4.「魔法とビー玉」
「任せてって強く出たね。ボクはまだ1回も攻撃をくらってないよ」
「……ここで待ってて」
シオンは立ち上がり、ベルの方へ向き直ると──姿が消えた。
「どこにっ!!」
ベルが周りを見渡してもシオンの姿は見当たらない。
──既に後ろに回り込んでいたのだから。
シオンはベルの横腹を蹴り飛ばし、2メートル程離した。
「これで1回目ですね」
「…すげぇ」
あまりの速さに驚き、唾を飲み込む。
「……やられちゃったね…ならこっちも」
ベルは蹴られたところを払うと、ナタを逆手に持ち直し踏み込むと一瞬で間合いを詰め、距離を縮めてくる。
ナタが首筋に届こうとした時、またシオンが目の前から消えた。
瞬く間にベルの死角から消えたシオンは両刃の剣を抜き、後ろから斬り掛かる。
「もうそれは見切ったよ!」
「!!」
ベルはナタで受け止め、反撃するがするがシオンは一瞬で離れたところに移動していた。
「はぁ…はぁ…」
「あなたのアレは瞬間魔法の類でしょ。使うほど疲れるみたいだけど、その状態でボクに勝てるの?」
このままじゃシオンが危ないと思い、武器を拾いに行こうとするが何か硬いものを踏んでしまった。
「これは……ビー玉?」
拾ってよく見てもビー玉にしか見えなかった。
なぜこんな所に……?
「じゃあ、ボクも魔法を使おうかな」
「…まだ本気じゃなかったのね」
ベルは建物の影の方へ歩くと影触れた途端潜るように体が沈んでいった。
「ボクの魔法は見た通り影に…闇に紛れることが出来るんだ。だからこんなことも出来るよ」
シオンの影からベルが出てくると手に持っていたナタで背中を斬った。
「シオンっ!」
「うぅっ!」
斬られた背中は赤い一線を描いていたがシオンはそこに手をかざし傷を塞いでいた。
そしてまたシオンが瞬間移動しようとした時、何かを投げているのが分かった。
その光る物体と入れ替り、シオンは斬り掛かるが、ベルはすぐに影の中に潜ってしまった。
その間に俺は剣を拾うついでに光る物体も回収した。
その光るものはさっき拾ったビー玉と同じようだった。
もしかしたら今までの瞬間移動はこれを利用していたのかもしれない。
だったら、シオンの魔法は瞬間移動じゃなくて…
「ボクの家系は殺しの仕事をしているせいか魔法もそれに役立つようなものになっているんだ。でもボクは仕事として殺るんじゃなくて、好きなように殺したい。殺し以外の仕事ならいいけど、殺すことだけは誰にも指図されたくない。だからあの家から逃げ出してここにいるんだ。ボクの気持ちも分かるでしょ?」
「あなたがどんな気持ちで逃げてきたのか分からない。でも、1度も人の命を奪いたいなんて思ったことないわ!」
「そう…ならキミもボクのコレクションにしてあげる」
そう言い、建物の影から飛び出したベルはシオンの首目掛けて斬りかかる。──が結斗が飛び込み、そのまま2人は転がっていく。
「あなたは─」
「俺に作戦がある。勝つにはこれしかない」
俺は今更震え出す足を叩き、シオンに作戦を伝えた。




