67 フォルム・ドゥ・ショヴスリ
『赤の女王』の怨霊
「我こそは『赤の女王』が怨霊ォォォ…」
そこに現れたのは、
毒々しい毒蛾の翅に触角、赤き衣に鮮血の真っ赤な髪、血塗られし大鎌を携えし、今は亡き『赤の女王』ベラ・マルグヴェンが怨霊であった。
その『呪い』は、
ギヨティーヌ・タタンの 奥義 ❝煩悩具足❞ を打ち消し、元の姿が顕となる。
マダム・ローズ
「ギヨティーヌさん!?……」
マダム・ローズ・タルトは、
中庭へ降ってきた臭気に混濁する朧気な意識の中で、ギヨティーヌ・タタンを見ることとなった。
ギヨティーヌは足の裏から素早く息を吸い、口をすぼめ激しくゆっくりと吹き出す。
ギヨティーヌ
「ふぅ〜〜ー--」
顎を引き胸を張り、お腹は引っ込め腰は前へ、
足は膝に余裕を持たせ肩幅に内股で八の字へ開き、両腕をX字から脇を締め引き込み、拳は肩の高さ逆八の字に、
右足をすり足で時計回りに前へ構えた。
ギヨティーヌ
「呼ッ‼」
ジャンプ一閃、常人の2倍も有ろうかと言う『赤の女王』の怨霊へ、跳び蹴りを入れるギヨティーヌ。
ギヨティーヌ
「チェスト━━━!」
『赤の女王』の怨霊
「ウゥッ…」
よろめく『赤の女王』の怨霊、振り下ろされる血塗られし大鎌を、ギヨティーヌが左へ身をかわし今度は、ジャンピング・ローリング・ソバット!
ギヨティーヌ
「チェ━━ス!」
(大きい方の相手をするには、足へ攻撃を集中させ動きを鈍らせ、膝を付かせ座らせ寝かせて、身長差を無くして行くのが有効ですわ!)
ギヨティーヌが右腕で大鎌をいなして潜り、身体を時計回りに回転させ懐へ入ると、怨霊の左足脹脛へローキックを入れ、左足太もも横の筋肉と筋肉の境目を狙って、左右から正拳の連打を入れる!
ギヨティーヌ
「百烈拳━━!
チェス チェス チェス チェス チェス・・・ チェス チェス チェス!
チェスト━━!!」
『赤の女王』の怨霊
「あいったー!あいっ!あいっ!あいっ!
あいったー!!」
最後に膝の裏へ、ギヨティーヌの右回し蹴りが決まり、痛みでたまらず飛び上がって膝を付きそうになるのを、大鎌を杖にこらえる『赤の女王』の怨霊。
ギヨティーヌ
(ほとんどの方が軸足は左足です、そして膝裏は鍛えることの出来ない、急所ですわ!)
マダム・ローズ
「ギヨティーヌさん… 貴女が求めているモノが、解った気がします……」
ギヨティーヌ・タタンは、❝奥義❞ 無しでも強かった。
バッっと、『赤の女王』が翅を広げ鱗粉は紺色に散り乱れ、それは ❝呪い❞ とは違う破壊力を有し、中庭の人々の力を失わせる。
ギヨティーヌ
(こっ、これは?!)
ギヨティーヌ・タタンも例外ではない。
目の前に見える『赤の女王』が、前世で別れて暮らした娘の成長した姿に見える。成長した娘の顔を知らぬギヨティーヌには、顔だけボヤけ、だが間違いなく娘だと認識してしまう。
それを客観的には、違うと理解できているのだが……
奥義 ❝煩悩具足❞ のないギヨティーヌの精神へも容赦なく侵蝕し、彼女の方が膝を付かざるを得ない処まで追い込まれた。
『赤の女王』の大鎌がギヨティーヌ・タタンへ振り下ろされ、真剣白羽取りで何とか受け止めるギヨティーヌ。
怨霊が相手では、ギヨティーヌも不利か?!
マノン・マドレーヌは先程のスカンク・ガスの爆発で、活動できなくなったままだ……
マノンの手の中の、眷属蝙蝠 a が這い出て彼女を起こそうとする。
眷属蝙蝠 a
「 ⎛(⎝^˶> A <˶^⎠)⎞ チス〜チスチス〜」
――――その時だった。
鉛色の雲を二つに裂く眩き光り
一羽の霊鳥フェニックスは灼熱の翼を広げ
カナリーフェニックスの木へと舞い降りる。
その炎は怒りにあらず
裁きにもあらず
救われぬ魂を見つめ
呪われし運命を焼き尽くす
生命の焔
怨嗟は灰となり
呪言は煙となり
未来へ蒔かれし種子は
黄金の実を結ぶだろう。
『赤の女王』の怨霊
「おのれ金鵄め、邪魔をするでないィィ!」
『赤の女王』の怨霊は絶叫し、
マノン・マドレーヌの ❝サハスラーラ・チャクラ❞ へ、フェニックスの浮き毛が虹の如く玉響に煌めく時、霊性は宇宙と繋がり華開く。
フェニックスの黄金に輝く翼は、
黄昏時を讃え、彼は誰時を照らす蘇生の炎。
太古より目覚めし闇は、幾夜もの月を抱き。血を絶やすことなく、幾年もの時を巡る。
吸血鬼ヴァンピール文曲との『血の盟約』。
マノン・マドレーヌは意識混濁のままに立ち上がり、眷属蝙蝠 a は少女の周りを羽ばたく。
眷属蝙蝠 a
「❇₍₍ ⎛⎝㇏^˶✴ㅅ✴˶^ノ⎠⎞ ₎₎ チスチスチス! チスチスチス!」
フェニックスの瞳と、眷属蝙蝠 a の瞳、
そしてマノン・マドレーヌの瞳が同時に眩く光り覚醒した時、それは起こった。
少女の身体は、眷属蝙蝠と共に光へ包まれ―――― マノンの体力・生命力は充実し、爆風に投げ出された痛みも傷も消え去って、
新たな様相へと変身する。
蝙蝠の翼の意匠を模した飾りが頭の左右へ立ち、
「 ⎛⎝㇏^˶˃ ᵕ ˂˶^ノ⎠⎞ チスチス! チスチス!」額当てでは眷属蝙蝠 a の造形が鳴いている。
背には蝙蝠の翼、手にはショヴスリ(蝙蝠)の三叉戟、おへその出たバトル・アーマー『フォルム・ドゥ・ショヴスリ』の姿へ。
マノンは三叉戟を地に突き立てると、『降三世明王』の真言を唱え、
左右の手を胸の前で交差させ、2本の小指同士を絡ませ人差し指を伸ばして、残りの指は親指を上に軽く握り、
『降三世印』を結んだ。
マノン
「オン・ソンバ・ニソンバ・ウン・バザラ・ウン・ハッタ!」
(まっ、また、恥ずかしい格好です。でも、頑張ります!)
透き通る空色のショートボブの髪からは ︵⋆⁎‿ꕤ*⁎੭୧‿⁎❁フレグランスなフルーティ系の香りがフワサラと踊る ︵⋆⁎‿ꕤ*⁎੭୧‿⁎❀
ギヨティーヌ・タタンの家業は石鹸・洗剤の製造販売であり、フレグランスなシャンプー・ボディソープ各種を取りそろえていた。




