大人しか見ていない
靴を履いて外に出る。街はいつも騒がしくて、機械音と喧騒の声に溢れていた。本当は許可なしに外に出るのはご法度だが、散歩なので許してほしい。たまにはグレた事をしてみたいのは誰だってあるはずだ。
道なりを進めば色々な店が見えた。煌びやかな服を売っていたり、洒落た食べ物が売っている店なんかもあった。お小遣いなんて持っていないので買えるわけもなく、鼻に入り込んだ美味しそうな匂いを噛みしめながら足を進める。上を見上げれば赤くて暗い風景。ガス灯がある。もう少し暗くなるとつくであろうそれは、本でもみたことがある。大昔に使われていたらしい。とても画期的な発明で街の闇を照らしたんだとか。俺はこんな発明ができる気がしない。天才の脳みそはきっと誰にも分からないように細工されているのだろう。だから美しいものも画期的なものも沢山生み出すことができる。して、きっと苦労なぞしなくて良いのだろう。発明をできる頭を持っているのだから。
きっとこんなことを考えてしまううちはルミエラは俺に振り向くことは無いだろう。どこにも目が向かなくなって、目線が一直線にならない限りこっちに降りかかることは無いのかもしれない。
ふと路地裏を見る。赤いピッチリとした足まで隠れる服を着たお姉さんが富裕層の頭が禿げた初老の男性と抱きしめあっていた。こっちを見ていることにお姉さんは気づいた。お姉さんは投げキッスをして更にウィンクをした。男性はしっしっとでもいうように手を動かした。何か嫌な予感がするから、立ち去ることにした。
孤児院の外に出たことがバレないように靴をしまい、今日あったことを紙にでも書こうと資料室に行く。資料室のドアの前に立った時に嫌なことに気づいた。何かと言うと、資料室の戸が少し開いているのだ。つまり、誰か入っているということ。又は入っていたのかもしれない。
「…嫌がらせ?」
つい言葉に出てしまう。悪い方向へ考えを向けるのは悪い癖だ。




