サポートを受けての探索
鼻水が出始めて花粉症が始まったかと思っていたら
38度の熱も出てて風邪じゃんってなった今日この頃
サポート妖精のトワに現段階で聞ける事を確認しつつ探索を行ってみる。今までなら切り上げるくらいの負傷だったが、止血してもらっただけでかなり楽になった。
今後もUBCは必要になりそうなので金策しつつスキルの取り方をトワに聞いた。
「察知系のスキルを取りたいんだがどうしたらいい?」
「この階で取れるのは【危機察知】ですね。不意打ちを受けたのをカウンターで反撃を入れてください」
「先に見つけるんじゃないのか」
俺の考えていた察知系ではないが、取れるものは取っておこう。不意打ちされにくくなるスキルはソロには必須級だろう。
「しかし敵が潜んでいそうな所に突っ込むって勇気がいるな」
「見るのではなく感じるのです」
そうは言ってもソロで初手を譲るというのはかなり不利だ。クリエイトシールドは効果時間が3分なので予め出しておく事も難しい。魔法と同じくMP的な何かを使うらしく連続で使っていくと頭痛がしてくる。
なので右手に警棒を持ち、即応できるように警戒しながらあえて物陰などがある通路を進んでいく。
2階の獣人自体はそれなりに倒してきているので行動の予測はできる。人間に比べて小柄なので、飛び上がって襲ってくる分、動きを感じてから攻撃までには一拍の間があった。
「よいしょっ」
物陰を意識しながら歩き、飛び上がったら武器を構え、攻撃を払ってから左手の鉄パイプで殴る。利き手の関係上、右側からの不意打ちへは対応しやすいが、左側からはワンテンポ遅れるとか考えながら経験を積む。
「相手の攻撃を払う前に相手に一発入れて体勢を崩すくらいやらないと」
「要求が高いな」
これが最初の察知系スキルとなると、習得報告がないのも頷ける。脅かされるのが己の命だというのに、あえて不意打ちを受ける戦い方なんてしようとは思わない。自分で見つけようとは思わないだろう。
ただ2階で覚えられるスキルでもある。
1階の整然とした地下街から一転、障害物が多くて見通せない鍾乳洞。不意打ちされやすい場所。しかも襲ってくるのは獣人、両手を使うようになったとはいえ脅威度で言えば1階の獣と大差ない。機動力が無い分、戦いやすい場合もあるのだ。
つまり知ってさえいれば、ちゃんと習得できる難易度でもあった。
「その情報を渡しそびれたからサポートAIを派遣した?」
「さてね?」
トワはとぼけてみせる。踏破階層によって機能が開放されるという妖精は、知っている事全てを教えてくれる訳ではないと考えるべきだろう。
来たるべき階層に至れば、ダンジョンが作られた理由などを語りだしても不思議はない。
逆を言えば踏破階層という条件が設定されているのならば、それ以外の手段で聞き出すのは難しそうだという事だ。プログラムである以上、感情でルールを破るとは考えにくい。
もし語らせる方法があるとしても、それが正規な手段でなければ真実かフェイク情報かの判断もできないだろう。
「正攻法で攻略するしかないな」
「頑張ってー」
やる気のない声援だ。応援団ではないのか?
トワから引き出せる情報がないか会話しつつ、飛びかかってくる獣人を迎撃すること3時間、計16匹目でようやく手応えのあるカウンターが決まったと思ったら、トワから「こんぐらっちゅれーしょん」と棒読みで祝福され、【危機察知】のスキルを習得できた。
早速スキルの感覚を試してみると、獣人がいる物陰に近づくと首の後ろがチリチリとした。静電気で毛が立つような感覚。それを感じて進むと獣人が飛び出してくる。
意識してれば気づけるが、無意識の時に発生しても【危機感知】の発動だと分かるだろうか。少し不安だ。
「何も無いよりはマシ……か」
「何となく悪い予感がするのと、具体的にコレが起こるというのだと違うわよ」
「そんなもんかね」
後はその感覚が出たらどうするという反射を鍛えろと。結局のところ、ダンジョンで得られるスキルというのは自分ができることの延長線上にある。自分の感覚が鈍れば役に立たないというわけだ。
「慣れるしかないかぁ」
「生き残りたければね」
「へいへい」
「へいは1回……じゃないわ、返事は『はい』でしょ」
わざわざ間違えるとか変にこだわったAIだな。
スキルを習得できたので3階へと移動し、時間までUBCを稼ぐことにした。今後も必要になりそうだしな。
ダンジョン探索の大半は移動時間だ。戦闘をしている時間なんてほんのわずかだ。じゃないと死ぬ。
ボクシングなんかが3分1ラウンドなのも、継続的に動けるのはそれくらいと言うことだ。
3階は物陰から襲ってくる事もないので移動も楽だ。獣人がいるのは部屋になっている所だし、マッピングもある程度終わっているので出現ポイントも分かっている。
つまり大半は暇な時間だった。しかし、トワとしゃべりながら移動できるというのは思った以上に助かる。
「サポートAIってのは、破滅アプリ側の機能って事だな」
「そうなります」
「ダンジョン側とアプリは別物って事か」
「関連がないかと言われると嘘になりますが、陣営としては別ですね」
「ダンジョンが悪魔ならアプリは天使とか?」
「そんな高尚な存在じゃないですよ、テレテレ」
別にトワが天使と言った訳じゃないんだが、否定するとややこしそうなのでスルーしておく。
「破滅アプリの目的はダンジョンを攻略させる事だよな?」
「放っておくと人類は滅亡するからね」
「つまり人類が滅亡されては困る存在だと」
「禁則事項です」
口元に人差し指でバツを作りながらいう。破滅アプリの制作者に触れる質問はダメと。
「ダンジョンの悪魔の狙いは何だ?」
「世界征服?」
「ダンジョンを生み出す力があればすぐにでもできそうだが?」
「その為にはパワーが足りないんだよ。じわじわ溜めていくと10年ほどで溜まるみたい」
警告文にあった通りだな。
「それを早める為には犠牲が必要なんだよ」
「生贄ってやつだな。それはダンジョンに入ってる奴の事なんじゃないか?」
「それだけじゃないよ。ダンジョンから溢れた獣にやられてもダメ」
「今溢れてる獣程度じゃ、人死にはでないだろ?」
「もちろん、放って置いたらより強い獣が出る様になっていくよ」
つまりダンジョンの外でも死者が出始めると。
「ダンジョンの浅い階層がチュートリアルみたいにぬるい理由は? いきなり強い奴置いておいたら一気に死者を増やせるだろ?」
「弱い人間の魂より、ダンジョンで強化された魂の方が効率がいいんだよ」
「地上の弱い魂を狩るより、ダンジョンで育った人間を食った方が早いと。じゃあダンジョン攻略なんてしない方が良いのでは?」
「そしたら対処できない獣が出てきた時点で終わりだね」
「人類が勝利するには魂を鍛えて悪魔を倒さないといけないと」
「だよー」
「でも強化した魂が食われたらタイムリミットも早まると」
「命を大事に」
1人の英雄がクリアを目指して倒れると、一気にダンジョンにパワーが溜まる。それを避けるのは多くの者が助け合いながら攻略を進めた方が良いと。
「ソロじゃダメじゃん」
「そうだよ、ちゃんと仲間を見つけなよ」
「向いてる人に託そう。この話、広めても良いんだよな?」
「攻略が進む様に説明できるならね」
「パーティ組んでる人にもサポートAIが必要なのでは?」
「パーティ向けには本とかの形で配布されるよ。UBCが掛からなくてお得」
破滅アプリがパーティを推奨している以上、ソロプレイヤーには不利があるのだろう。それでも対話できるのは大きいと思うが。
「その辺はこっちも試行錯誤中なんだよ」
「アプリの作成者は宇宙人とか?」
「禁則事項です」




