第5話:初めてのボス戦(ソロ)
武器屋での買い物を終えた俺は、その足で第五層のボス部屋へと向かった。
今日の目標は、このエリアのボス『オークジェネラル』の討伐だ。
本来なら6人パーティで挑むのがセオリーらしいが、ソロの方が気楽でいい。
連携ミスで背中を撃たれる心配もないしな。
ボス部屋の前には、数組のパーティが待機していた。
順番待ちか? 律儀なことだ。
「おい、嬢ちゃん。一人か?」
声をかけてきたのは、軽薄そうな男だった。
装備を見るに、Dランク冒険者といったところか。
「ここはボス部屋だぜ? 迷子なら案内してやるよ」
「いえ、結構です。順番待ちなら並びますので」
俺は冷たくあしらった。
だが、男は引き下がらない。
「つれないなぁ。俺たちと組めば、安全にレベリングできるぜ? 報酬はいらないからさ、な?」
下心が見え見えだ。
こういう手合いは、戦場でもよく見た。
新兵を盾にして生き残ろうとするクズか、あるいは単なる女好きか。
どちらにせよ、関わりたくない。
「……どいてください。私の番です」
ちょうど前のパーティが出てきたので、俺は男の横をすり抜けてボス部屋に入った。
背後で「あーあ、死んだな」「無謀すぎる」という声が聞こえたが、無視する。
◇
ボス部屋の中は、腐臭が充満していた。
中央に鎮座するのは、身長4メートルを超える巨漢のオーク。
全身を鋼鉄の鎧で固め、巨大なモーニングスターを手にしている。
オークジェネラルだ。
「ブモオオオオオッ!」
侵入者に気づいたボスが、威嚇の咆哮を上げる。
普通の女子高生なら、これだけで腰を抜かすだろう。
だが、俺は冷静にドローンの位置を確認した。
「……アングルは良し。では、始めるか」
俺は対物ライフル『バレットM82(改)』を構えた。
装填したのは、なけなしの金で買った12.7ミリの対魔弾。
本来は車両や軽装甲車を破壊するための兵器だ。
それを、俺は立射で構える。
『は?』
『バレット!? どこから出した!?』
『いや、それを立って撃つのは無理だろ! 肩が外れるぞ!』
コメント欄が騒がしいが、俺には聞こえない。
集中。
呼吸を整え、心拍数を落とす。
スコープの中、オークジェネラルの眉間にある、兜の隙間を捉える。
距離50メートル。
風なし。湿度良好。
オークジェネラルが突進を開始した。
地響きと共に迫る質量。
だが、俺の指は微動だにしない。
引き金を絞る。
ガァンッ!!
落雷のような轟音。
華奢な肩を砕きかねない強烈な反動。だが、修正した「少女用の構え」と体幹操作で、衝撃を地面へと逃がす。
放たれた弾丸は音速を超え、オークが纏う分厚い魔素の障壁を紙のように引き裂いた。
直後、兜ごと頭部がその形を失う。
「……ふむ。やはり対魔弾はいいな。障壁ごともっていける」
頭を失った巨体が、勢いのまま数メートル滑り、俺の目の前で停止した。
血飛沫が舞うが、俺は一歩下がってそれを避ける。
戦闘時間、わずか3秒。
ワンショット・キル。
「弾薬の節約になったな」
俺はライフルを肩に担ぎ、カメラに向かってVサインをした。
JKらしいポーズを意識してみたが、どうだろうか。
◇
ボス部屋の外に出ると、さっきの男たちが口をあんぐりと開けて待っていた。
俺が無傷で、しかも数分で出てきたことに驚いているようだ。
「お、おい……まさか、逃げてきたのか?」
「いいえ。倒しました」
俺はドロップアイテムの『ジェネラルの魔石(大)』を放り投げ、キャッチした。
男たちの顔が青ざめる。
「じゃあ、お先に」
俺は颯爽と去っていく。
背中で、男たちの震える声が聞こえた。
「化け物かよ……」「あんなのがJKなわけねえ……」
失礼な。
正真正銘、ピチピチのJK(52歳)だぞ。
帰り道、俺は換金所に寄った。
ジェネラルの魔石は予想より高く売れた。
今夜は少し良い飯が食えそうだ。
同接の数など、俺には関係ない。




