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【書籍四巻】定年後は異世界で種馬生活【コミカライズ】  作者: 街のぶーらんじぇりー【種馬書籍四巻/コミカライズ】
第八部 新迷宮に挑む

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第435話 そしてその後

 そんなわけで……うら若き帝国皇女が率いるパーティーが、謎多きバーデンの新迷宮を攻略したというニュースは、瞬く間に流布された。


 迷宮に関する研究を専門とする皇女は、つい最近バーデンで発見された新迷宮を極めるという学究心もだしがたく、辺境の現地に赴き攻略隊を編成。自らパーティーリーダーを務め、危険極まりない迷宮に先陣を切って踏み込み、多彩なメンバーの力を十分に引き出し、最深層に潜んでいたラスボス、熾天使を倒した。キャラメルブロンドの巻き髪を揺らし、黄金の瞳を輝かせつつAクラスの水魔法を優雅に操る皇女が魔物と戦う姿は、見る者を魅了したという。


 そして彼女は、ここ十年ほどは報告されていなかった貴重なアーティファクトを立て続けに発掘した。中でも最深層に眠っていた「アルテミスの聖剣」は、月女神の佩剣とも言われる最上級の神宝であり、まさに世紀の大発見。しかも高潔で無欲な皇女は、その一つたりとも私しようとはせず、そのすべてをバーデン領主に捧げ、自らは踏破した迷宮の研究論文執筆に、ひたすら打ち込んでいるのだとか。


 そんな話を酒場で聞いた冒険者が、賢く、強く、無欲で、美しく、そして高貴な皇女に、憧れを抱かないわけはない。「黄金姫メルセデス」の評判は、ベルゼンブリュック王都はおろか、すでに帝国にも伝わっているらしい。


「さすがに、ここまで褒められてしまうのは、行き過ぎだと思いますわ……」


 ヨイショされたりマウント取ったりが大好きな悪役皇女も、若干居心地が悪そうだ。まあ、そのへんはこっちも、全力で演出したからな。


 メルセデスと、その忠実な侍女たちの願いは、不当に抑圧された皇女の優秀さとその成果を、帝国にまで鳴り響かせること。あれだけ価値のあるアーティファクトについても、約束通り何の権利も主張してこない。ならば、情報操作なら右に出るものがいないであろう闇一族の力を使って、徹底的にやってやろうということになったのさ。


 アヤカさんが書き上げた装飾過剰の皇女冒険譚を手に、ありとあらゆるところ、もちろん帝国にまで潜り込んでいる闇一族の間者が、ある者は商人に、他の者は吟遊詩人、あるいは給仕女……多くの市民と接触する役割に扮して、噂をバラまきまくったってわけさ。


 そして、民ってやつはなんだかんだ言って、お姫様ってやつが大好きなんだ。ましてやその姫が自ら魔物と戦ったり、善行を施したりして……しかも若く美しいとあれば、賞賛のヴォルテージも爆上げになろうってものじゃないか。一気に盛り上がった王都市民の皇女アゲ機運を見て、「黄金姫はあきらめない」とかいうどこかで聞いたようなお題の歌劇が、ベアトの手で急ぎ準備されているのだという。


「まあ、いろいろ隠してることはあるけど、流していることに嘘はないのだから、いいんじゃないのかしら。メル様は少なくとも、賞賛されるべき働きを、なさったと思いますわよ?」


 グレーテルのフォローに、皇女が顔を紅らめる。まあ、こいつとは合わない俺も、少しはその働きを認めざるを得ないよな。彼女が声をかけなければ、グレーテルが最強パーティーを組んだりはしなかっただろうし、彼女がデリアさんという特殊スキル持ちを連れてこなかったら、アーティファクトが五つも見つかることはなかった。その結果として最強勇者のグレーテルに「アルテミスの聖剣」を持たせることができたことは、最大の功績だ。


 ただ人口に膾炙している冒険譚には、それを成し遂げるにあたってグレーテルやアヤカさんという反則級戦力が大活躍しちゃってたっていう事実が、意図的に抜かれているだけさ。


「そ、そうかしら……」


 悪役皇女のくせに、ぽっと頬など染めるところが、不覚ながら可愛く見えてしまう。まあこいつも俺より年下……まだ少女と言っていい年齢なんだ。本当はまだ褒めて伸ばさなければいけない時期から、皇女という重圧を担い、親族からは疎まれてきたんだよな。そう思うと、つい同情というか、感情移入してしまいそうな自分がいる。いかんいかん、こいつとは合わないって、思い知っているのに。


「いずれにしろ、これでメル様の名声は、帝国まで響き渡るでしょう。皇室の連中がどう思うかは別として、民衆や貴族たちの間で、帰国を求める声が湧き起こるのは間違いないですわ。そうなったら、どうなさいますの?」


 即答で凱旋宣言をするのかと思ったメルセデスが、唇をかんで考え込むことに、意外な思いを覚える俺だ。そもそも彼女と侍女の狙いは、ここで名声を上げて、故国に呼び戻してもらうことであったはず。それが彼女にとっても、俺の精神衛生のためにも、ウィンウィンの結論なんじゃないの?


「私は、しばらくここ……辺境に残りますわ」


 え、何で?


「迷宮の踏破はいたしましたけど、研究論文を著すには、データが足りませんわ。もう少しじっくり通って、構造や魔物の分布などを言語化できるようにいたしませんと」


 い、いや、そんな頑張らなくても……。


「それに……何かと騒がしい王都と違って、ここは著述するにも思考するにも良いところですわ。少なくとも論文を書き終わるまでは、こちらに滞在させていただくつもりです」


「私にはよくわかりませんけど、研究論文ってどのくらいかかるものですの?」


「そうですわね、一般的には一年ほど……この迷宮は新しい発見が多かったですから、二年くらいはかかるかしら?」


 ああ、終わった。俺の心に、平穏は当分訪れないらしい。


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― 新着の感想 ―
口が悪いだけで悪いことをしていないタカビー皇女は、なんで主人公にこんなディスられ続けてんのだろうか。 そしてそんな嫌いなキャラクターをレギュラー出演させてるんだろうか。
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