午後からは探索だ
午前中は鍛冶と獣の短剣の検証で過ぎていった。昼はダンジョンで調理して【料理】スキルを探す事も考えていたのだが、鉱石が重くて材料やら鍋を持ち込むのを諦めた。
実際、一食作った程度じゃスキルにはならんだろうしな。それこそ普段から料理してるコックなら元々持っているスキルが具現化されるかもだが。
そんな訳で今日の昼飯は安定のカロリーバーだ。今日はプロテインが入ってる系だな。ステータスで筋力は伸びないから、自前の筋肉を鍛える必要があるし、何だかんだ腹持ちも良かったりする。
それをスポーツドリンクで流し込んで準備完了。地下2階へと下りる。
獣の短剣を獣人相手に使おうとしたが、奴らは手を使えるので間合いの近い短剣で攻撃しようとすると爪による攻撃を受けるんだよな。
結局、警棒で動きを崩してから左手に握った短剣でトドメを刺す戦い方になった。正直なところ、鉄パイプで更に外の間合いから戦う方が安定だ。
そんな確認をしながら3階への階段に到着。今日は新装備、マウンテンブーツを履いている。厚底でくるぶしまでのハイカット、全体的に生地も厚めだ。
靴底の滑りやすさは変わらないと思うが、尖った石を踏んでも大丈夫なのが大きい。
3階は壁が崩れた様な風化していない石がゴロゴロと転がっているエリアだから、以前の靴だと足の裏が不安だったのだ。
岩肌もゴツゴツしがちなので、転けそうになって手をつくと切れそうな雰囲気もある。慎重に足元を確認しながらの探索だ。
道幅は3mほどで2階よりは曲がりが少ない。鍾乳石などの視界を邪魔する物も少なめなので、死角から襲われる危険は少なそうだ。
ただ戦闘中に転倒したりすると、地面でダメージを受けそうなので注意が必要。【空間把握】で拾える石が多いのが分かるが、いちいち拾って歩く気にはならない。
そうやって進んでいくと、少し広めの空間があり、この階で最初の敵が待っていた。開けた空間では足元の石も少なく、ちゃんと戦闘フィールドという雰囲気。通路での戦闘はイレギュラー扱いかな。
俺はまず鉄パイプで戦闘することに。この階の獣人は右手に短剣を持っている。刃渡り30cmほどもあるので小剣になるだろうか。
黒塗りの刀身は獣の体と同じ様に輪郭がブレて見える。獣人を倒すと小剣も霧散するので、奪って武器にするとかはできないらしい。
俺は両手に鉄パイプを握ってくるくるとバトンのように回しながら接近、遠心力をいかして打撃を試みる。
ガキィンと金属同士がぶつかるような音がして、鉄パイプの軌道が逸らされた。
獣人は衝撃を殺しきれずに体勢を崩しているが、こちらは逆サイドの柄を使って攻撃ができる。回転の勢いを殺された分、威力は控えめだが脇腹にクリーンヒット。130cmほどの獣人の体は吹き飛ばされた。
それを追いかけていって体勢を立て直す前に追撃。走った勢いのままに突きを繰り出すと、これまた手にした小剣で逸らされた。
防御が上手いな。
だが防御のために行動すると攻撃に移るのに時間がかかる。俺は走った勢いのままに膝蹴りを顔近くに叩き込む。鉄パイプを払うために振るっていた小剣を戻そうとするので、蹴った左膝を戻しつつ、体の回転に合わせて鉄パイプを横薙ぎに振るって獣の左半身をしたたかに打ち据えた。
地面へと倒れ込んでしまうと、後は今までと変わらず上からの打ち下ろしでトドメだ。
「ふぅ」
一息ついて残心を解く。黒い霧へと溶けていく獣人は思ったよりも防御が堅かった。わたりの動画でも一撃目は体勢を崩すのに使って、二撃目で【ソニックエッジ】を決めて流れを作っていた。
こちらの一撃目への反応が正確なようだ。
その分、相手の動きを誘導しやすいので、連続的な攻撃を行えば隙を突く事ができる。こちらが先手を打てば相手からの攻撃を封じられるのでパターンを作りやすいとも言えた。
「もう少し戦ってみてからだな」
マップを埋めつつちょっと開けた空間では獣人相手の戦闘。一撃目に反応するという分かりやすいパターンが分かると、警棒と短剣の二刀流でやれると気づいた。
一撃目を警棒で誘い、無防備になった所へ短剣を刺す。1階の獣よりも少し手応えは感じるが、きっちりと急所と思われる場所へ突き入れると、二撃目で倒せる事もあった。
両手と噛みつきを駆使してきた2階の方が手強かった感もある。これは下手に武器に頼ると弱くなると教えているのだろうか。
通路での会敵はなく、開けた部屋のみの戦闘なので、不意打ちを気にしなくて良いのも助かる……いや、【気配察知】が覚えられないか。
何にせよ、狩り自体のペースは上がっていた。
3階は地震か何かで地層がズレて、裂け目ができた様な洞窟だ。なので鍾乳洞の様な浸潤でできた洞窟に比べると形はシンプルで、風化などで削れていないので尖った石が多い。
壁の崩落などがあると、部屋と呼べるようなちょっと広い空間ができている。全体的に自然感のある洞窟だ。
「そんな中に扉か」
明らかな人工物が混ざっていた。
両開きの高さ3m、幅5mほどのマップひとマス分の大きさだ。材質は石だろうが表面が平らに加工されており、蝶番部分は金属でできている。
取っ手がないので押して開けるのだろう。いわゆるボス部屋の雰囲気だ。
「ひとまず回避だな」
挑むとしてもこのフロアを探索してからで良いだろう。まだマップが埋まってない箇所が半分はある。
ボス部屋を迂回するようにマップを埋めていくと、空き部屋の1つで噂の自販機を見つけた。
自然洞窟の中にポツンと佇む自販機というのはシュールだ。海岸に遺棄された様な侘びしさを醸し出している。
白い筐体で上側にサンプルが並んでいて、その下にボタン。右側にコイン投入口の代わりとなる電子決算用の板がある。ボタンを押してスマホをくっつければ決算されるのだろう。更衣室のロッカーと同じだな。
そして購入された物は下の取り出し口から出てくると。
「ラインナップは……」
まずは情報にあった毒消し。ポーション的な飲み物を想像していたが、注射器に入っているようだ。毒を受けたら足とかに叩きつけるようにして使う奴だな。最近の現代や未来系の回復アイテムで見る形式。傷口の側に叩きつけるのは勇気が要りそうだが。
1000UBC、この階の獣人2匹分だから安いと思う。逆に言うと頻繁に使わされるという示唆か。ひたまず3本ほど買ってリュックに入れておく。
その他の商品も見ていく。
素材が何かは分からない『干し肉』と『水』、『包帯』もあるな。後は照明器具か。ランタン型で片手で持てる奴、シャッターがついてて灯りを遮断できるようにもなっている。ただちょっと高めだ。
そして『砥石』があった。これは買っておくべきだな。ついでに『水』も買っておく。確か包丁を研ぐ時は水で濡らしながらやってた気がする。
『砥石』が300UBCで『水』は100UBCだった。
早速俺は午前中に作った短剣もどきを取り出して研いでみる。豆腐の様な直方体の砥石を床に置き、水で濡らしてから刀身を当てて研いでいく。某狩りゲーだと刀身に砥石を擦り付けるように使っていたが、昨日見た刀鍛冶の動画を参考にした。
シャコシャコと押し付けながら研いでいくと、見る見るうちに刀身が削れていき刃ができていく。あの金槌同様に不可思議な力がある様だ。
数分で両刃の刀身が研ぎ出されていた。
名前:銅の短剣
効果:刀身があまり硬くないため武器には向かない
まあそうだよな。




