優しい
避難所のある一室にあるソファは、中々にボロボロであったがずっと歩いていた身体にはそれでも心地よかった。薄暗くてあの街とは反対に少し肌寒い空気が漂っていた。体を寝かせてから改めて気になったのは、廃墟の中を案内されてこの部屋に行き着くまで、案内してくれた人以外の声を聞くことは無かった。飾り気もない部屋で、歩けば足音が響くような。果たして避難所と言えるのだろうか。だが、そんなことは後に気づいた事象である。俺はそのままソファでルミエラの事を気にもせず寝てしまった。
目が覚めた時は、ちょうどあの大人に会ってから4時間ほど経っており、初めて建物に入ってからルミエラの身を案じた。この小さい部屋には机もなくて、ただのボロボロなソファしかない。明かりは小さく携帯用ランタンがただ1つ付いているままで、埃っぽい空気であることからあまり使われたことがない建物であると思った。重たいドアを開けて、廊下に足を踏み出す。暗くて、あまり前も見えないため部屋にあったランタンを持ち出して歩く。あの街とは違い寒い。ルミエラの容態を知りたいがため大人を探す。少し歩くと先程招き入れてくれた人がいた。あの時見る余裕がなかった人の顔をみる。とても真っ白な肌の色をしている。人形の様な…吸血鬼のような…。
「よく休めただろうか?」
あちらから話しかけてくれた。
「…体調は回復いたしました。あの、ルミエラは?」
少し目を横にずらしたが、また目を俺に戻す。
「ルミエラ…ああ、あの少女か。あの子は眠っている。治療を施したよ。安心してね。」
柔らかい微笑みを返す。この廊下は寒い。その微笑みは暖かいのに、何故だか3度くらい気温が下がったような気がした。
「…君に謝らなければならないことがある。」
再び口を開く。「なんだ」という顔をすれば、
「実はここはもう空きは無いんだ。きっと他の施設があるはずだ。…君たちには感謝している…が、空きが無い以上ー」
「なぜ嘘を?」
どうしてか反射的に口を出してしまった。
「少なくとも、俺がいた部屋はかなり空いていた。行けるはずだが?」
柔らかい笑みに少し亀裂が入ったような気がした。
「すまないねぇ。けど、治療したとはいえ、あの部屋は埃っぽいだろ?だからあの娘には環境が悪い。」
「…だからって外に出すのか?」
「ー図々しい。」
この一言で空気は酷く、まるで寒気に襲われたような気がした。
「…ああ、すまない。気が立っているんだ。色々とあってね。ここは危険かもしれないから、外の方が安全だと…そう言いたかったのだよ。あの少女の所へ案内してあげよう。」
御託を並べられたような気がしてならない。




