表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
29/33

第29話:特定(敵アジト)

「……結論から言うと、これは『爆弾』ね」


 放課後の理科準備室。

 そこは現在、俺たち『チーム・JK(仮)』の作戦本部となっていた。

 白衣を着た如月セナが、モニターに映し出された解析データを指して言う。


「あの黒い粉末、主成分はダンジョンの魔石だけど、配列が意図的に書き換えられてる。……これを散布することで、周囲の空間の魔素濃度を強制的に引き上げ、モンスターをごく局所的に『興奮状態スタンピード』にさせる」


「人工的なスタンピード、か」


 俺は腕を組んで唸った。

 予想はしていたが、やはり黒幕の技術力は侮れない。

 自然発生に見せかけて、指定した場所でパニックを起こせる兵器。

 これを都市部で使われれば、大惨事になる。


「で、これを作った奴らの正体だが……」


 俺は視線を部屋の隅に向けた。

 そこには、昨日の襲撃者(捕縛済み)から剥ぎ取った情報――タトゥーの写真を見つめる、スーツ姿の男がいた。

 『剣聖』アーサー・ペンドラゴン。

 今はアカデミーの臨時講師という肩書きだが、その実態は俺の忠実な部下パシリだ。


「……見覚えがあります、隊長」


 アーサーが厳しい顔で顔を上げた。


「この蛇と鍵の紋章。……カルト教団『ウロボロス』の分派、通称『鍵の守り手』です」

「ウロボロス?」

「ええ。10年ほど前に壊滅したはずの過激派組織です。『ダンジョンの力で人類を進化させる』などと謳い、人体実験やテロを繰り返していた連中です」


 聞き覚えがある。

 現役時代、何度かそいつらの施設を破壊したことがあった気がする。

 当時の俺にとっては「掃除」の一部でしかなかったが、まだ残党がいたのか。


「しつこい連中だな。ゴキブリ並みだ」

「全くだな。……で、そいつらの巣は何処だ?」


 俺が問うと、セナがキーボードを叩いた。


「粉末に微量に含まれていた『付着物』と、襲撃者の装備に付いていた泥……そこに含まれる魔素波長と、旧地下鉄エリア特有の鉱物成分の照合マッチング。そこから特定したわ。彼らの拠点は、ここ」


 モニターにダンジョン都市の地下地図が表示される。

 赤い点が点滅しているのは、第3区画の地下深層。

 現在は封鎖されている、旧地下鉄の廃線エリアだ。


「……なるほど。廃線跡か。ネズミが隠れ住むにはおあつらえ向きだな」

「地下鉄のトンネルは、そのままダンジョンの一部と繋がってる箇所があるの。そこを利用して、独自のルートを確保してるみたい」


 セナの解説を聞きながら、俺は作戦を組み立てた。

 敵の正体は判明した。

 拠点の場所も割れた。

 やることは一つだ。


「……潰すぞ」


 俺の一言に、部屋の空気が張り詰めた。

 アーサーが嬉々として剣の柄に手をかける。


「了解です、隊長! 正面から突入して、全員斬り捨てればよろしいので?」

「馬鹿者。それは最終手段だ」


 俺はアーサーの頭を軽く叩いた(手加減したが、彼は嬉しそうだった)。


「いいか、今回の目的は二つ。敵拠点の制圧と、情報の確保だ。特に『黒い粉末』の製造プラントと、黒幕の研究データ。これらを破壊、または奪取する」

「なるほど。隠密作戦ステルスですね」

「そうだ。……だが、俺たちが動けば目立つ。特にアーサー、お前は顔が知られすぎている」


 Sランク冒険者が廃線エリアをうろついていれば、即座に警戒されるだろう。


「アーサー、お前は『陽動』だ」

「陽動、ですか?」

「ああ。お前は正規の手続きでギルドに申請を出し、派手に『廃線エリアの定期巡回』を行え。マスコミも引き連れて構わん」

「おお! つまり、俺が敵の目を引きつけている間に、隊長が裏から……!」

「そういうことだ。……セナ、お前は後方支援オペレーターだ。俺の通信を確保し、敵のセンサーをジャミングしろ」

「了解。師匠のナビゲートができるなんて光栄」


 セナが不敵に笑う。

 頼もしい奴らだ。

 俺はHK416のマガジンチェックをしながら、ニヤリと笑った。


「作戦開始は今夜2200(フタフタマルマル)。……久しぶりの夜勤だ。気合を入れろよ」


「「イエス・マム!」」


「……マムはやめろ」


     ◇


 その夜。

 ダンジョン都市の闇に、三つの影が動き出した。

 伝説の傭兵、剣聖、そして天才少女。

 世界最強の『新人JKチーム』による、最初で最後の(かもしれない)共同作戦が幕を開ける。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ