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【書籍四巻】定年後は異世界で種馬生活【コミカライズ】  作者: 街のぶーらんじぇりー【種馬書籍四巻/コミカライズ】
第九部 フィオの里帰り

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第454話 これは、使えるかも?

「実験だって?」


「ええ、実験です。ニコルさんが『鑑定』できない状況を確認した後で、ガブリエラ様に『拍手』していただけばよいのです」


 まあ、言われてみればその通りだな、納得だ。アゲハはいろいろ残念な性格をしているけれど、理性が勝っている間は、しっかり論理的な考え方をする娘だ。


「では、ニコルさん……たった今、私の能力を、鑑定できますか?」


「あれぇ? また、見えなくなってますぅ……さっきは見えていたのに」


「それなら、ちょうどよろしいですね。では、ガブリエラ様……私の真似をして、『拍手』していただいてよろしいですか?」


 ガブリエラを抱くミカエラの前で膝を曲げて赤子と目線を合わせ、ふわりと優し気に微笑んで、ゆっくりと二、三回、両掌を合わせてみせるアゲハ。いつもの粘着ストーカーっぷりを知っていなかったら、俺も一発で陥落してしまいそうに魅力的なそのお誘いに、ガブリエラはそのくりくり目をもう一段大きくして、その小さな手をちょいと合わせた……その時。


「はっ、『鑑定』が、できましたぁ! アゲハさんの能力が、見えてしまいましたぁ……」


「えっ、じゃ、じゃあ、ルッツ様の予想通りにっ……」


「どうやら、そのようですね。発動するにはわずかに力が足りない魔法に、ガブリエラ様の『拍手』が、助力を与えてくれるのでしょう。ただしそれは『拍手』していただいた後、わずかな時間しか効果がない……そんなところなのではありませんか?」


 アゲハが論理的に、推定をまとめていく。それは俺の思い付きとほぼ同じ結論で……。


「じゃあっ、ガブリエラはっ!」


「私たちはまだ無属性……それも『白の』無属性というものを、理解できてはおりません。ですが少なくともガブリエラ様は、ニコルさんの人間鑑定のように、恐るべく希少で有用極まりない魔法を発動させるための、鍵となりうるスキルをお持ちなのですよ。素晴らしいと思いませんか、ミカエラ様」


 同い年だけれど、アゲハは貴族のミカエラに対して、敬語で接している。愛人と妻という微妙な関係、多少隔意があるのかなと思ったこともあったけど、たった今アゲハがミカエラに向ける優しい視線に、嘘はないはずだ。


「ほ、本当に……」


 ミカエラのアニメ声が珍しく弾んでいないことに気付いて振り向けば、紫の目からはとめどなく透明なしずくがこぼれ落ちていた。能力なんか気にしないと宣言して明るく振る舞っていたけれど、もちろんだれよりもガブリエラの将来に悩んでいたのだ。その姿に元気だとか能天気だとか気楽な感想を抱いていた俺の鈍感さを、殴ってやりたいが……今できることは、彼女のチョコレート色した髪を、静かに撫でてあげることくらいだ。


 う~む、これは……グレーテルと相談しないとなあ。


    ◇◇◇◇◇◇◇◇


「それは……とても強力な、他者の魔法に対するバフ能力ということなのかしら?」

 

 俺たちの居館であるログハウスの寝室で、グレーテルが問いかける。彼女の声はさっきまで二人きりで開催していた大運動会の余韻で、少しかすれている。


 いやまあ、すぐにでも相談しようと思っていたのだが、しばらくごぶさたしていたこともあって二人とも気分が盛り上がってしまい、夕食もそこそこに寝室に直行してしまった結果が、今の状況だったんだよなあ。


 魔法万能であるこの世界でも、元世界RPGでおなじみの、他者の攻撃力を高めるバフ魔法というものは、ほとんど存在しないらしい。光系統の身体強化や闇系統の敏捷バフは術者自身の力だけしか向上させられないし、魔法的な能力は強化されない。もしガブリエラの能力が他者の魔法を強化するものだとしたら、その恩恵は計り知れないのだが……。


「そうなのかもね。だけど今日の様子だと、強化持続時間はそれほど長くなさそうだから、実戦で使おうとしたら、ひっきりなしに『拍手』しつづけないといけなくなるね」


「そうね……なかなか運用は難しいわ。探索や戦闘にずっとくっついていかないといけないわけだから……自分自身を守るすべを身につけさせる必要があるわね」


「それまで、十数年かかっちゃうなあ……」


 まあ、ガブリエラはまだ、生後五ケ月だからなあ。


「そんな短時間のバフでも、使い道はあるんじゃないの? そういうのを考えること、ルッツは得意でしょう?」


「え? そんなこと言ったって……さすがに」


「冗談よ。ガブリエラはまだ生まれたばっかりなんだから。大人になるまでに、彼女が生きていく道を広げることを考えましょう」


 だよね。一瞬この幼馴染が鬼に見えたけど、そこまで無茶振りはしないよなあ。


 いや、ちょっと待てよ。もしかして、うまくすると……。


「どうしたの、ルッツ?」


 いきなり真剣な顔になった俺に、驚いたような視線を向けるグレーテル。


「ちょっと思いついたんだ。これはひょっとして……ファニーの未来を、広げてくれるかもしれない」


「え? ファニー様の??」


「うん。さっそく王都のベアトに、連絡を取ろう」


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