第56話 クリスマス会、消えた交換表事件
十二月に入り、部室にも少しずつ冬の空気が漂い始めていた。
「今年もクリスマス会やろうよ」
美空が言うと、和奏はうなずいた。
「去年も楽しかったもんね」
彩羽が少し考えながら言った。
「今年はがくほも呼ぶか」
「それいいね」
優助が生徒会の仕事の合間に顔を出し、静かに言った。
「あの、僕から愛理さんに声をかけておきます」
「優助、忙しいのに、ありがとう」
「これくらいなら大丈夫です」
信吾は前髪を払いながら意気込んだ。
「今年は俺がプレゼント選び、リベンジする」
「去年、何かあったっけ」
「去年は、まだ、がくほと交流する前だった」
大地は早くもお菓子の準備を始めていた。
「今年も、たくさん用意するね」
◇ ◇ ◇
両部合同のクリスマス会が決まり、恒例のプレゼント交換をすることになった。
愛理が交換表を作成し、部室に持ってきた。
「くじで担当を決めて、それぞれ準備する形にしましょう」
「愛理さん、几帳面だね」
瑠実が横から覗き込んだ。
「わたし、誰の担当になるかな」
◇ ◇ ◇
準備期間も終わりに近づいたころ、愛理が青ざめた顔で部室に駆け込んできた。
「交換表が見当たりません」
「交換表?」
和奏が聞き返すと、愛理はうなずいた。
「誰が誰の担当か、記録した表です。がくほの部室に保管していたはずなのに」
美空がホワイトボードの前で丸を三つ描いた。
「霊」「クリスマスを邪魔する何か」「購買部」。
「今回は時間もあるし、しっかり考えられるね」
「その余裕、久しぶりだね」
彩羽が腕を組んだ。
「表が消えるって、また、うっかり系な気がするな」
「彩羽、今回もその見立て鋭いね」
◇ ◇ ◇
六人とがくほの残りのメンバーで、部室の周辺を確認していった。
上坂が本棚の隙間を覗き込み、小さく声を上げた。
「あの、これ」
交換表は本棚の奥、クリスマス飾り用の箱の下に挟まっていた。
「あった」
愛理がほっとした様子で受け取った。
「なんで、こんなところに」
茅野が少し気まずそうに手を挙げた。
「たぶん僕だと思う。飾りの箱、出し入れしてたから」
「茅野くん、また整理絡みなんだね」
「気をつける」
愛理は少し呆れながらも優しく言った。
「今回はもう慣れてきたから、あんまり驚かなくなったな」
◇ ◇ ◇
交換表が見つかり、両部は改めてプレゼントの準備を進めた。
鵜沢は少し緊張しながらも、担当になった相手のことを考えていた。
「あの、優助さんの担当になりました」
「鵜沢さん、頑張って選んでね」
和奏が言うと、鵜沢は小さくうなずいた。
「はい。少し、悩みますけど」
優助が静かに言った。
「あの、無理せず選んでもらえたら、それで十分うれしいです」
「はい、ありがとうございます」
鵜沢は優助と目を合わせられないまま、それでも小さく笑った。
◇ ◇ ◇
部室に戻り、美空がホワイトボードに大きく書いた。
『クリスマス会、消えた交換表事件――解決』
その下に、少し小さく付け加える。
『犯人・茅野くんの整理。動機・特になし』
「動機、また特になしなんだね」
和奏が言うと、美空はうなずいた。
「クリスマスを邪魔する何か説、今回も使わなかったよ」
「毎回候補には入れるのにね」
彩羽が少し笑った。
「今年も、みんなで、楽しめそうだな」
「彩羽、今回楽しみにしてるね」
信吾は前髪を払い、決め顔を作った。
「今年こそ、俺のプレゼント選び、期待していいぞ」
「その予告、フラグにしか聞こえないよ」
大地はせんべいの袋を開けながら言った。
「クリスマス会、お菓子いっぱい用意するね」
「うん、頼りにしてる」
優助が静かに言った。
「あの、去年よりも、賑やかなクリスマス会になりそうですね」
「優助、今回もいいこと言うね」
「いつも通りです」
窓の外、冬の澄んだ空気の中、両部のクリスマス会に向けた準備が少しずつ進んでいった。
今日の放課後も、事件は笑いながらやってくる。
そして今回は、両部で迎える二度目の冬の楽しみが、事件の正体だった。




