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第9話 再会

 ダンジョン入り口。

 相変わらず探索者たちでごった返している。


 俺は帽子を目深に被り、ゲートを通過した。

 IDカードをかざすと、『Fランク:相馬 透』の文字が表示される。

 受付の職員は俺を一瞥もしない。

 

 好都合だ。

 俺は人混みを避け、正規ルートではなく、誰も行きたがらない「廃棄ルート」へと足を進めた。


 薄暗い通路。

 鼻をつく腐敗臭と、鉄錆の匂い。

 以前なら吐き気を催していたこの匂いが、今では宝の山への案内香に感じる。


 十分ほど歩くと、開けた空間に出た。

 そこには、壊れた武器や防具、効果の切れたポーション瓶などが山のように積まれている。


「さてと……」


 俺は変装用に買った右目の眼帯をずらし、スキル『真贋鑑定(しんがんかんてい)』を発動させた。


 ──ブォン。


 視界が切り替わり、ゴミ山が情報の羅列へと変わる。


【鉄くず】

【ひび割れた皮鎧】

【ただの石】

【腐った薬草】


 やはり、99%は本当のゴミだ。

 そう簡単に国宝級が見つかるわけがない。

 聖剣エクスカリバーは、奇跡のような確率だったのかもしれない。


 数時間、ゴミ山を掘り返し続け、さすがに腰が痛くなってきた頃だった。

 

「……ん?」


 ゴミ山の奥深く。

 ヘドロにまみれた黒い塊から、微かな違和感を感じた。

 黄金色ではない。

 もっと禍々しい、赤黒いオーラのようなものが漏れ出している。


 俺は慎重に瓦礫をどけ、その塊を引っ張り出した。

 それは、円形の金属板のように見えた。

 表面は汚れきっていて、ただの鍋の蓋にしか見えない。


 だが、鑑定ウィンドウには、とんでもない文字が躍っていた。


====================

【名称】アイギスの盾(呪い・破損)

【ランク】伝説級

【状態】呪詛汚染(レベルMAX)、物理的欠損

【真価】あらゆる魔法攻撃を反射する絶対防御。ただし、装備者の精神を蝕む。


【修復可否】可能(※汚染部の浄化と、欠損部の補修が必要)

【推定市場価格】1億3000万円~2億円


「……うわぁ」


 俺は思わず声を漏らした。

 聖剣の次は、伝説の盾かよ。

 しかも今度は「呪い」付き。


「精神を蝕む、か。だから捨てられたのか」


 前の持ち主は、呪いに耐えきれずにこれを捨てたのかもしれない。

 あるいは、呪いのせいで命を落とし、装備だけがここに流れ着いたのか。


 普通なら触るのも躊躇う代物だ。

 だが、今の俺には見える。

 ウィンドウの下に表示された、頼もしいガイドの文字が。


《推奨アイテム:漂白剤(キッチン用)、重曹、瞬間接着剤》


「また家庭用品かよ!」


 俺は思わずツッコミを入れた。

 こんな大層な呪いが、キッチンハイターで落ちるのかよ……エクスカリバーといい、庶民派だな。それでいいのか伝説の武具。

 

 それはさておき、やる価値はある。

 聖剣には劣るが、これまた億単位。十分すぎる額だ。

 それに、「魔法反射」のスキルは、対人戦やダンジョン深層では必須級の能力だと聞いたことがある。


「よし、確保だ」


 俺はその「鍋の蓋(仮)」をリュックに押し込んだ。

 

 その時。

 背後から、ジャリ……と砂利を踏む音が聞こえた。


「おい、そこのお前」


 心臓が跳ねる。

 俺はこの場所には誰も来ないと思っていた。

 振り返ると、そこには見覚えのある3人組が立っていた。


 薄汚れた装備。

 疲労の色が濃い表情。

 そして、獲物を値踏みするような下卑た目つき。


 元パーティ『ブレイブ・ソード』の面々だった。


「……あ?」


 剛田が、俺の顔を見て目を丸くする。


「お前……相馬か?」


 最悪のタイミングでの再会だった。




◇ ◇ ◇

本日19時30分頃にもう一話更新予定です。

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