第12話:コラボ配信の誘い
ポーション案件の成功で、俺の懐は潤った。
500万円。
もっとも、これはまだ引き出せない「絵に描いた餅」だが、将来的には解凍されるはずだ(という希望的観測)。
俺は上機嫌で、新しい肥料をネット注文(代金引換)した。
支払いは手元の隠し財産(タンス預金)からだ。
そんな時、またしてもDMが届いた。
今度は企業からではない。
個人からのメッセージだ。
『初めまして! ダンジョン配信者の星川キララです☆ 新人JKさんの配信、いつも見てます! もしよかったら、今度コラボしませんか?』
星川キララ。
俺でも名前くらいは知っている。
登録者数100万人を超える、トップクラスのアイドル配信者だ。
可愛らしいルックスと、愛嬌のあるトークで、老若男女問わず人気がある。
……まあ、俺の好みではないが。
「コラボか……」
正直、面倒くさい。
他人とペースを合わせるのは苦手だ。
だが、相手はトップ配信者。断れば角が立つかもしれない。
それに、孫のような年齢の少女からの誘いを無下にするのも、大人げない気がした。
「……一度だけなら、付き合ってやるか」
俺は『承知した。日時と場所を指定してくれ』と返信した。
すぐに返事が来た。
『わーい! ありがとうございます! じゃあ、明日の10時に第三層の広場で! 楽しみにしてます☆』
文面から溢れ出るキラキラ感に、俺は少し胃もたれを覚えた。
◇
翌日。
俺は約束の場所へ向かった。
そこには、フリフリの衣装(魔法少女風?)に身を包んだキララと、数人のスタッフがいた。
彼女の周りには、すでに多くのファンが集まっている。
「あ! 新人JKちゃーん! こっちこっちー!」
キララが俺を見つけて手を振った。
俺は軽く会釈して近づく。
「初めまして。……その格好、動きにくくないのか?」
俺は第一声で、つい本音を漏らしてしまった。
ひらひらしたスカートに、大きなリボン。
ダンジョン探索には不向きすぎる。
「えへへ、これは戦闘服だよ! 可愛さは正義だからね!」
キララはあざとくウインクした。
プロだな、と思った。
自分の魅せ方を完全に理解している。
「で、今日は何をするんだ?」
「今日はね、『アイドルとJKのゆるふわ探索デート』って企画だよ! 二人でお喋りしながら、楽しくモンスターを倒そうね!」
ゆるふわ……。
俺の辞書にはない言葉だ。
だが、引き受けた以上は仕事をする。
「わかった。護衛は任せろ」
「えっ、護衛? 違うよ、デートだよ?」
「同じことだ。お前の安全は俺が守る」
俺は真顔で言った。
キララが少し赤くなる。
「……なんか、イケメンだね。女の子なのに」
配信が始まった。
画面には、対照的な二人が映っている。
フリフリ衣装で愛想を振りまくキララと、軍用装備で周囲を警戒する俺。
『絵面がカオスwww』
『混ぜるな危険』
『キララちゃん逃げて! そのJKは猛獣だよ!』
『いや、意外といいコンビかも?』
コメント欄は盛り上がっているようだ。
俺たちは第三層の奥へと進んでいく。
キララが何かを喋っているが、俺の意識は前方の気配に向いていた。
モンスターの数が、多い。
いや、数というより……密度が、おかしい。




