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令嬢ギロチン  作者: 近太夫
2の巻 令嬢立志伝
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67/74

67 フォルム・ドゥ・ショヴスリ

『赤の女王』の怨霊おんりょう

「我こそは『赤の女王』が怨霊ォォォ…」



 そこに現れたのは、

 毒々しい毒蛾のつばさに触角、赤き衣に鮮血の真っ赤な髪、血塗られし大鎌をたずさえし、今は亡き『赤の女王』ベラ・マルグヴェンが怨霊であった。


 その『のろい』は、

 ギヨティーヌ・タタンの 奥義おうぎ煩悩具足ぼんのうぐそく❞ を打ち消し、元の姿があらわとなる。



マダム・ローズ

「ギヨティーヌさん!?……」



 マダム・ローズ・タルトは、

 中庭へ降ってきた臭気しゅうき混濁こんだくする朧気おぼろげな意識の中で、ギヨティーヌ・タタンを見ることとなった。


 ギヨティーヌは足の裏から素早く息を吸い、口をすぼめ激しくゆっくりとき出す。



ギヨティーヌ

「ふぅ〜〜ー--」



 あごを引き胸を張り、お腹は引っ込め腰は前へ、

 足は膝に余裕を持たせ肩幅に内股で八の字へ開き、両腕をX字から脇をめ引き込み、拳は肩の高さ逆八の字に、

 右足をすり足で時計回りに前へかまえた。



ギヨティーヌ

ッ‼」



 ジャンプ一閃いっせん、常人の2倍も有ろうかと言う『赤の女王』の怨霊へ、跳び蹴りを入れるギヨティーヌ。



ギヨティーヌ

「チェスト━━━!」


『赤の女王』の怨霊おんりょう

「ウゥッ…」



 よろめく『赤の女王』の怨霊、振り下ろされる血塗られし大鎌おおがまを、ギヨティーヌが左へ身をかわし今度は、ジャンピング・ローリング・ソバット!



ギヨティーヌ

「チェ━━ス!」

(大きい方の相手をするには、足へ攻撃を集中させ動きを鈍らせ、膝を付かせ座らせ寝かせて、身長差を無くして行くのが有効ですわ!)



 ギヨティーヌが右腕で大鎌おおがまをいなしてくぐり、身体を時計回りに回転させふところへ入ると、怨霊おんりょう左足脹脛ひだりあしふくらはぎへローキックを入れ、左足太もも横の筋肉と筋肉の境目を狙って、左右から正拳の連打を入れる!



ギヨティーヌ

百烈拳ひゃくれつけん━━!

 チェス チェス チェス チェス チェス・・・ チェス チェス チェス!

 チェスト━━!!」


『赤の女王』の怨霊おんりょう

「あいったー!あいっ!あいっ!あいっ!

 あいったー!!」



 最後にひざの裏へ、ギヨティーヌの右回し蹴りが決まり、痛みでたまらず飛び上がって膝を付きそうになるのを、大鎌おおがまつえにこらえる『赤の女王』の怨霊。



ギヨティーヌ

(ほとんどの方が軸足じくあしは左足です、そして膝裏ひざうらは鍛えることの出来ない、急所きゅうしょですわ!)


マダム・ローズ

「ギヨティーヌさん… 貴女が求めているモノが、解った気がします……」



 ギヨティーヌ・タタンは、❝奥義おうぎ❞ 無しでも強かった。



 バッっと、『赤の女王』がはねを広げ鱗粉りんぷんは紺色に散り乱れ、それは ❝呪い❞ とは違う破壊力をゆうし、中庭の人々の力を失わせる。



ギヨティーヌ

(こっ、これは?!)



 ギヨティーヌ・タタンも例外ではない。

 目の前に見える『赤の女王』が、前世で別れて暮らした娘の成長した姿に見える。成長した娘の顔を知らぬギヨティーヌには、顔だけボヤけ、だが間違いなく娘だと認識してしまう。


 それを客観的には、違うと理解できているのだが……

 奥義 ❝煩悩具足ぼんのうぐそく❞ のないギヨティーヌの精神へも容赦なく侵蝕しんしょくし、彼女の方が膝を付かざるを得ない処まで追い込まれた。



 『赤の女王』の大鎌がギヨティーヌ・タタンへ振り下ろされ、真剣白羽取しんけんしらはどりで何とか受け止めるギヨティーヌ。

 怨霊おんりょうが相手では、ギヨティーヌも不利か?!

 マノン・マドレーヌは先程のスカンク・ガスの爆発で、活動できなくなったままだ……


 マノンの手の中の、眷属けんぞく蝙蝠こうもり い出て彼女を起こそうとする。



眷属けんぞく蝙蝠こうもり

「 ⎛(⎝^˶> A <˶^⎠)⎞ チス〜チスチス〜」



 ――――その時だった。


 鉛色なまりいろの雲を二つに裂くまばゆき光り


 一羽の霊鳥れいちょうフェニックスは灼熱しゃくねつの翼を広げ

 カナリーフェニックスの木へと舞い降りる。


 その炎は怒りにあらず

 裁きにもあらず


 救われぬ魂を見つめ

 呪われし運命を焼きくす

 生命のほむら


 怨嗟えんさは灰となり

 呪言はけぶりとなり


 未来へかれし種子は

 黄金の実を結ぶだろう。



『赤の女王』の怨霊おんりょう

「おのれ金鵄きんしめ、邪魔をするでないィィ!」



『赤の女王』の怨霊は絶叫ぜっきょうし、


 マノン・マドレーヌの ❝サハスラーラ・チャクラ❞ へ、フェニックスのが虹の如く玉響たまゆらに煌めく時、霊性れいせいは宇宙と繋がり華開はなひらく。


 フェニックスの黄金に輝く翼は、

 黄昏時たそがれどきたたえ、誰時たれどきを照らす蘇生さいせいの炎。

 太古より目覚めし闇は、幾夜いくよもの月をいだき。血を絶やすことなく、幾年いくとせもの時を巡る。

 吸血鬼ヴァンピール文曲もんごくとの『盟約めいやく』。



 マノン・マドレーヌは意識混濁いしきこんだくのままに立ち上がり、眷属けんぞく蝙蝠こうもり は少女の周りを羽ばたく。



眷属けんぞく蝙蝠こうもり

「❇₍₍ ⎛⎝㇏^˶✴ㅅ✴˶^ノ⎠⎞ ₎₎ チスチスチス! チスチスチス!」



 フェニックスの瞳と、眷属けんぞく蝙蝠こうもり の瞳、

 そしてマノン・マドレーヌの瞳が同時にまばゆく光り覚醒した時、それは起こった。



 少女の身体は、眷属けんぞく蝙蝠こうもりと共に光へ包まれ―――― マノンの体力・生命力は充実し、爆風に投げ出された痛みも傷も消え去って、

 新たな様相ようそうへと変身する。


 蝙蝠こうもりの翼の意匠いしょうしたかざりが頭の左右へ立ち、

 「 ⎛⎝㇏^˶˃ ᵕ ˂˶^ノ⎠⎞ チスチス! チスチス!」額当ひたいあてでは眷属けんぞく蝙蝠こうもり の造形が鳴いている。

 背には蝙蝠こうもりの翼、手にはショヴスリ(蝙蝠こうもり)の三叉戟さんさげき、おへその出たバトル・アーマー『フォルム・ドゥ・ショヴスリ』の姿へ。


 マノンは三叉戟さんさげきを地に突き立てると、『降三世明王ごうざんぜみょうおう』の真言しんごんとなえ、

 左右の手を胸の前で交差させ、2本の小指同士をからませ人差し指を伸ばして、残りの指は親指を上に軽くにぎり、

 『降三世印ごうざんぜいん』を結んだ。



マノン

「オン・ソンバ・ニソンバ・ウン・バザラ・ウン・ハッタ!」

(まっ、また、恥ずかしい格好です。でも、頑張ります!)



 透き通る空色のショートボブの髪からは ︵⋆⁎‿ꕤ*⁎੭୧‿⁎❁フレグランスなフルーティ系の香りがフワサラと踊る ︵⋆⁎‿ꕤ*⁎੭୧‿⁎❀


 ギヨティーヌ・タタンの家業は石鹸・洗剤の製造販売であり、フレグランスなシャンプー・ボディソープ各種を取りそろえていた。

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