表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
23/25

第23話:短期講習・編入試験

 数日後。

 俺はギルドが運営する「探索者アカデミー」の正門前に立っていた。

 巨大な敷地。最新鋭の設備。

 そして、周囲には目を輝かせた若者たち(10代後半が中心)が溢れている。


「……場違い感がすごいな」


 俺はため息をついた。

 今日の俺は、指定された制服ブレザーにチェックスカートを着ている。

 鏡で見たときは「意外と悪くない」と思ってしまった自分が恨めしい。

 完全にコスプレだ。中身52歳だぞ。


 今日は「短期特別講習」の編入試験だ。

 田中からは「形式的なものだ」と言われているが、手を抜くわけにはいかない。

 なぜなら、成績優秀者には「個室寮」や「武器持ち込み許可」などの特権が与えられるからだ。

 盆栽の世話をするためにも、プライバシーの確保は絶対条件だ。


     ◇


 午前の筆記試験。

 ……壊滅した。


 問1:『ダンジョン内でモンスターに遭遇した際の、探索者として正しい初動法的解釈を述べよ』

 俺の答え:『即座に眉間を撃ち抜く。法的解釈は事後処理班に任せる』


 問2:『現代社会におけるマナーについて。配信中にドロップ品を横取りされた場合の対処法は?』

 俺の答え:『実力行使で奪還する。あるいは相手の配信機材を破壊し、証拠隠滅する』


 ……どうやら、俺の常識は現代の常識と乖離しているらしい。

 周りの受験生たちがスラスラと解答用紙を埋めていく中、俺は途中から鉛筆を転がしていた。


     ◇


 午後の実技試験。

 ここが勝負だ。

 試験会場は、地下にある演習場。

 仮想モンスター(ホログラムと衝撃フィードバックを組み合わせた最新システム)3体を、いかに早く、効率的に倒せるかが問われる。


 俺の前の受験生が、華麗な魔法でゴブリンを吹き飛ばし、歓声を浴びている。

 若いのに大したものだ。


「次、受験番号404番! 七瀬遙!」


 俺の番だ。

 俺は教官から支給用の訓練銃(ペイント弾仕様)を受け取り、フィールドに入った。


『開始!』


 ブザーと同時に、3体のオークが出現する。

 俺は走った。

 真正面から突っ込む。

 オークが棍棒を振り上げる――その懐に滑り込む。


 タンッ、タンッ。


 ゼロ距離射撃。

 2発のペイント弾が、オークの顎下に着弾した。

 脳を揺らされた判定になり、オークがデータとなって消滅する。


 残り2体。

 俺は立ち止まらずにスライディングし、障害物の陰に隠れた。

 敵が視界を失った瞬間、反対側から飛び出す。

 空中で2点バースト。


 タンッ、タンッ。

 タンッ、タンッ。


 着地と同時に、残り2体も消滅した。

 所要時間、4秒。


「……終了」


 俺は銃を下ろして振り返った。

 静寂。

 試験官たちは口をあんぐりと開けていた。


「き、記録……4秒02!」

「はあ!? 歴代最速だぞ!?」

「今、何をした? 魔法もスキルも使ってないぞ!」


 会場が騒然となる。

 俺は「しまった」と思った。

 最低限の動きで済ませたつもりだったが、それでもこのレベルの試験には過剰だったらしい。

 手加減というのは難しい。


 銃を返却しようと受付へ向かうと、一人の少女が近づいてきた。

 小柄だ。14歳くらいか?

 白衣のようなものを羽織り、タブレットを抱えている。


「……ねえ、貴女」


 少女が俺を見上げ、興味深そうに目を細めた。


「今の射撃……わざと角度をつけて跳弾させたでしょ? そうしないと、あの位置から顎下への着弾は物理的にあり得ない。……普通のペイント弾なら壁に当たれば割れちゃう。でも貴女、入射角を極限まで浅く取ることで、弾を割らずに『滑らせて(スキップさせて)』軌道を変えたでしょ?」


「……!」


 俺は足を止めた。

 気づかれた?

 今のほんの一瞬の小細工(跳弾を利用したテクニック)を?


「……偶然だ」

「嘘。計算式が見えたもん。貴女の動き、数値化するとすごく綺麗」


 少女は「ふふっ」と不敵に笑い、俺の胸元(名札)を見た。


「404番……七瀬、遙? 新人さん? 私、如月セナ。よろしくね、変な動きのお姉ちゃん」


 如月セナ?

 田中が言っていた護衛対象か。

 まさか、向こうから接触してくるとは。

 俺は警戒しつつも、軽く頷いてその場を離れた。


 ……あの子、ただの天才じゃないな。

 俺の動きを「数値」として見ていた。

 嫌な予感がする。

 俺の平穏な学園生活は、初日から波乱の幕開けとなりそうだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ