?」


 店主の目が点になった。

 そして、ゆっくりと口を開いた。


「……お嬢ちゃん。戦争でも始める気か?」


「いいえ。ただの探索(散歩)です。……それと、もし在庫があるなら『対魔弾』も」


 俺が付け加えると、店主の眼光が鋭くなった。

 対魔弾。ダンジョン産の粉を混ぜた、対モンスター用の特殊弾だ。

 低層の雑魚なら通常弾でも通るが、魔素膜が濃い個体は弾かれる。

 本来はギルドの許可証がないと買えない代物だ。


「嬢ちゃん、その弾……対魔弾だろ。今どきはギルド経由じゃないと手に入らねえぞ」

「……在庫がある。そう顔に書いてあります」

「……ふん」


 店主はしばらく俺の顔を見つめていたが、やがて「フッ」と笑った。


「いい目だ。……気に入った。奥の棚(裏在庫)を見せてやる」


 どうやら、話の分かる店主で助かったようだ。

 俺はウキウキしながら、店の奥へと案内された。

 ドローンが黙ってついてきていた。

 どうやら、スリープが解除されて自動追尾に戻っていたらしい。

 俺はため息をついた。

 整備が必要だな。


『店主との会話がハードボイルドすぎる』

『「戦争でも始める気か?」「いいえ、散歩です」←名言きた』

『JKの買い物リストじゃねえwww』


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