第57話 クリスマス会本番、消えたケーキのろうそく事件
クリスマス会当日、部室には両部合わせて十二人が集まり、いつも以上に賑やかな空気に包まれていた。
「今年は去年より豪華だね」
和奏が言うと、大地が誇らしげにケーキの箱を開けた。
「先生に相談して、少し大きいの用意したよ」
「大地、頑張ったね」
彩羽が飾り付けを見回しながら言った。
「上坂さんの飾り付け、今年も綺麗だな」
「ありがとうございます。今年は予算控えめで頑張りましたの」
上坂が優雅に微笑んだ。
鵜沢は少し緊張しながらも、プレゼントの包みを大事そうに抱えていた。
「あの、これ、優助さんに」
「ありがとうございます。楽しみにしてました」
優助が受け取ると、鵜沢は小さく頬を赤らめた。
◇ ◇ ◇
ケーキを切り分ける準備が整い、大地がろうそくを取り出そうとしたところで、少し困った顔をした。
「あれ、ろうそく、一本足りない」
「え?」
和奏が聞き返すと、大地はケーキの箱の中を何度も確認した。
「さっきまで、確かに、五本、入ってたはずなんだけど」
美空がホワイトボードの前で丸を三つ描いた。
「霊」「ケーキを狙う何か」「購買部」。
「今回は本番中だから、手早く探そう」
「その判断力、頼もしいね」
愛理が周囲を見回した。
「ろうそくくらいの小さいもの、どこかに紛れ込んでそうですね」
◇ ◇ ◇
六人とがくほのメンバーで、部室の中を手分けして確認していった。
瑠実が机の下を覗き込み、小さく声を上げた。
「あった」
ろうそくは、机の脚の陰、瑠実が座っていた椅子の近くに落ちていた。
「なんで、こんなところに」
瑠実は少し照れくさそうに言った。
「たぶんわたしだと思う。さっき、ケーキの箱、開けるの手伝ったときに、落としちゃったかも」
「瑠実、また、うっかりなんだね」
「ごめん、気づかなかった」
愛理が優しく言った。
「見つかったから大丈夫。気にしないで」
◇ ◇ ◇
無事にろうそくが揃い、ケーキに火が灯された。
部屋の明かりを少し落とし、十二人でケーキを囲んだ。
「せーの」
和奏の合図で、みんなで一斉にろうそくを吹き消した。
「わあ」
小さな歓声が上がり、部屋にはまた明かりが戻った。
◇ ◇ ◇
ケーキを食べながら、それぞれがプレゼントを交換していった。
才川は優助から渡された本を、興味深そうに眺めていた。
「これ、僕の好きそうな話だと分かってたのかい」
「はい。少し話した内容から、選んでみました」
「センスがいいね。ありがたく読ませてもらうよ」
茅野は美空から渡された、猫の絵が描かれた小物を受け取り、珍しく口元を緩めた。
「これ、悪くない」
「気に入ってもらえて良かったよ」
◇ ◇ ◇
信吾は、少し緊張した面持ちで、担当だった鵜沢にプレゼントを渡した。
「これ、選ぶの、意外と難しかった」
鵜沢は箱を開けると、シンプルな手袋が入っていた。
「ありがとうございます」
「その、寒くなってきたから、役に立てば」
信吾がいつになく素直に言うと、彩羽が横から茶化した。
「信吾、今回は、ちゃんと選べたんだな」
「当然だ」
◇ ◇ ◇
部室に、賑やかな笑い声が響く中、美空がホワイトボードに大きく書いた。
『クリスマス会本番、消えたろうそく事件――解決』
その下に、少し小さく付け加える。
『犯人・瑠実のうっかり。動機・特になし』
「動機、また特になしなんだね」
和奏が言うと、美空はうなずいた。
「ケーキを狙う何か説、今回も使わなかったよ」
「毎回候補には入れるのにね」
彩羽が笑いながら言った。
「今年も、楽しいクリスマス会になったな」
「彩羽、今回楽しそうだね」
「べ、別に、普通に楽しんでるだけだ」
◇ ◇ ◇
夜が更け、そろそろお開きという時間になり、みんなで片付けを始めた。
優助が窓の外を見ながら静かに言った。
「あの、両部で過ごす二度目のクリスマス、良い一日になりました」
「優助、今回もいいこと言うね」
「いつも通りです」
その言葉に、十二人が揃って小さく笑った。
窓の外、冬の夜空には、いつもより明るく星が瞬いていた。
今日という日も、事件は笑いながらやってきた。
そして今回は、みんなで囲んだケーキの温かさが、この日の主役だった。




