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【書籍四巻】定年後は異世界で種馬生活【コミカライズ】  作者: 街のぶーらんじぇりー【種馬書籍四巻/コミカライズ】
第六部 ハーレム満喫

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第416話 リントヴルム

「いい? 今回は初見の敵だから、私が前面に立つわ。イレーネは私の後ろで、尻尾の動きに注意して」


「承知いたしました!」


 目の前には、いかにもっぽい雰囲気を醸し出すボス部屋の重厚な扉。敬愛する主君の命令に、背筋をピンと伸ばすイレーネさんは、とても凛々しく、美しい。


「多分私一人で片付けられると思うけど、危なくなるようならアヤカの『威圧』をお願いね」


「ご指示の通りに」


 アヤカさんが薄く微笑み、静かに一礼する。総合戦闘力ならグレーテルと双璧をなすはずの彼女だけど、いつもこうして我が幼馴染を立ててくれる。ありがたいなあ。


「メル様には水のバリアを張って、炎のブレスからみんなを守って欲しいですわ。よろしいかしら?」


「も、もちろんよ! 誇り高き帝国皇女の名にかけて、守って差し上げますことよ!」


 相変わらずの上からトークだけど、珍しくその声が緊張に震えているように感じられるのは、気のせいではないだろう。いくら優等生といえども、初めての実戦なのだからなあ。


「ルッツは、メル様のサポートをお願いね。じゃあ、行くわよっ!」


 えっ、サポートって……と聞き返す間も、あらばこそ。「奥様」がプラチナ色のオーラを全身にまとわせ、扉に前蹴りを一発浴びせて、ぶち開けた。


    ◇◇◇◇◇◇◇◇


 ボス部屋は、暗赤色の光に照らされていた。その光の中に、体長十メートルとはいかないが八メートルくらいはあろう、巨大なトカゲが鎮座している。


「こ、これが……リントヴルム」


「殿下、バリアをっ!」


 予想以上だった地竜の威容に震えていたメルセデスが、ギーゼラさんの声で我に返り、高らかに詠唱を始める。ありがたい、ここで防御の要にテンパられては、一発で戦線が崩壊してしまうからな。この侍女さん、本当にこのわがまま皇女が大好きで、いつも彼女の一挙手一投足に注目しているんだなあ。こんな良い部下がいるのだから、もう少しまともに……まあそれは、言っちゃいけないことか。


「行くわっ! はあっ!」


 心地よい高音の掛け声と共に魔銀の斧が一旋し、トカゲ野郎の右前足を切り飛ばす。俺の愛する勇者殿は余裕をもって噛みつきを避けると、勝負を決めるために、一つ大きく息を吸い込む。ちょうどその時、グレーテルの表情がにわかに、深刻なものに変化した。


「予想より早く、ブレスが来るわっ! メル様は全力でバリアを張って! イレーネは私の後ろにっ!」


 彼女の言葉が終わるか終わらないかというタイミングで、かっと開いたリントヴルムのでかい口から、真紅の炎が噴き出された。それは一瞬でグレーテルたちを飲み込み、後方にいる俺たちをも襲った。


「きゃああっ!」


「殿下のバリアが効いている限り大丈夫です! 静かになさい!」


 侍女その一のギーゼラさんが、侍女その二のデリアさんを叱咤する。そう、騒ぎ立てて術者の集中が乱れれば、みんな仲良く丸焼けになりかねないのだ。


「大丈夫ですわデリア! この程度の炎で私の高貴な防壁は、撃ち抜けませんことよっ!」


 相変わらずの高慢ぶりだが、その表情には余裕がない。おそらく炎を防ぎ止めるために、全力を振り絞っているのだろう。


「このブレス、いつまで続きますの! 長過ぎますわっ!」


 ヤバい、メルセデスの顔色が青白く変わり、首筋に冷汗が流れ始めている。これは魔力切れの前兆だ。確かにもう二十秒ばかりも、地竜は炎を吐き続けている……これも予想外だ、彼女のバリアが解けたら、アヤカさんはともかく、他のメンバーは全滅してしまう。いろいろ思うところはあるけれど、この場面ためらってはいられない。


「きゃああっ! 何をなさいますのっ!」


「皇女殿下、失礼します!」


 謝りながらも、俺はメルセデスの背中にへばりついて、身体を密着させる。


「こ、高貴で汚れなきこの身に、なんたる狼藉……」


「魔力を補給するには、こうするしかないんですよ!」


 怒られたって、ここは譲れない。彼女に魔力を注ぎ込まなかったら、バリアが維持できず……俺はこんなところで死にたくないんだよ。


「た、確かに、魔力の減りが遅くなってきましたわ……」


 おっ、わかってくれたか。猿並みで節操もない俺だが、今回ばかりはエロ抜きで、必要に駆られて抱きついてるんだ。だが、安心するのは早かった。


「遅くはなっていますけれど……補給が追いつきませんわ! このままでは魔力が!」


 マジか。さすがにこれだけの猛火を相殺するためには、展開した水膜にこれでもかってくらい魔力を注ぎ込まねばならないのだろうが……もちろん俺は、もっと効率よく魔力を渡す方法を、いくつも知っている。知ってはいるのだが、俺を虫けらのように見下すこの皇女にそれをやったら後でどんな目にあうか……いや、そんなことを考えている場合じゃない。


「はあああんっ! 何をなさいますのっ!」


 何をなさっているかといえば、魔力補給なのだが……杖を片手に魔法に集中している女性にベロチューを仕掛けるわけにもいかない。そうなると、いつもの……心臓に近いところに、右掌を当てる、アレをするしかないだろ。


「確かに、魔力は増えてきましたけれど……コレはありませんわぁっ!」



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