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【書籍四巻】定年後は異世界で種馬生活【コミカライズ】  作者: 街のぶーらんじぇりー【種馬書籍四巻/コミカライズ】
第八部 新迷宮に挑む

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第428話 これは、いいものだ!

「うまく行ったみたいね」


「おめでとうございますぅ」


 グレーテルが優しげに目を細めれば、ニコルさんがいつものゆるふわボイスで祝福をくれる。アゲハの視線が背中に痛いが、処されまではしないと信じたい。


「二回目の初夜というわけね、あまりムードのない場所だったけど……」


「い、いえっ、と、とても素敵でしたっ!」

 

 思いっ切り噛んでしまうミカエラが愛しい。「神速の靴」を履かせたままいたしたそれは、なかなか刺激的で……思わず俺まで「神速」でフィニッシュしてしまったことは、不覚の至りだった。うん、そこは忘れよう。


「さあ、まったりはここまで。十二階層に挑むわよ!」


 我が幼馴染の凛々しい宣言に、ミカエラがキュッとその表情を引き締めた。


    ◇◇◇◇◇◇◇◇


 十二階層は、磨き上げられた大理石のようなつるつるしたクリーム色の壁で構築された、まるで地下宮殿のようなたたずまいだ。


「いかにも最終ステージって感じね、気合を入れていくわよ」


「ええ、強者の気配を感じます」


 光と闇のSSSクラスが口を揃えてヤバい予想をしている。


「いい素材が手に入りそうですぅ」


 ニコルさんのこれは、ある意味安定だ。もう持ちきれないから、そろそろいい加減にしてくんないかなと思いつつ、彼女のゆるふわボイスでお願いされると、つい荷物を増やしてしまう俺だ。


「どうやら、奥様方と相性の良い敵のようですね」


 アヤカさんの言葉が終わるか終わらないかのうちに、通路の角を回って現れたのは、甲冑をまとっているけど、なぜか首から上がない戦士。真っ黒いオーラをまとったその姿は、確かに光属性のグレーテルやイレーネさんにとっては、戦いやすい相手のようだ。


「そうね、力押しでなんとかなりそう。イレーネ、行くわよ!」

「はいっ、奥様!」


 うちの頼れる前衛たちが、自らの得物にプラチナ色の魔力をまとわせ、突っ込んでいく。


「せいっ!」


 イレーネさんの剣が一旋すれば、大剣を振りかぶる首無し戦士の手首が、剣を握ったまま宙に飛ぶ。さすがに宝剣といえど鋼鉄の甲冑にガチンコで打ちつけることはしていないけど、手甲だってそれなりに硬いはずで……おそらくまとわせた光の魔力が、首無しが持つ闇の魔力に対して、特別な相性効果があるんだろう。彼女の剣技もますます洗練されて……その動きはまるで舞でも踊っているように、美しい。


 対極的な戦い方をしているのは、グレーテル。魔銀の斧を振り回すその豪快さは変わらないけど、斧の刃を使わず、斧腹をぶち当てて殴るだけのストロングスタイルだ。敵はそれだけで吹っ飛び、まとう甲冑はベコっと潰れてしまう。


「ええい、さすがに斧は不向きね! ルッツ、持っててっ!」


 俺に斧を押し付けるや、我が幼馴染はとって返し、掌底の一撃を敵の胸にぶちかます。素手で殴っているというのに、それだけで首無し戦士の甲冑が粘土のように凹んで……敵は活動を停止する。次の敵の土手っ腹に一発前蹴りを入れれば、その胴体に風穴があく。上段から剣を振り下ろしてくる甲冑の手元に素早く飛び込んだかと思えば、その腕をぐっと取って豪快な一本背負いを決める。もちろん地面に叩きつけられた魔物は、もはや微動だにしない。

 

「ふう。やっぱりこうやって自分の身体で戦ってるって感じが、たまらないわ」


 そんな台詞を吐くグレーテルは、いつもより凛々しく、カッコよく見える。少し汗ばんだうなじが目に入ってしまうと、俺もついあらぬところが元気に……いや、そういう場合ではないのだった、真面目にやらねば。


「こういう敵ならいくらでも来いって感じね! どんどんいくわよ!」


    ◇◇◇◇◇◇◇◇


 イレーネとグレーテルの二人で、もう数十体の首なし戦士を倒しただろうか。


「はいぃ~。これで四十八体目ですねぇ」


 ニコルさんが即答するのは、もちろん奴らが落とす魔石の数をきっちり数えているからだ。どんな敵が出てきても素材にしか見えない彼女のこれは、相変わらず安定だ。


 そして傍らでは、デリアさんがまた両掌を合わせて念じている。不意に、その眉がぴくりと動く。


「あっ、魔力の気配が……」


 おっ、それは。もう冒険者たちにとって未踏の地であるここで魔力反応があるということは、悪くても魔道具、いやおそらくは古代のアーティファクトが、眠っているはずだ。これだけの深層にあるアイテムなのだ、きっといいモノが見つかる。「いいモノ」と言うとついマ・〇ベの壺を思い浮かべてしまう俺は、つくづく昭和だなあ。


 おっと、そういう場合じゃない。


「デリア嬢、失礼しますね」「は、はい……ふあぁん!」


 これももう、毎度のやり取りだ。乙女の胸に一応遠慮しつつもぐいっと手を突っ込んで、魔力補充という名目で生おっぱいの感触を楽しむ俺だ。まあデリアさんももはや諦めの心境なのか、首筋を桜色に染めた程度で、また両掌を合わせて集中する。


「ここから十一時の方向、百二十八メートル、誤差は二メートル以内! 伝わってくる魔力の質が今までとは違います……か、かなりの上級アイテムと思われます!」


 魔力クラスが低いせいか、何につけても控えめな感じを漂わせていたデリアさんが、珍しく強気なことを口に出す。これは期待できそうだ……北宋の壺でないことを祈るとしよう。



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