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記録


映像∶ 

[1923.04.09 23:57:51] ヴィクター - チョーカー記録]

 

〘通信音声〙

 こちら〈センチネル〉。城内、ジャスティカーズ10名待機中。こちらに気づいた様子なし

 

【ダグ】

 こちらダグ。了解。監視継続、潜入は予定通り決行

 



 

[1923.04.10 00:23:19] タリク - チョーカー記録

 

【ライラ】

 予定通りに行きませんね


【セラフィーナ】

 この感じ……先回りされてる。こちらの動きを読まれているわ

 


[銃声]

[展開シールド、崩壊]



【タリク】

 なんっ――



[ジャスティカーズ隊員と交戦開始]

[ライラ、シールド再展開]

[シールド再崩壊]



〘通信音声〙

 こちら〈バスティオン〉。索敵班、状況報告を求む

 


【セラフィーナ】

 〈センチネル〉応答。奇襲を受けた。事態収束まで案内不能

 





[1923.04.10 00:26:39] ヴィクター - チョーカー記録

 

【ダグ】

 仕方ない。このまま進行する。ディエゴ、索敵を頼む


【ディエゴ】

 了解。前方240m、5名。敵意なし

 

【ダグ】

 では、そのまま進――


【ディエゴ】

 隊長!前方60m、7名、敵意あり!


【ヴィクター】

 なぜ急に?5秒前は240mだったぞ

 

【ダグ】

 全員、伏せろ!




[警告: 高温検知 1000℃超 / 頭部保護機能作動]


 


(ノイズ・映像の乱れ)


 


【ダグ】

 撤退しろ!全員、今すぐここを離れろ!能力は使うな、無駄だ!


【ヴィクター】

 っ……そうか、〈ヴォイド〉か……!


〘通信音声〙

 退路に敵。挟み撃ちです

 

【ダグ】

 強行突破しろ。ディエゴ、もう一度探れ


【ディエゴ】

 後方110m、7名。前方40m、4名……いえ、3名に。すみません、信用しないでください。私が不甲斐ないために……


【ヴィクター】

落ち込む暇はない。ダグ隊長、俺がやります


【ダグ】

 何を?


【ヴィクター】

 殿(しんがり)です……やだなあ。そんな顔しないでくださいよ。せっかく英雄になるチャンスですから

 

【ダグ】

 悪いが……英雄になるのは俺だ


【ヴィクター】

 いやいや。防御型の花形を、攻撃型が奪わないでください


【ダグ】

 いや、お前は生き残れ。一人でも多く生かすために

 

【ヴィクター】

 いや、待っ——


【ダグ】

 指揮系統を遵守せよ……後は頼んだ


【ヴィクター】

 ちょっと、おい――



[ロキ、退路を引き返す]

 


〘通信音声〙

 緊急排水区画に到達。一旦退避しますか?

 

【ヴィクター】

 了解。警戒しつつ退避しろ。ディエゴ、行くぞ……しっかりしろ。今は――



[映像の大きなぶれ(ディエゴ、ヴィクターを突き飛ばす)]

[銃声]



【ヴィクター】

 ディエ……ゴ……



[ディエゴ死亡確認 00:27:49]







[1923.04.10 00:23:24] タリク - チョーカー記録

 

【ライラ】

 シールド再展開します!



[シールド発動] 

[左側城壁、敵少年兵(推定年齢15-17歳)、光線銃でシールドに照準]


[セラフィーナ、サイレントダートガンを抜く→発射]

[敵少年兵、額に被弾]

 

[同時にシールド、レーザー被弾・崩壊]

[敵少年兵、銃を落下させ倒れる]


 

【敵隊員】

 ザイド!



[セラフィーナ、敵少年兵が落とした光線銃に向かって移動] 

[移動中、敵2名を斬撃で制圧]


[光線銃を回収]



[光線銃の外観]

 - 全長: 約30cm

 - 形状: 流線型、小型

 - 色: マットブラック

 - 側面ディスプレイ: 青白色

 - エネルギーバー: 5セグメント中2つがオレンジ色に点灯



 

【セラフィーナ】

 V-DIS Eraser MK-Ⅸ……ジャスティカーズの新技術かしら?


[視界、右へ振る]


【タリク】

 ライラっ!



[ライラの背後、敵隊員が接近中]

[敵隊員の所持するナイフがライラの肩に刺さる]


[ライラ負傷 00:23:31 / 左肩にナイフ創]


 

(ノイズ・映像に乱れ)

 

[データ破損]


 



[1923.04.10 00:45:22] オットー - チョーカー記録

 

〘通信音声〙

 こちら、〈カラクタス〉。ジャスティカーズより空爆襲撃。戦闘機の応援を願う。繰り返す――

 

【オットー】

 まずいな……はあ……こちら一号機。これより、カタクラスへの応援に向かう。5号機、7号機の計3機は応援へ。その他は持ち場にて待機せよ

 

〘通信音声〙

 了解



 

[1923.04.10 00:53:31] オットー - チョーカー記録

 

[爆発音、銃撃音]

 

【オットー】

 なんだ? あの光線銃は。お蔭で、船のシールドが効きやしない!

 

〘通信音声〙

 オットー、これ以上は無理だ。〈カラクタス〉の保護より、拠点要員の救出に移ろう

 

【オットー】

 そうだな……では、俺が陽動でジャスティカーズを引き剥がそう。その間に――


〘通信音声〙

 こちら〈バスティオン〉。作戦は中断。航空機は至急乗降地点へ

 

〘こちら4号機! ただいま、接近してきたジャスティカーズと戦闘状態。2号機、6号機が炎上し、制御不能。通信がとれません』

 

【オットー】 

 おいおい……どうすんだよ、これ



  

〘通信音声〙

 こちら〈カラクタス〉……オットー機長、聞こえるか?

 

【オットー】

 聞こえるぞ。どうした?

 

〘通信音声〙

 拠点要員の救出は必要ない。〈カラクタス〉を爆破する

 

【オットー】 

 何を言って――

 

〘通信音声〙 

 いねえんだ。生きる見込みがある奴は。何度張っても、あの光線に撃たれてシールドが破壊される。もう、俺たちは逃げられない

 

【オットー】 

 おい、待てよ

 

〘通信音声〙

 前線部隊の迎えに行ってくれ。今までありがとう

 

【オットー】

 待て――


 

[爆破音の後に、通信終了]

 

[〈カラクタス〉の爆破炎上確認 0:57:04]




 

[1923.04.10 01:09:47] ヴィクター - チョーカー記録

 

(ノイズ・映像の乱れ)

 

【ミンユー】

 なんで、治らないんだろ? もう十回以上もやってるのに


【ヴィクター】

 もういい。能力は使わなくていい。自分の頭に使え。さっき打ち付けたところだ

 

【ミンユー】

 自分はいいです、怪我も重くない。〈バスティオン〉に何かあっては駄目です


【ヴィクター】

 無駄なんだよ。こいつと同じ機能のものが当たったんだ

 


[光線銃を持ち上げる]

 


【ヴィクター】

 セラフィーナから預かったモノだ。こいつのせいでシールドが無効化された。多分、〈ヴォイド〉の能力を参考にした新技術だ。だから、お前がいくら能力使ったところで、この腹の穴は治らない……

 

【オットー】

 ヴィクター、静かにしてろ。とにかく〈ゼファリオン〉に向かうぞ。何としても4人で帰るんだ。たった4人でも




 *




 映像が止まり、スクリーンが黒く変わる。

 

「今見てもらったのが、今回大きな犠牲を払うこととなった、"世界政府高官秘密会合襲撃計画"の実情だ」


 カトリーヌは腕を組むと、ぐるりと会議室の面々を見渡した。

 

「この計画の目的は、高官達の拉致捕捉によって、世界政府の内部情報収集、交渉材料としての人質確保であった。秘密会合、というものの、実際はただの高官達の慰労旅行。一部のジャスティカーズを始めとする護衛はつけられるが、通常通りであれば大した脅威になることはなかった。しかし――」


 カトリーヌの指がテーブルを軽く叩いた。

 

「イレギュラーが多く積み重なったことで、今回の被害が生じた。索敵班の襲撃、シールドの無効化、そして〈ヴォイド〉との遭遇だ」


 会議室は、一気に空気が冷たく張りつめた。

 

(『〈ヴォイド〉に会ったら、まず、すぐ、逃げろ』の〈ヴォイド〉か……)


 訓練生から昇格したばかりの頃、必ず言われることだ。

 

 〈ヴォイド〉は、二十年以上も前線で戦い続けている、現在は事実上ジャスティカーズのトップであり、アポクリファでは最も警戒すべき対象として知られる能力者である。「ヴォイド・ダミネーション」という、異能力殺しの能力を持っているからだ。

 〈ヴォイド〉などと捻りも何もない言葉で呼ばれているのは、かえってその能力者の危険性を現していた。

 

「本来、〈ヴォイド〉は高官のプライベートの護衛などは一切行わない。しかし、今回は違った。奴に対抗出来る戦力がいなければ、死のみ。多大な犠牲を払ったが、この絶望的な状況で三名が生還したのは、不幸中の幸いだった」

 

〈ヴォイド〉に対する戒めの言葉は、精鋭とされるΣ(シグマ)でさえも、従わなければならない。というより従わなければ生きられないと言われている。

 

「これまで、一作戦に対して君たち精鋭メンバーの投入人数は、最大三人というスタンスをとっていた。が、今回のような事態を繰り返さないため、高難易度が予想される任務に四名以上の投入をしていきたいと考えている。もちろん、我々〈オリジン〉も前線へ参加するが、君たちの負担がこれまで以上にかかることになるだろう。その分、月報酬の額を上げると、主宰の承認を得た。よろしく頼む」


 カトリーヌは小さく息をつくと、声を低く続けた。

 

「更に。これは情報部にも同様に依頼するが、内通者の妨害、特定をお願いしたい」


 会議室は明らかに空気が変わった。ひやりとした、えもいわれぬ緊張感が漂い始める。

 

「今回の作戦失敗の最大の要因。それは、情報がジャスティカーズ側に漏れていたことだ。それも、これは秘匿性の高い情報のはずだった。アクセスできる我らの中に、内通者がいると疑わざるを得ない」


 空気が次第に疑心に満ちていくのを、肌で感じた。

 

「お互いに信用と疑いを持ちながら、過ごしてもらう。また、当面の間は外出休暇の取得を禁止する。内通者がこれ以上好きに動かさせないために、それぞれ考えて行動するように」


 テーブルにつく多くの面々が、裏切り者を探そうと目をぎらつかせ始める。

 その視線の多くがある一点に向けられていることも分かった。

 

「一つ、質問してもいいかな?」


 雰囲気にそぐわない、低く穏やかな声が挿し込まれた。カトリーヌは無言で、声の主に向かって頷く。

 

「先ほど見せてもらった記録が、全てなのかな?」


 グレン――中年から初老の域に入ろうかという年頃の男は、柔和な笑みを浮かべて言った。

 

「と言うと?」

 

 カトリーヌが問い返す。

 

「かなり、途切れ途切れの映像だったからね。少し、気になって」

 

(確かにな)


 ぶつ切りの映像を繋ぎ合わせたような印象が、強いと言わざるを得ない。

 

「チョーカーの損傷やデータ破損がひどいため、使用できる映像が少なかったのが要因だ。見辛かっただろうが――」

「いやいや。要所を掻い摘んでくれたお蔭で、概要は分かりやすかったよ。ありがとう」


 仏頂面のカトリーヌは、お礼を言われたことに戸惑ったのか、静かに頷いた。

 

「では……他に、なにかある者は?」


 無言が数秒続く。誰も口を開かない。

 

「なら、このまま解散とする」

「あ、待ってくれ」

 

〈オリジン〉の一人——チャイヤが止めると、ゆっくり立ち上がった。

 

「悪いが、情報部は今から時間いいかね? 技術部と一緒に、設備について、少し相談したいことがあってね」

「承知いたしました」

「ありがとう。じゃあ、技術棟に向かおうか」


 Σ(シグマ)の一人である、金髪にグレーの眼をした北方人らしい女——アシュリーが腰を浮かす。が——


「あ、アシュリーは大丈夫」


 同じく〈オリジン〉のギャヴィンがそれを止めた。


「ついさっきまで任務で大変だっただろうし。装備の相談だから。ある程度完成したら、君にも協力してもらうよ。今日くらいゆっくり休んでくれ」


 アシュリーは短く返事をすると、椅子に掛け直した。

 能力種の関係で、情報部を兼任する彼女は、あまり任務で一緒になることはない。

 年齢も少し上のため、Σ(シグマ)の中ではかなり浮いている存在ではある。


「じゃ、また」

 

 情報部員たちは、一言声をかけながら、部屋を出ていく。

 そして会議室の中は、Σ(シグマ)の人間だけが取り残された。







―――

(機密百科事典より引用)


〈ヴォイド〉

保有者∶■■■■ (本名∶■■■■■■■■)

分類∶Xeno型

等級∶α

相貌∶身長175cm前後、中肉中背。ダークブラウンの髪、緑の目、彫りの深い顔立ち、褐色がかった日焼け肌。中央大陸西部海湾地方のラテン系統。

概要∶能力の無効化、及び物体の消滅。




〈V-DIS Eraser MK-Ⅸ〉

分類∶特殊型光線銃

発見日∶1923/4/10 世界政府高官秘密会合襲撃計画

保有者∶ジャスティカーズ隊員

概要∶シールドの破壊効果を有する。「ヴォイド・ダミネーション」の能力を技術再現したと考えられる。

"Ⅸ"との表記があることから、かなり以前より研究が進められ、実用化に至ったと見られる。

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