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第1章-第12話 魔王認定試験(前編)

 迎えた試験当日。試験を1時間後に控えていたヴェラはグランデール大森林に訪れていた。

 

「これでよしっと……」


 そこら辺にあった木の棒で地面に何かを書き終える。


 地面に書かれた文字が消えたのを目にしたヴェラは、しゃがんだ状態から立ち上がる。


 役目を終えた木の棒を放り投げたところで、空からファウストが降り立った。

 

「ヴェラ様、こんなところにおられましたか。もうすぐ試験だというのに一体何をなされていたのです?」


 寄ってくるファウストに対して、ヴェラは腰に手を当てながら振り向いた。

 

「まぁ、色々とな。それより早く行こうぜ。遅刻したらバラムに怒られるからな」

「そうでございますね」

「あいつ怒らせると厄介だからな……」


 地団駄を踏んで憤怒するバラムの姿が容易に頭に浮かぶ。


 ヴェラはボヤキつつ、迎えに来たファウストと共に魔王城へと戻るのだった。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 そうして定刻通り、魔王認定試験が開始となった。まずは筆記試験から。


 1時間半以内に100問解けというなかなかにハードな試験だったが、修練と並行してやっていた勉強の成果もあり、全問解き終えることができた。


 その後、休憩がてら実技試験で使用する魔術の最終確認をしようと魔術書を眺めるヴェラ。すると、ファウストが採点し終えたようで、バラムが点数の書かれた羊皮紙に目を通す。

 

「ふむ……筆記は合格じゃな」

「こちらで採点しておりましたが、とても3週間でできる範囲ではなかったかと。そんな中、よくやりましたね」

「ありがとな」

 

 何とも渋い顔でヴェラの答案用紙を睨みつけるバラムの横で、ファウストが褒めたたえる。

 

 緊張していたヴェラの表情が和らぐ一方で、ファウストは隣にいるバラムへ呆れた目を向けた。

 

「それはそれとして、バラム様。この量の出題範囲と形式は流石に目に余るものがございます」

「別に受かったのじゃから良かろう」


 不貞腐れたように視線を逸らすバラムに、ヴェラとファウストは溜息を吐く。

 

(やけに回りくどい出し方してくるなと思ったら、やっぱりわざとだったのか)

 

 応用問題にしては自動車免許試験並みにうざったい引っ掛けが出てきたり、果ては到底勉強してきていない範囲まで入っていたのだ。


 幸いにも勉強の範囲外の問題以外は完答できているようなので合格できたが、1つでも落としていたらと思うとゾッとする。

 

「試験内容がどうであろうと受かったことには変わりない。分かったらさっさと実技に移るぞい」

「へーい」


 そう言ってバラムは席を立ち、部屋を出ていく。ヴェラも魔術書を『宝物庫』に仕舞ってファウストとともにグランデール大森林へと向かった。


 魔王城を出て数十分。大森林全体に貼られた結界を潜る。


 と、既存の感知結界の他に防護結界が付与されていた。メフィスの魔力が感じ取れるので恐らく彼女が貼ったのだろう。


 腐葉土の道を進んで少ししたところで、先に着いていたバラムと合流し、改めて試験の説明を受ける。


「実技試験の時間は30分。森林内に魔物や魔族を召喚する故、それを倒し次第、我と戦闘じゃ。合格条件は我を倒すか、我に自らの実力を認めさせること。後者となった場合は試験後に判定を下す。そして、戦闘時は如何なる場合においても手段は問わぬこととする。全力で我にぶつかってこい」


 最後にバラムが愉しそうに歯を見せて笑うと、今度はファウストが口を開く。

 

「今回はそれに加え、フリューゲル率いる森の者たちにも参戦してもらいます。審判は私が務めさせていただきます。本試験によって倒された者たちは皆、森林内にあるメフィスの結界に転送される仕組みとなっていますのでご了承ください」

 

 メフィスはこの場にいないのだなと思っていたら、どうやら結界に転送効果を付与しているらしい。


 倒された魔物や魔族たちがそこかしこに転がっていたら戦闘の邪魔になるので、いい配慮がなされているなと感じる。

 

 試験の説明を終え、一行は準備を開始する。


 魔王認定試験において一番の強敵となるバラムはそそくさと森林内のどこかに転移していった。それを見届けたヴェラも刀を生成し、魔力を込める。

 

「それでは魔王認定試験・実技編開始です!」


 全員の用意が完了し、遥か上空へと浮き上がったファウストが高らかに宣言した。


 その瞬間、ヴェラを囲うようにして一斉に魔法陣が出現し、無数の角の生えた馬や赤い目をした獅子など、四つ足魔物たちが出てきた。


 視認した限り、この大森林にいる魔物よりも強い。ということはバラムが召喚したのだろう。


 刀を手にしたヴェラはぐるっと回転する。刀身から魔力波が放たれ、周囲にいる四つ足の魔物たちが爆散した。


 ヴェラは地面を蹴り上げて突進し、向かってくる魔物たちを炎の刃で次々と斬り払っていく。と、今度は空から数多の飛行型の魔族が襲来してきた。


 ヴェラは魔法陣を展開させた赤い閃光を放射し、反撃を与える間もなく一掃する。

 

「邪魔だっ!」


 正面の敵に対して、大きく刀を振り降ろす。刹那、魔族の群れへ渦を巻くようして大きな炎が迫り、一瞬にして蹴散らした。


 その余波で木々が焼けこげる中、ヴェラは低空飛行で森林を通過する。彼女が通過した後には何も残らず、全てが塵と化していた。最早、一撃一撃が上級魔法に匹敵すると言って良いだろう。


 その後、僅か5分足らずで魔物を殲滅し終えたヴェラは、ひと際濃度の高い邪気を纏う馬の一角獣――バイコーンと対峙する。


 ヴェラを捉えたバイコーンが口から魔力砲を放ってきた。数度の砲撃を躱したヴェラは四肢を斬り落とし、後ろに回り込むと同時に首を跳ねる。

 

 宙に浮いたヴェラが刀に着いた血を払いながら、残党がいないか見ていると、下から迅雷の如き速さで一筋の雷撃が迫って来た。


 ヴェラはそれを身体を逸らして避け、雷撃の主を視界に捉える。

 

「よぉ、来たかフリューゲル」

「本気の貴殿とやり合えるとは、これはまた血がたぎりま――」

 

 槍を携えた有翼に鹿の角の生えたフリューゲルが言い切る寸前、ヴェラは彼に向かって炎の刃を放つ。

 

「ちょっ! せめて最後まで言わせてくださいよっ!」

「悪いな。お前にかまってる暇はねぇんだ」

 

 慌てて躱したフリューゲルに、ヴェラは笑みを浮かべながら突っ込む。


 と、彼の周囲から雷の矢が発射され、ヴェラは刀を左右に振って叩き落として接近。雷嵐の槍と炎の刀が交わる。


 だが、それも一瞬で、ヴェラは掌底突きを彼の鳩尾に喰らわせ、遥か下空へと吹き飛ばす。そして魔法陣が展開され、赤い一筋の閃光がフリューゲルの胴を貫いた。


 見事に撃ち落とされたフリューゲルは地面へと墜落していく。


 その後、メフィスの転送陣が発動し、彼の姿が消えた。それを確認したヴェラはバラムを探すべくそのまま空を飛行する。


 

 直後、森林の中心部に数十メートルの巨大な紫の魔法陣が出現した。何事かと思い、ヴェラはそこへ向かう。


 すると、巨大な魔法陣が発光し、そこから十数メートルはあろう牛の巨人が現れた。

 

「これはまたエグいのが来やがったな……」


 新たに召喚された巨大な敵にヴェラは思わず頬を引き攣らせるのだった。

 

 

 ◇◆◇◆

 


 時間は1分ほど経ち、メフィスの結界内に惨敗したフリューゲルが転送された。

 

「あら、フリューゲル。思ったより早かったですね」

「本当に参りましたよ……。というか、何ですあれ!?」


 メフィスが意外そうに声をかけてくるのに対して、フリューゲルは疲れ切ったように溢したかと思うと、先刻現れた牛の巨人を目にして驚愕の声を発した。

 

「あれはバラム様の四十配下の中でも上位十位に位置する、炎雷の巨牛・バウロスです。確かバラム様が魔界時代に契約したとか何とか。正直言ってあれは相手にしたくありませんし、そもそも勝てるかどうかも怪しいですわね……」

 

 遠視魔術を発動させたメフィスはバウロスを視ながら言った。


 フリューゲルも戦況を伺おうと見上げれば、バウロスが絶賛、猛スピードで空を駆けるヴェラに向かって炎を吐いていた。

 

「メフィス殿でそれならヴェラ殿は大丈夫でしょうか……」

「心配せずともあの方ならば大丈夫ですよ。少なくとも秒殺された貴方よりは断然強いですので」

 

 バウロスを見ていたメフィスは、フリューゲルへにこやかな笑みを向けてくる。奇しくもいけ好かないファウストとどこか似ている。


 そんな彼女の笑顔を見たフリューゲルは至極嫌そうに顔を歪めるのだった。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 場所は森林の中心部に戻り、バウロスに接近するヴェラへ巨大な戦斧が降りかかってきていた。

 

「うおっ!?」

 

 雷を纏った戦斧が目前に迫るのを目にしたヴェラは、衝突する直前で回避する。

 

(こりゃ近づいたら、間違いなく潰される……!)


 何度も近づいて攻撃のチャンスを窺っているが、戦斧と炎の噴射が邪魔して一向に近づけずにいた。


 こうなれば接近戦は諦める他ない。

 

 そう判断したヴェラはバウロスから距離を取って、森林を潜り抜けて上空へ退避する。


 バウロスが視認でき、尚且つ攻撃の当たらない地点まで来たヴェラは深呼吸して集中力を最大限まで高める。


 そして手にしていた刀を高く振り上げる。


 と、バウロスの真上に三層の巨大な魔法陣が展開された。魔法陣に魔力が充填され、発光する。

 

「『大いなる光の廻転グロースリヒト・ドレーエン』……!」


 ヴェラが刀を振り降ろした瞬間、一番上の魔法陣から一筋の白い巨光が降り注ぐ。


 光は高速回転しながら中段、下段の魔法陣を通過。


 バウロスの胴へと的中し、耳をつんざくような慟哭が森林全体に響いた。衝撃波が辺りに吹き荒れ、ヴェラは目を瞑る。


 風が治まったのを感じたヴェラが再び目を開ける。


 でき得る限りの最大火力をぶつけたおかげで巨牛の胴に大きな穴が空くも、バウロスが消滅する気配はない。

 

(これでもまだ倒れないか……)

 

 だが、あれにはもう反撃できるほどの力は残っていない。であれば、早々に終わらせてやろう。

 

「『七転する業火の刃(ブレン・シュナイデ)』!」


 そう言い放った途端、バウロスの頭上に7本の長剣が現れる。


 再度、ヴェラが振り下ろすと、回転した長剣がその巨体に向かって突き刺さる。


 直後、突き刺さった剣から高火力の炎が噴き出し、あっという間にバウロスを全身を焼いた。業火の炎に焼かれ、丸焦げになったバウロスは塵となって大森林から消滅する。

 

 これで目ぼしい敵は排除した。残るはバラムただ1人。


 しかし、この広大な大森林をくまなく探して見つけ出すには、時間が掛かり過ぎる。

 

(あいつを探してる時間がもったいないな……。となると、ここは)


 ヴェラはすっと目を閉じて感知魔術を発動させる。瞬く間に森林内へ微量の魔力が満ちるとともにバラムの居場所を索敵すべく、意識を集中させる。


「視えた」


 と、バラムの居場所を発見したヴェラの足元に赤い魔法陣が発生し、彼女の姿が消えた。


 ◇◆◇◆

 

 ここは森林の中でも比較的拓けた場所で、周りには背の高い針葉樹が広がっていた。そこにバラムはいた。


 次の瞬間、権能の魔眼でしばしの間様子を伺っていた彼の背後にヴェラが現れる。

 

「っ……!」

 

 ヴェラがバラムに向かって刀を振るった瞬間、バラムは振り向きざまに手にした長剣で迎撃する。


 こうして現・魔王と次期魔王候補の戦いは幕を開けた。

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