表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍四巻】定年後は異世界で種馬生活【コミカライズ】  作者: 街のぶーらんじぇりー【種馬書籍四巻/コミカライズ】
第八部 新迷宮に挑む

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

438/462

第430話 とどめを刺したのは

 もちろん我が幼馴染は、空を飛べはしない。結局今度もイレーネに投げ飛ばしてもらったわけなのだが……こんなサーカス技は、ひょいとかわされれば終わりだ。


 そこでミカエラの、派手な人間散弾銃が活きるわけさ。ほぼ必中の攻撃が自分に向けてぶっ放されれば、敵はそっちに注意を向け、防御を固めるだろう。その時背後から人間ロケット攻撃をすれば……まあそんな俺の安直極まりない発想をもとに、彼女たちは迷宮に入る前にしこしこと練習を重ね、ラスボスステージまで来てようやくその連携を発揮するチャンスが来たってわけだ。


「ふんっ!」


 一回目とは違って、袈裟懸けに斧を振るうグレーテル。もちろん斧の軌道に沿って、光の魔力も斜めに放射され、単純な動きでかわすことは難しくなる。熾天使のまとう光のバリアが一層輝いて……どうやら回避は無理と判断して、己の前面を硬くよろうことで防ぐつもりらしい。


 敵の目論見は、成功したようだ。少なくともグレーテルに関しては。彼女の魔力は熾天使のバリアをほとんど破壊しつつも、貫通しなかったのだから。


「グェォガ#※$$!」


 だが、次の瞬間、熾天使の苦痛に満ちた絶叫が響いた。やつは十を数えるくらいの間空中でもがいていたけれど、やがて力尽きたのか、ぱたりと地に倒れて……イレーネさんが、炎をまとった宝剣で、その首を落とした。


    ◇◇◇◇◇◇◇◇


「やっぱりアヤカは強いわね。味方でよかったわ……」


 グレーテルの視線の先には、二本の棒手裏剣が。一本は熾天使の背中に、もう一本は後頭部に、正確に刺さっている。


「一族に伝わる最強の毒ですが……天使にも通じたのは僥倖でした」


 もちろん手裏剣なんてのは一撃で致命傷にはなりにくい。だから暗殺に使う時には毒を塗って使うのだ。闇の攻撃は光属性の天使には特別に効く。そんなこともあって、わずか二本の命中で、敵を戦闘不能にできたのだろう。


「でもっ! お方様の手裏剣は外されて後方に飛んだはずですよねっ? どうして遅れて背後から攻撃できたのですかっ?」


 飛び道具を主戦武器とするミカエラとしては、黙っていられないらしい。アヤカさんはふわりと微笑んで、毒を塗っていない手裏剣を二本、誰もいない方向に投げた。それが視界から消えそうになったその時、グレーテルが光球の魔法で、あたりを明るく照らした。


「あっ、あれはっ!」


 ミカエラが指差す先で、二本の棒手裏剣が円を描いて追いかけっこを演じていた。しばらく同じところで周回していたそれが、アヤカさんが小さく息を吐くと、ものすごい速度で戻ってきて……彼女は人差し指と中指で、なんでもないかのように受け止めた。


 まあこれは、アヤカさんがもともと使っていたホーミング手裏剣だ、五年前に盗賊団を片付けたのも、この技だったよなあ。俺やグレーテルにはなんの驚きもないけれど、ミカエラには新鮮、かつ闘志をかきたてられる技だったらしい。紫色の瞳は、興味と希望にキラキラと輝いている。


「ぜ、ぜひっ、私もこの技術をっ!」


 言うと思ったぜ。この世界の女性は、多かれ少なかれみんな、魔法オタクだ。もちろん帝国人であるミカエラも、例外ではない。目の前であんな曲芸みたいな演武を見せられてムズムズしない女性は、いないのだ。


「う〜ん、どうだろうね。ミカエラには、ちょっと向かない技じゃないかなあ」


「どうしてですかっ? あんなカッコいい飛び道具、私も使ってみたいですっ!」


 俺が説明しても、盛り上がり切ってるミカエラは、聞き分けないかもな。チラリとアヤカさんに目をやれば、彼女は心得たとばかりに口許を緩める。


「ミカエラさん」


「ひゃいっ!」


「もちろん私と一緒に修練すれば、飛ばした石を自在に動かすことができるようになるでしょう」


「で、ではっ、ぜひにっ!」


「でもね。この戦い方は、ミカエラ様には向かないと思います」


 一瞬ミカエラの顔に、ちび◯る子ちゃんのようにがっかりタテ線が入った。いやまあ、そう見えるほど、彼女は落ち込んでしまったのだ。


「ど、どうして、私じゃダメなのですかっ!」


「私の手裏剣は、かすってひと傷つければ、毒の力で敵を倒せます。でも貴女の武器は石。背後からコツンと当てても、普通の防具で弾かれてしまいます。ミカエラ様の本領は、多少の防壁なら打ち壊してしまうその物理的な威力……貴女はむしろ、その弾速に磨きをかけるべきではないでしょうか」


 六つも年下のミカエラに、あくまで自分より身分の高い者に対する礼節をもって、静かに道理を説くアヤカさん。まさにこれは俺が言いたかったこと……アヤカさんはいつも、こうして助けてくれるんだよなあ。


「わ、わかりました……お方様もそうおっしゃるのでしたら、あきらめて……」


「全部あきらめる必要はないでしょう。ミカエラ様の強みをしっかり磨いた上でなら、貴女ご自身が修めたい魔法を鍛えるのも、良いことです。その使い道はもちろん、ミカエラ様を愛する殿方が考えてくださいます。ね、御屋形様?」


 え? 説得できてめでたしめでたしと思っていたのに……何だか俺には、宿題が押し付けられてしまったようだ。アヤカさんの表情は、笑いをこらえているかのように見えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ