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【書籍四巻】定年後は異世界で種馬生活【コミカライズ】  作者: 街のぶーらんじぇりー【種馬書籍四巻/コミカライズ】
第九部 フィオの里帰り

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第444話 これはデートなのか?

「このケーキはなかなか美味しいですわね! 梨をこんな風に使ったものは、帝都にもありませんでしたわ」


「そうだなあ、俺もこういうのは初めてだよ、美味しいね」


 俺とメルセデスは、王都イチと噂のカフェで、おすすめ新作ケーキをつつきながら紅茶などたしなんでいる。


 こんな羽目になったのは、この悪役皇女がベアトと会見した時に、せっかく王都に来たのだから、あれを買いたいこれを見たいと、わがままを言ったせいだ。人質のくせに図々しい限りだけど、ぼっち体質同士気が合うらしいベアトは、あっさり許可した。


「うむ。アーティファクトの件といい『フリーズドライ』実用化といい、メルの功績の巨大なこと、認めざるを得ない。何か褒美をやらねばなるまい、好きなようにせよ」


 まあ、ここまでは俺も理解できる。だが我が正室は続けて、ありがたくない台詞を吐き出した。


「だが、帝国要人たるメルにエスコート役もいないのでは格好がつかぬ。我が夫でよければ付けてやろう」


「え、なんで俺が……」「ええ、よ、よろしくてよ!」


 反論しようとした俺だけど、食い気味にメルセデスがかぶせてきたことで、俺とのお出かけは、既定事実になってしまった。


 まあ、やむを得ないのかもしれない。外国の賓客をエスコート役の男も付けずに放置するなんて真似をすれば、王室の礼節と品位が問われることになる。


 だが、そこら辺の高位貴族のボンボンをひょいとお供に付ければそれはあっという間に噂になり、お供の青年が「皇女殿下の婚姻相手候補」と社交界でみなされることになるのだ。ただでさえメルセデスを降嫁させたくて仕方ない帝国皇帝が、それを利用しないはずもなく……結果として、彼女の人質としての価値が下がるということだ。


 そんなわけでベアトは、手駒である俺を便利に使うことに決めたようだ。


「妻……正室が認めたのだ、堂々とデートを楽しんでくるがよかろう」


「デートじゃねえだろ!」


 反論する俺だけど、なぜか傍の悪役皇女が頬など染めている。ああそうか、ぼっちが常で帝国でも冷遇されてきた彼女は、男とのお出かけなんてイベントはもちろん未経験ってわけか。


 そんなこんなで、俺はメルセデスのために、辺境では購えないこだわりの品を扱う店を次々ご案内する羽目になって……ようやく一息をついたところなのだ。


「うん。果物がワインで甘く煮てあるんだな、手がかかってる」


 いつしか俺は、この皇女にタメ口を使っている。別に特別仲良くなったというわけではないが、こいつが高慢ちきではあるけど、無駄な礼節にこだわらない奴だということを理解したってことさ。


「バーデンでも、こういうのが食べられたらいいのに」


「そうだなあ。『リーリエ』のオーナーにでも頼んでみようか」


 俺の何気ない言葉に、メルセデスがぱっと表情を輝かせ、ふわりと微笑む。いつも吊り上がっている目尻がちょっとだけ下がって、頬が少女らしく紅潮する。ちくしょう、悪役皇女のくせに、こんな顔されたら、可愛く見えてしまうじゃないか。


「……まあ、綺麗な子達ね。お貴族様のお忍びデートかしら」

「本当ね、すごくお似合いだわ。なんか初々しくて可愛らしいわね……」


 そんな会話が、少し離れたテーブルから伝わってくる。どうも俺たちは、周囲から見たら、実に絵になるカップルに見えるようだ。


 まあそれも、無理もないことか。


 メルセデスは性格がちょっとアレだけど、間違いなく一級品の美少女だ。整った顔の造作に、まるで雪みたいに白い肌。ツンと可愛らしくとがった鼻と色濃い眉が、意志の強さをうかがわせる。そしてその瞳は、黄色でも茶色でもなく、選ばれた者だけが持ちうる、豪奢な黄金色。その視線に捉えられた男は、例外なく心臓を撃ち抜かれてしまうだろう。


 極め付けは、極太のドリルみたいな、キャラメルブロンドの縦ロールだ。いかにもな「ザ・お姫様!」って感じの大袈裟なヘアスタイルは、ベルゼンブリュックの男たちには新鮮な刺激になるだろう。もっとも元世界でざまぁ物をたしなんだ俺にとっては「ザ・悪役令嬢!」に見えてしまうのだが。


 そして対する俺も、不本意ながら美少年から、超絶美青年に成長しつつある。滑らかで綺麗なあごの線に、しみひとつない健康的な肌。整った鼻筋に、何といっても目を奪うのはエメラルド色した濁りのない瞳だ。艶めいて輝く銀髪との組み合わせは、まるで美術品のようだし……望んでこんな容姿に転生したわけではないのだが、おかげでどんな美女をエスコートしても、ビジュアル負けすることはない点だけは、元のルッツくんに感謝せねばならないだろう。


 おっと、そんなことを考えていたら会話が途切れてしまった。これじゃあまるで俺がこの悪役皇女に見惚れてデレデレしているみたいじゃないか。ホスト役としては失格だぞ。お相手が心地よい会話を提供するのも、この世界では男の必修項目だからな。


「ねえメルセデス。どうして、リーゼ姉さんに魔法を師事しようと思ったの?」


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