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【書籍四巻】定年後は異世界で種馬生活【コミカライズ】  作者: 街のぶーらんじぇりー【種馬書籍四巻/コミカライズ】
第九部 フィオの里帰り

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第471話 王配の予約

「はあぁ……つかれちゃったよ。あしたはもう、あるきたくない」


「なにいってるの、おとこのこでしょ!」


 野営地に着いても、ハルトはまだヴィーに絡まれている。


「さんざんあるいて、あしがいたいんだよう」


「うそおっしゃい! わたしが、ちゆのまほうをかけつづけていたのよ、つかれもくつずれも、のこってるはずがないじゃないの!」


「……」


 双子の姉に詰められて、何も言い返せないハルトが哀れだ。もっともこの場合、ヴィーの言ってることの方が正しいけどな。


 森人の里へは、魔の森を突っ切っていく以外に、訪れる手段がない。当然そこにはまともな道などなく……馬車はもちろん、騎馬での行軍すら難しい。荷物運びすらポーターと魔法で容量アップしたリュック頼みで……かくして三歳四歳の我が子たちも、自らの足で歩くことを余儀なくされるわけだ。


 もちろん普通の幼児がそんな強行軍に耐えられるわけがないのだが、我ら一行には、グレーテルとヴィー……大陸一位と二位の光魔法使いがいるのだ。特にヴィーの操る治癒の魔法は、怪我を治すだけではなく、疲労もとれてしまう不思議仕様。あふれる魔力を武器にしてかけっぱなしにされたその魔法の恩恵で、いくら歩いても疲れないし、足腰が痛くなることもない。


 そんなわけで、ハルトが疲れただの痛いだのとこぼすのは、単なる気分の問題だ。インドアだらだら派の彼にとって、一日お外で運動することがストレスになっている、ただそれだけの理由でゴネているのである。


「おそとがにがてな、まりーだって、なにもいわずにがんばっているのよ。もっとしっかりしないと、だめじゃない!」


「そう、もうすこしりっぱになってくれないと、じょおうのつれあいとしては、ものたりないよ?」


 容赦ないヴィーの叱咤に、ファニーが追い討ちをかぶせる。


 だが、うん? たった今、とても重大な発言を聞いたような?


「ねえファニー。今、『女王の連れ合い』って言ったよね? それって、ファニーが王位を継いだ時の、王配って意味??」


「そうだよ? はるとじゃいけないの?」


「いや、ダメとまでは言わないけど……ほら、ファニーはまだ小さいんだし、結婚相手は大人になってから考えればいいんじゃ……」


 教会は姉弟婚を禁じているけれど、それはあくまで「母親が同じ」場合。父親が同じってことは、結婚を妨げる理由にはならないらしい。極端な母系社会で、種馬制度が一般的となっているこの世界では、実の父親が誰なのか、特定できないことが多いからなんだとか。


 ヴィーとハルトの場合は公式な結婚が難しいけれど、ファニーとならば教会も文句は言わないはず。だけど、元世界の常識を引きずっている俺としては、できれば娘たちに、俺の種とは関係ない男性と幸せを築くことを望んでしまうのだがなあ。


「いいえ、ちちうえ。わたしはもう、みらいのおうはいを、はるとにきめてるよ。だって、はるとよりきもちいいまりょくをくれるおとこのひとは、いないもん」


 ま、そうかもしれないけどさ。ハルトの魔力が極上かつ無限であることは確かみたいだけど、将来の子作り相手として最適かどうかはわからないんだぜ? まあこんな幼子相手に、生々しい子作り話をするわけにもいかない。


「それにね、ははうえからきいてるよ。たいりくじゅうのくにぐにから、わたしとこんやくしたいって、もうしこみがいっぱいきてるんだって。だからふぁにーはさっさと、おあいてをきめないといけないって……だからわたしはもう、はるととこんやくしたの」


「えええええっ!」


 そ、それは。元世界風に言えば「聞いてねえよ」って奴だ。


「え、こ、婚約って、いつの間に?」


「あ、ごめんルッツ。言ってなかったっけ? 二ケ月前に王室と、正式な書面を交わしているわよ……」


 俺たちの会話を聞きつけたグレーテルが、やはり何でもないことのように割り込んでくる。あ、契約したのは「奥様」だったのか。


 この世界では、家に関するすべての権限は、当主たる女性にある。我がシュトゥットガルト家の当主は一応俺と言うことになっているのだが、領民も、お付き合いする貴族たちも、みんな「奥様」の方を向いているのは仕方ない。


 当然、契約に必要な当主の印章もグレーテルが管理しているところで……彼女にとって「当たり前なこと」であったファニーとハルトの婚約書面は「夫に伝えなきゃいけないリスト」から漏れてしまったまま、当主の印が捺されたと言うわけだ。情けないことこの上ないが、これがこの世界の常識なのだろう。


「まあ、ほら。二人とも大人になったら、別の好きな人ができるかもしれないし。そうなったら円満婚約解消してもいいって、ベアトお姉様もおっしゃっているから。まあハルトは、ファニー様が成人されるまでの、虫よけみたいなものなのよ」


 さすがに俺に伝え忘れていたことはマズいと思ったらしく、グレーテルが何だか慌て気味にフォローを入れてくる。


 まあ別に俺抜きで決めたことに文句をいうつもりもないが、わずか三歳で王配とハーレムが確定とは……さすがに、我が子ながらご苦労様と同情したくなるなあ。



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