60 脊髄反射
○【オ・ソレイユ中央病院、中庭】
ギヨティーヌ
「―――― てなことを噂されてたんですけど… わたくしに、何か気付く処ありまして?!」
マノン
「お師匠さまから何か、悪意がコビリ付いた臭いがします。」
ギヨティーヌ
「えっ、何処? 何処、何処、何処?・・・」
❝犬人族❞ のマノン・マドレーヌは自慢の嗅覚を、クンカクンカさせそう言う。
ギヨティーヌ
「そう言えば…… 最近、指のささくれが気になりますわね。爪が小さく割れたり、足の指を角に打つけるのは… 関係ありますかしら?」
アルコル
「―――― 呪いの魔法も有りますので、お気お付けになられた方が良いと思いますよ、ギヨティーヌさま。
紫微大王が一応、専門家です。元僧侶ですし、破戒僧ですが…」
❧ゴスロリ❦冥土❥アルコルちゃん★彡 が、メガネで地味目のメイド姿で教えてくれた。
ギヨティーヌ・タタンたちは今、オ・ソレイユ領立の医療施設『オ・ソレイユ中央病院』で、ウォーウイルス感染症の検疫を、2週間に渡り受けている最中だ。
そんな中、ギヨティーヌに小さな不幸が襲いかかっている。
ギヨティーヌ
「あのオジサンは、街中の欲望に弱くて見ていられませんのよ。
昼間っから◇◇呑んでたり、△△に興じたり…… お子さまの教育上よろしく御座いませんわね!
そんなことより本日もお稽古、始めますわよマノンさん。」
マノン
「はい、お師匠さま (U^ω^) ✨✨✨」
❝犬人族❞ のマノン・マドレーヌは、日焼けした肌から透き通る空色のショートボブの髪の、両側へ垂れるモフ耳をピコピコ、上へ巻いたモフ尻尾をさらに高くプンプンと振ってみせた。
○【オ・ソレイユ中央病院、中庭芝生の上】
ギヨティーヌ
(みなさま、ごきげんよう。ギヨティーヌ・タタンですわ。
かつて『土俵の鬼』と謳われた、偉大な横綱の荒技『呼び戻し』別名 ❝仏壇返し❞ の映像を、前世で見たことが有りましたけれど、
見事に〈横綱が引っ張り込む〉⇒〈相手が無意識に脊髄反射で引っ張り込まれないように後ろへ重心を移そうとする〉⇒〈相手の重心が後ろへ行くのを利用して、ひっくり返す〉。
この、呼び込んで戻し倒す『呼び戻し』のような大技でなくとも、相手の無意識の脊髄反射を利用したり。
肩関節の支点を肩甲骨の動きでズラして相手の体勢を崩す。
相手と呼吸を合わせる。を織り交ぜた組手を只今、マノンさんに伝授している処ですわ。)
「危ないですからね、お互い正座から。」
青々とした柔らかな芝生の上へ、マノンは白帯の道着、ギヨティーヌはノースリーブ黒帯の道着姿の師弟が正座し、
マノン・マドレーヌに両手で、ギヨティーヌ・タタンの腕一本を掴ませ、前に後ろに弟子であるマノンを、師匠のギヨティーヌがひっくり返して仕舞うと、
マノン
「不思議です、どうなってるんでしょう✨」
マノンがさらに一生懸命、ギヨティーヌを抑え込もうとすればする程、マノンは投げられ、最後はその不可思議さに、✨きらきら✨笑っている。
ギヨティーヌ
「出来るようになるのが良いのですけれど、先ずはこう言うのが有るのだと知っておいて欲しいんですの。
打撃で来る相手の体勢を崩して、寝技に持ち込むのを得意とする流派も有りますから。」
ギヨティーヌとマノンの師弟は、オ・ソレイユ領立の医療施設『オ・ソレイユ中央病院』で、ウォーウイルス感染症の検疫を、2週間に渡り受けるのを活用し、医療施設の中庭で格闘技の稽古をしていた。
○【オ・ソレイユ中央病院、施設内の窓】
ピエール・エクスキューショナー
(あれは何をやってるニャン?)
そしてそこには、ロワ王国からラ・キャン帝国への入国者も、オ・ソレイユ領からに制限され、
やはり検疫のために留め置かれている。
この中に、医療施設の4階の窓から中庭を暇そうに眺める、10歳ほどの1人の少年、ピエール・エクスキューショナーがふくまれていた。
○【オ・ソレイユ中央病院、中庭芝生の上】
マノン
「面白いです、お師匠さま。」
ギヨティーヌ
「相手と呼吸を合わせるのは、何事においても重要ですのよマノンさん。」
マノン・マドレーヌの、空色の髪からもわかる両脇へ垂れた ❝犬人族❞ のモフ耳がピコピコ、背中へ反り返って丸まるモフ尻尾は、ますますプンプンと左右に揺れて、
師匠であるギヨティーヌが魅せる技への、興味は尽きない。
○【オ・ソレイユ中央病院、施設内の窓】
そして、ギヨティーヌとマノンのこの師弟から、視線を反らさぬピエール・エクスキューショナーもまた、
黒髪マッシュより立ち上がる白い ❝猫人族❞ の耳がピコピコし、やはり白のしなやかに長いフルテイルも、だんだんと興奮気味にクネクネとしている。
○【オ・ソレイユ中央病院、施設内】
「キャァァ……」
ピエール・エクスキューショナー
(どうしたニャン?)
医療施設の奥で、かすかに悲鳴が聞こえ、
ピエール・エクスキューショナーは、施設内へともどるのであった――――




