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令嬢ギロチン  作者: 近太夫
2の巻 令嬢立志伝
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59/74

59 不老不死

○【野外会場の壇上】



黄の目出し帽をかぶる司会者

「―――― では、新たな ❝ルージュ・パルフェ〈完璧な赤〉❞ の御入来ごじゅらいです。」



 満席の野外会場、

 怪奇なる異型の像の前へ置かれた、円卓に5つもうけられる席の、


 青の椅子に、青のフードとペストマスクそして2眼ゴーグルの ❝ドラッヘンフッター大使❞。


 黄の椅子に、黄色の法服に法帽そして眼帯と口髭の ❝ピサンザプラ判事❞。


 白の椅子に、白のシルクハットにスーツそしてマントに長身の ❝ポロンクセマ博士❞。


 黒の椅子に、黒の兜と鎧そして腰には軍刀の ❝ルフトメンチュ将軍❞。


 そして空いていた、赤の椅子の前へ進み出る1人の少女、❝赤衣に葡萄果汁ぶどうかじゅうの赤き髪をながく房々と垂らすダユー・マルグヴェン女主人ドミナ❞。



ピサンザプラ判事

「やっと我らが ❝Rougeルージュ・ parfaitパルフェ❞ の帰還が本日、叶った。」


ドラッヘンフッター大使

「めでたきこと。」


ポロンクセマ博士

「めでたきこと。」


ルフトメンチュ将軍

「めでたきこと。」



 会場より拍手と共に言葉が飛ぶ。



「以前は70歳まで生きる者はほとんどいなかった、でも今は70歳でもまだ子供だ!」


「バイオテクノロジーの発展で、人類は『臓器移植ぞうきいしょく』を何度でも出来るようになった。我々はますます若く生きられるようになる、『不老不死ふろうふし』さえも実現できるようになった!」


「ゥオオオオオ〜〜〜〜〜」



 この言葉に会場はさらなる盛り上がりを見せ、ダユー・マルグヴェンが口を開き、



ダユー・マルグヴェン女主人ドミナ

「今世紀には、150歳まで生きる可能性もあると予測されています。


 ココに居られる皆さまとそのご家族の、❝臓器の適合者❞ を世界中で調べ、登録させるシステム構築を、ただいま国際機関で行わせております。


 今後は母『赤の女王』に成り代わりまして、皆さまのお世話を、わたくし『赤の女主人ドミナ』がさせて頂きたく存じます。若輩者じゃくはいものでは御座いますが、今後とも何卒なにとぞよろしくお願い申し上げます。」


「ゥウオオオオオオオオ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」


 うねる会場、鳴り止まぬ拍手はくしゅ、拍手、拍手、



 満座が最高潮さいこうちょうへ達した時、ダユー・マルグヴェンの眼力は妖美にキラキラと輝いて、その頭より赤紫の湾曲する2本の臭角しゅうかくが突如飛び出す、耽美たんびなる香りはパアッと拡散し、

 そこにいた人々1人1人のまなこの焦点は合わず、陶然とうぜんとなって、天国とも地獄とも判らぬ、奇怪と快感に酔いしれ、いよいよ歓楽は有頂天となる。



○【野外会場、壇下だんかの地面に描かれる✪魔法陣❂の前】



 ダユー・マルグヴェンは壇から下りて、地面に描かれる✪魔法陣❂の前面へ歩みより、



ダユー・マルグヴェン女主人ドミナ

「❝赤の塔(世界衛生ウイルス研究所)❞ は崩れ落ち、

 燃え上がる赤壁より黒煙は立ち昇る。

 かつて蒼天までとどきし塔は、白塵はくじんの山へ化す。

 この瞳に写るは涙のみにあらず、

 底しれぬ憎悪と怒り、


 お母さま……

 今、『赤の女王』の御名おんなをここに贈ると共に、地の彼方より来たりし『赤の女王』ベラ・マルグヴェンの眠りを破ります。」



 ダユーの言葉は風へ溶け、

 ✪魔法陣❂が描かれる中央の生贄いけにえへ膝を付きナイフを下ろし、血に濡れる手の平を地表へ押し当てた。


 大地は揺れ、空気が振動し、天は鉛色の雲に覆われる。


 ✪魔法陣❂が光り、地は割れ裂け目から白き霧は溢れ、

 その中心に、1人の女性の影がゆるりと姿を現した。


 長く真っ赤な鮮血の髪は廻風かいふうただよい、髑髏どくろサイケな毒蛾どくがの翼と触角を持ち、血塗られし大鎌をたずさえ、真紅しんく衣装いしょうまといて、瞳孔は海の底の如く深くに沈む。

 亡霊でありながら、その威厳いげんは女王そのものだ。



ベラ・マルグヴェンの怨霊『赤の女王』

「我こそは『赤の女王』が怨霊おんりょうォォォ…


 なんじがなぜ我を呼び起こす、我が生命いのちを奪いしは汝であろう。」



 マルグヴェンが怨霊の声は雷音らいおんとなり、三界さんがいへ鳴り渡った。


 壇上に残される円卓の4名は抱き合い、恐ろしくも『赤の女王』の美しさに魅了され崩れ落ち、

 会場の響動どよめきは起こりし事象に強張こわばり、惑いて拝み涙を流す。


 我がとがを他者へ擦り付け、責任転嫁を目論もくろむダユーの唇は震え、それでもなお思考を巡らせた。



ダユー・マルグヴェン女主人ドミナ

「あゝ、我がいとおしき母『赤の女王』よ!


 貴女を今もなお苦しめる怨敵おんてきは、❝赤の塔❞ を破壊し、わたくしたちの誇りを踏みにじった者です。

 どうか、かの者へおうらみをおらしください。」


ベラ・マルグヴェンの怨霊おんりょう『赤の女王』

「うぅぅぅぅ…

 この時より、かの者の歩む先に安息は無し。眼を閉じれば悪夢に、開ければ亡霊にむしばまれ。

 死者の手が剣を鈍らせ、勝利の喜びは灰となり、愛する者に災いは降りかかる。


 この怨み尽きぬ限り、復讐は終わりにあらず。我が呪いは生き続け、孫子まごこの代までたたってやるゥゥゥゥ〜〜」



 怨霊おんりょうの声は呪怨じゅおんとなり天地へと拡大し、目に見えざる鎖となってギヨティーヌへ絡みついていく。



ダユー・マルグヴェン女主人ドミナ

「お母さま、ありがとう存じます。」


ベラ・マルグヴェンの怨霊『赤の女王』

「このうららさでおくべきかァァ……」



 そう言い残すと『赤の女王』の姿は霧へと変わり、闇深き大地へグツグツ溶解ようかいし消えていった。



 こうしてその日より、人々は噂するようになる。


「ギヨティーヌ・タタンの足元には、常に真紅しんくの女王の影が立つ。」と――――

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