第13話:アイドル vs 傭兵
キララとのコラボ配信は、順調に(?)進んでいた。
彼女のトーク力は本物だ。
俺が無口で塩対応でも、それを上手く拾って笑いに変えてくれる。
「ねえねえ、JKちゃん! 好きな食べ物は?」
「……レーション(戦闘糧食)。特にビーフシチュー味」
「れ、れーしょん? あはは、またまた~! 本当はクレープとかでしょ?」
噛み合っていないようで、不思議と会話が成立している。
視聴者数も15万人を超え、過去最高を記録していた。
だが、第三層の奥地に入った頃、空気の色が変わった。
「……止まれ」
俺はキララを手で制した。
前方の茂みから、複数の気配がする。
ゴブリンではない。もっと狡猾で、連携の取れた動き。
コボルトの群れだ。しかも、上位種の『コボルトリーダー』がいる。
「え? どうしたの?」
「敵だ。下がっていろ」
俺が警告した瞬間、茂みから黒い影が飛び出した。
総勢20匹。
完全に包囲されている。
「きゃあああっ!?」
キララが悲鳴を上げる。
彼女もCランク冒険者程度の実力はあるはずだが、この数は想定外だろう。
しかも、コボルトたちはキララを狙っていた。
弱そうな獲物を優先的に狩る。野生の知恵だ。
「……チッ。護衛対象から離れろ、駄犬ども」
俺はHK416を構えた。
セレクターはフルオート。
躊躇なく引き金を引く。
ダダダダダッ!
乾いた銃声が響き渡る。
先頭の3匹が頭を弾かれて絶命する。
だが、残りの個体は怯まずに突っ込んでくる。
「キララ、伏せろ!」
俺は叫びながら、マガジンを交換。
その動作は1秒とかからない。
再び火を噴く銃口。
次々とコボルトが倒れていく。
しかし、リーダー個体がその隙を突いて、キララの背後から襲いかかった。
錆びた剣が、彼女の背中に迫る。
「しまっ――」
俺は銃を捨てた。
間に合わない。
なら、体で止めるしかない。
俺は地面を蹴り、キララを抱きかかえるようにして回転した。
ガキンッ!
鈍い音が響く。
コボルトの剣は、俺のタクティカルベストのセラミックプレートに阻まれていた。
「……痛いな、この野郎」
俺は至近距離から、コボルトリーダーの腹にナイフを突き刺した。
グリリ、と刃を回して内臓を破壊する。
リーダーが絶命し、残りのコボルトたちは恐れをなして逃げ出した。
「……怪我はないか?」
俺は腕の中のキララに聞いた。
彼女は腰を抜かしたまま、俺の顔を呆然と見上げていた。
至近距離で見ると、俺の顔(美少女)は破壊力抜群らしい。
「……か、かっこいい……」
キララが呟いた。
その頬が、ほんのりと赤い。
『うおおおおお!』
『神回避!』
『お姫様抱っこキタコレ!』
『キララちゃんが落ちた音がした』
『これは百合の波動を感じる』
『てぇてぇ……』
コメント欄が爆発している。
俺はため息をつき、キララを立たせた。
「立てるか? 配信は……まあ、これくらいでいいだろう」
俺はカメラに向かって手を振った。
こうして、コラボ配信は「伝説の神回」として語り継がれることになった。
そして、キララからのDMが、以前よりも頻繁に来るようになったのは言うまでもない。
「今度ご飯行こう!」「お買い物付き合って!」
……孫が増えた気分だ。




