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メモリーゼロ人生に思い出を  作者: キュウヨとかげ
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5.「影との決着」

ベルに聞こえないように作戦を伝え、立ち上がる。

「正直、成功するか分からない。でも、ベルを倒すにはこれしかないと思うんだ」

「私は…いい作戦だと思うわ」

立ち上がりながらシオンが言う。

「でも、一つだけ聞かせて。……なんで私のことを助けてくれるの?」

シオンの真剣な眼差しに応えるように返す。

「昔、君に似ている幼馴染に命を救われた。アイツが生きていたら今も困っている人を助けていたと思う。だからせめて、目の届く範囲は助けると決めたんだ」

シオンは少し頬を上げて向き直る。

「…あなた、名前は?」

「俺は隼瀬結斗」

「さっきも言ったけど私はシオン。お互い頑張ろう、ユイト!」

「あぁ!」

その言葉を合図にシオンから袋を貰う。

「やっと終わった?待ってあげたんだから、せめて楽しませてよね」

頬を膨らますベルに対し、俺たちは剣を持ち直す。

「ここは任せたよ、シオン」

「えぇ」

そしてシオンはベルへ、俺は噴水へ向かった。



向かう途中ベルに狙われたりしたが、それをシオンが阻止してくれたおかげで、なんとか広場の真ん中にある噴水に辿り着いた。

噴水の真ん中には人の身長位の柱があり、そこからも水が出ていた。

持っていた剣を柱の胴目掛けておおきく振りかぶった。

「ぐっ」

手に強い衝撃がくるほどの力でも傷をつけるくらいにしかならなかった。

それでもそこを重点的に斬り続けると、柱が折れると同時に剣も折れた。

柱は水の勢いが上がり、かなりの高さまで吹き上がる。

「ボクを無視してると首が飛んじゃう、よっ!」

気が付くと、俺の影からベルが飛び出し、そのままナタを振り下ろす。

「─!!」

「邪魔はさせない!」

刃は間一髪のところで弾かれ、遠くに飛んでいく。

だが、ベルは影を利用し飛んでいったナタをキャッチする。

離れた隙に折れた刃をシオンから貰った袋に入れ、それを噴水の柱の中に突っ込んだ。

丁度よく袋が挟まり、水を堰き止めることが出来た。

「何をしてるのか分からないけどボクには当たらないよ」

ベルはそう言いながら、また影の中を潜り始めた。

影の中にいれば攻撃は当たらないと思ったのだろう。

その時、詰まっていたものを追い出すかのように柱の水は勢いよく吹き上がる。

詰めていた袋は天高く舞いながら、中に入っていたものを撒き散らした。

中に入っていたのはさっき入れた折れた刃と──大量のビー玉。

刃とビー玉が反射板のように太陽の光を反射し、吹き上がる水しぶきが光を広場中に広げた。

その光は周りの影を消し、ベルの姿が現れる。

地面は水浸しになりビー玉が転がっている。

「なっ!!」

思わぬ出来事にベルは立ち尽くしていた。

「今だシオン!!」

「はぁぁあーー!」

シオンは走り出し、刃をベルへ向けた。

「─っ!そんなのじゃ当たらないよ!」

ベルがナタで防ごうとするが瞬く間にシオンは後ろへ移動していた。

ベルはそれに気づき、後ろへ振り向きながら斬るがまたしても移動している。

ビー玉と位置を交換するように。

シオンのあの瞬間移動は物と位置を入れ替えることによってそう見えていたのだ。

縦横無尽に移動するシオンにベルは手も足も出せず、移動しながら来る斬撃は防ぎきれなかった。

「はぁ…はぁ」

「ここまで、やられたのは……初めてだよ…」

「ベル…ここまでだ」

ベルは無数の傷を負っているが、それでも笑ったままへたり込んでいた。

不気味な笑みを浮かべた後、その状態から最後の力を振り絞り、屋根の上へと飛び移っていた。

「ここは…逃げた方が良さそうだね。でも、次会うときは本気で首を取りに行く。その時までじゃあね」

「ま、待て…!」

逃げていくベルの背中に手を伸ばすが、颯爽と消えていった。

日は沈み、赤みがかかった空へと変わる。

こうしてベルとの死闘は幕を閉じたのである。



「一応無事で何よりだな。お嬢ちゃんも」

ベルが逃げた後、店の中で隠れていたあのおじいさんが俺たち2人を応急処置してくれた。

「ありがとうございます、コルトネさん」

あのおじいさんの名前はコルトネという名前らしい。

「俺からもありがとうございます」

「いいんだよ。2人とも頑張ったんだ。これくらいの事はするさ。しかし、傷という傷もなくて良かった」

ずっと心配していてくれたのだろう。

コルトネは胸を撫で下ろし、安堵する。

今思えば剣を持って人と戦うなんて、昔じゃ想像出来なかった。

俺自身がまるで違う人になるかのようにスイッチが入っていた。

「少年、名はなんて言うんだ?これも何かの縁だ、教えてくれないか」

そういえば言ってなかったな…。

「はい。俺の名前は隼瀬結斗と言います」

「そうか、ユイトと言うんだな。1つ気になっていたんだがその首に掛けている鍵は何なんだ?」

コルトネは俺の首にぶら下がっている鍵を指さした。

「あぁ、これはお守りなんです。大切な人から託された大事な物なんです」

俺は掛けている鍵を握りしめた。

その時、大事なことを思い出す。

あれ?確かあの時、ベルとシオンが驚いていたな。

鍵持ちとかなんとか言ってたような…。

「そう言えばシオン、この鍵を見た時驚いてたよな。なんでな──」

「…ごめんなさい」

俺が言い終える前に首元に衝撃が来る。

段々と意識が遠のいていくのが分かった。

体の自由は失われ、視界が悪くなる。

「──はギルドで───。───安心して──」

シオンが何を言っているのかもう分からない。

何故こんなことをしたのかも……少しでも情報を得るため俺は首を曲げた。

シオンはコルトネに何か話した後、何も無い空間で手を捻る。

手には鍵を持っていて、鍵が元からささっていたかのように1つの扉が現れる。

(!!)

俺は目を疑った。

その扉が、俺が異世界に来た時に通った扉と同じだったからだ。

「なんでだ…しおん」

それを最後に俺の意識はプツンと音を立て消えた。

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