表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍四巻】定年後は異世界で種馬生活【コミカライズ】  作者: 街のぶーらんじぇりー【種馬書籍四巻/コミカライズ】
第八部 新迷宮に挑む

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

430/431

第422話 魔法の便利な使い道

 ま、これ以上年下女性をいじめることは不本意だ。無言で、首筋まで紅く染めているメルセデスを背中からぎゅっと抱いてあげるだけ。


 今回は急速充電までは必要ないみたいだから、胸に掌をあてたり、襟元から素手を突っ込んだりというようなイケナイ真似はしていない。またビンタを喰らいたくはないからなあ。彼女も最初だけはびくりと大きく震えたけど、その後は文句を言うこともなく、静かに身体を委ねてくれている。


 まあ、魔力を扱う技術についてはどうやら鍛え上げているらしい彼女は、残りの半分をわずか五分くらいで軽量の、薬剤原料に仕上げた。最初の半分より、なぜか短時間で片付いたのはなぜなんだろう。


 魔道具ザックに放り込んでしまえば防湿効果もあって、もう重くなることはない……この程度なら俺とポーターのクリステルで、なんとかなるだろう。


「はぁ……感謝いたしますわ。私の魔力ではとても足りませんでした、そして今回も……貴方からしみてくる魔力、とても心地よかったですわ」


 金色に輝く瞳を向けられて、そんな素直な言葉を吐かれたら、思わずドギマギしてしまう。まあここは、俺も正直になるべき時だな。


「少しは役に立ててよかった。すごい魔法でしたよ」


「ほ、本当にそう思いますの?」


「ええ。魔力はともかく、魔法のイメージ力と精密な制御は、我が国のクラーラ王女に匹敵するかもしれませんね」


 俺の台詞に、彼女の頬が上気する。


「あの『薬師姫』様に……嬉しいですわ、さらに精進しませんと!」


 高慢極まりない自分ファーストの悪役皇女にとっても、魔力だけに頼らずひたすら魔法制御技術を磨いて国一番の薬師と称賛されるようになったクラーラは、尊敬の対象になっているらしい。


 表情を輝かせて己の魔法への賛辞を喜ぶその表情にはいつもの高慢さはなく、少女らしいはつらつとした可愛らしさがあって……気がつけば俺のドラ息子が元気になっている。いかんいかん、これは一時の気の迷い。たった今は可愛く見えたとしても、こいつが地雷娘であることは間違いないのだ。手など伸ばそうものなら……。


「本当にメル様の魔法はすばらしいわね。クラーラ殿下と同じく、人を傷つける殺伐とした魔法じゃなく、民の生活を豊かにしてくれる魔法ね」


 グレーテルがしみじみとつぶやき、ミカエラがその後ろでこくこくとうなずいている。まあ、彼女たちの魔法は、グレーテルの治癒をのぞいたら、ほぼ戦闘のための魔法だしなあ。


 あ、ちょっとひらめいたぞ。


「もしかしたら、皇女殿下の魔法を、もっといろんな方面に役立てる方法、あるかもしれないよ」


「えっ、それ何?」「聞きたいですわっ!」


 グレーテルだけじゃなく、メルセデスまで食いついてきた。なかなかこの皇女、自らの才を磨くことについては、貪欲だよなあ。


「うん、じゃあまず、食事にしようか」


「何それ?」「さっぱりわかりませんわっ?」


 呑気な俺の答えに、女性陣が一斉に突っ込んできたけど……種明かしは後のお楽しみさ。俺はポーター兼雑用係のクリステルに、支度を命じた。


    ◇◇◇◇◇◇◇◇


「いつものことながら、クリステルの料理は美味しいわね」

「この香り、クセになりますぅ」

「我が家に欲しいですわ……」


 女性陣が、雑用美少年のクリステルを褒めちぎっている。限られた材料と道具しかないのに、ちゃちゃっと温かく味わい深いものを用意する腕前は、誰に仕込まれたものだろう。


 褒められた当人も、硬質の美貌を緩め、少し頬など染めて照れている。こうして見ると、中性的な容貌も相まって、少しドキッとする。いやいや、俺にお稚児を愛でる趣味はないぞ、いかんいかん。


 メンバーの前には、トナカイ魔物のステーキと、ミネストローネみたいなスープが置かれている。しっかり血抜きもされて塩加減もちょうどいい肉に、なんだか鼻をくすぐるハーブが添えられているのが、彼のオリジナルらしい。そしてスープはトマトにニンジン、ポテトなんかがたっぷり入った、とろっと舌に優しい逸品だ。


「ところで、それは何のおまじない?」


 鋭い幼馴染が見つけたのは、俺の脇に一杯だけ余計に取り分けられたスープカップ。


「うん、みんなが食べ終わったら、皇女殿下にちょっと、実験をしてもらおうと思って」


「実験って?」


「うん、新しい食べ物の加工法を、試したいなと思って」


 首を傾げつつも、女性陣の食べる速度が上がる。さすがベルゼンブリュックの女性は総員魔法オタク、新しい魔法の使い方には、興味しんしんなのだ。


 そんなわけで食事はマッハで片付き、みんながスープのカップを囲んでいる。


「それで? これをどうするの?」


「では皇女殿下、さっきの薬材のように、スープから水を抜いてもらえますか?」


「お安いご用でしてよ!」


 意外にも素直に、メルセデスが応じる。魔法の杖を高々と振り上げ、また俺にはわからない難しい呪文を唱え始める。


 まもなく、スープは凍り付く。まあこれはリーゼ姉さんの氷槍と同じ原理だ。液体の水が気化する時、周囲の熱を奪うのは現代なら常識だからな。


「続けて下さい。凍っている水も全部、抜いてもらいます」


「わかりましたわっ、はあっ!」


 魔法の探究にだけは素直な皇女が、眉をキュッと上げる。蒼いオーラが、彼女の身体を包んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ