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【書籍四巻】定年後は異世界で種馬生活【コミカライズ】  作者: 街のぶーらんじぇりー【種馬書籍四巻/コミカライズ】
第八部 新迷宮に挑む

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第419話 まだ続くみたいです

 我が息子の将来に思いを致している間にも、ニコルさんのなんでも鑑定団は次のアイテムに進んでいた。


「これも、かなり貴重なものですねぇ。『氷結のメイス』触れたものを瞬時に凍らせる効果があるみたいですぅ」


「それは、最高のお土産ができたわね」


 誰に……とか、聞かなくてもわかってるよな。今回は留守番に回ったけれど、これまでずっとグレーテルの背中を守ってきたツェリに、この宝物を与えようというのだろう。彼女の本業はもちろん聖職者だけれど、常に身体の鍛錬を怠っていない。打撃系の武器や格闘術で競ったら、ベルゼンブリュック国内でツェリに勝ちうる者は、おそらくグレーテルだけじゃあるまいか。


 その肉体を鍛え抜いているのに、俺の腕に納めてみれば、柔らかいところはきちんと柔らかく、しっとりと吸いついてくるのだ。そのギャップと、神に仕える女性を汚すという背徳感なんかを頭に浮かべると、思わずまた俺の暴れん坊将軍が……。


 いやまあ、そんなことはどうでもいい。いずれにしろそんな強力な打撃武器ならば、使いこなせるのは彼女しかいないだろう。一発当てて凍らせておいて、もろくなったところに全力打撃をぶちかましたら、魔物がガラスのように砕け散る……そんな厨二的なヴィジョンが頭に浮かぶ。ややストーカーチックなクール系のビジュアルに、氷結武器はさぞ似合うだろうなあ。


「で、最後の一つはなに?」


 せっかちな幼馴染が、ニコルさんを急かす。そう、三つ目に残ったのは、プラチナ色に輝く、細身で飾りっ気のない清楚なサークレット。サイズは小さめだし、デザインから見ても女性用なんだろうな。


「これが一番、いいものかもですねぇ。『光のサークレット』光属性の防御魔法が、これでもかってくらい付与されていますぅ」


「なるほどね。それならこれは、ルッツに預けるわ」


「え、何で?」


 思わず聞き返してしまったた俺に、グレーテルは少しだけ目を細めて、紅色の唇に微笑を刷いた。


「このアーティファクトが、一番必要だと思う女性に、自分で渡しなさい。もちろん誰のことだか、わかるわよね?」


 そうだな、さすがに鈍い俺でもわかる。いろんなところから恨まれ、生命を狙われているというのに、本人には戦闘向きの能力がまったく備わっていない、高貴な姫君……我が正室たるベアトこそ、この宝冠を身につけるべき女の子だろう。


「だったら、アデルに託して……」


「それじゃあダメじゃない。ルッツが……この世で一番愛する男性が手ずから頭に乗せてくれることで、お姉様にとってその価値が何倍にも増すんだから。もう、これほど豪華なハーレムを築いておいて、相変わらず気が回らないのね!」


 いやはや。両手を腰に当てて、フンスと鼻息も荒くドヤ顔をするグレーテルに、まったく反論できない俺だ。つくづく俺の気配りのなさと、我が幼馴染の如才なさを痛感して……まあここは、きちんと感謝すべきところだな。


「ありがとう、グレーテル。いつも君には、助けられてばっかりだね」


「そ、そうよ! ルッツは、私がいないと本当に、ダメダメなんだから!」


「ごめん……」


「ま、助けてあげるわよ……ずっとね」


 そんなデレた台詞とともに、ぽっと頬など染められたら、愛しさMaxだ。ストロベリーブロンドを五指でくしけずり、その頭をゆっくりと引き寄せて、甘い唇を……。


 そこまで進んだところで、はっと気づく。周りを見れば、パーティーメンバーたちがニヨニヨとした含み笑いを俺に向けていて……慌ててグレーテルから手を離しても、みんなのニヨニヨは止まらない。


「いいところでしたのにぃ、惜しかったですぅ」

「あと数センチというところでしたね」

「真剣に探索しているというのに、不真面目極まりないですわ!」

「まあこういうところが、ルッツ様というものですからっ!」

「そうですね。仕方のない殿方ですけれど……憎めませんね」


 女性陣の突っ込みが、びしびしと刺さる。俺は当分、猿扱いから卒業できそうもない。


    ◇◇◇◇◇◇◇◇


「ねえグレーテル、千年モノのアーティファクトがここに落ちているということは……」


「そうね、それはこの千年以上、このフロアボスをクリアできた者がいないということ。これより下の階層は、おそらく今まで誰も足を踏み入れていない領域、ということになるわね」


 グレーテルがそう応じれば、メルセデスの表情が緊張に満ち、その頬から血色が失われて、紙のように白くなる。


「メル様。それでも、この先に向かうの? すでに貴重なアーティファクトをこれだけ発見したのよ。帝国皇女の偉業を讃えない者は、もはやいないと思うけれど?」


 高慢だった皇女が、真剣な顔で唇を噛んでいる。俺が胸の中で五十ほど数えた頃、彼女はその勝ち気そうな顔を上げ、きっぱりと宣言した。


「行くわ。この迷宮が先に続いているなら……どこまで続いているのか、確かめたいから」


「生きて帰る保証は、ないのよ?」


「ええ。承知の上よ」


 決意を刷いたその横顔はとても凛々しく、まさに選ばれし高貴な者が放つオーラをまとっていて……俺の心臓がギュッと収縮しかけた時、メルセデスが口を開いた。


「魔物ごときが、青き血の流れる高貴な身に傷ひとつつけられるわけがありませんのよ! ここを初めて攻略して、迷宮に私の名を刻んで差し上げますわっ!」


 はあ。結局こいつは、コレなのか。せっかく少し見直して……ちょっとグラッときたところだったのに、すっかり台無しだよ。やっぱり俺はこの皇女とは、相性が悪いらしい。



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